中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

企業文化が表れる中国IT企業の「社食」

中国の大企業は社員食堂に力を入れている。中国人は食事を大切に感じていて、「食事がまずい」という理由で転職を考えるからだ。中国企業家雑誌が、中国IT企業大手の「京東」「アリババ」「網易」の社食を訪ね、各社の企業文化を探った。

 

「食事に不満」で転職を考える中国人

中国人が会社を辞めて転職する理由の1位は「報酬に不満」、2位は「上司や周りとうまくいかない」で、そこは世界共通だが、3位にくるのが「食事に不満」だ。ある程度の規模の企業になると社員食堂を設けるのは当然で、食事が美味しいかどうか、価格が妥当かどうかも、社員の満足度に大きく影響する。

IT企業の社食をのぞいてみると、充実しているだけでなく、その企業の文化がよく表れている。

 

本社の2階から5階までが社食。京東の「美食城」

ECサイト「京東」(ジンドン)の創業者、劉強東(リュウ・チャンドン)は、貧しい家庭に生まれながら、自分でお金を稼ぎながら大学進学し、京東を大企業に育てた苦労人だ。そのため、典型的な中国人の兄貴気質があり、京東の創業時には、自分のお金で社員に食事をご馳走するということが多かった。ともに食事をとることで、社員を慰労し、絆を深めてきた。そのため、京東では「食」を重要視している。

京東の社食は、本社ビルの2階から6階までの5フロアにもなる。総面積は2万平米。これは東京ドームのグランド2つ分に近い。中国には、さまざまなレストランが入ったビル「美食城」があるが、まさに京東の本社は美食城なのだ。400種類以上のメニューがあり、昼食だけでなく、朝食や夕食もここでとる社員がけっこういるという。

2階は北方料理で、麺や水餃子などが中心。3階は西北のイスラム料理が中心で、牛肉麺や串焼きなどが中心。4階は四川などの南方料理で、焼きガチョウや鍋料理が中心。5階は少し高級な中華料理で、個室があり、商談などに使う。6階は海外料理で、日本料理、東南アジア料理、韓国料理などがある。

昼の時間に食事を取れない忙しい社員のために、13時以降はすべての料理を3割引にしている。また、スマホから料理を予約することもでき、予約した料理は3階にある保温箱に入れられる。これをスマホで開けて、食堂で食べたり、デスクで食べたりする。

「食事をとる」という点では、京東の社食は最も充実をしている。

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▲京東の社員食堂の内装はいたって普通。しかし、5階は個室中心で、商談や接待にも利用できるフロアも.用意されている。

 

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▲京東の社食は5フロアもあり、フロアごとに違った料理を楽しめる。6階では日本料理も食べられる。

 

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▲京東の社食は美食城。北京ダックの四川料理版である焼きガチョウが並ぶ。


最先端技術で自主改良したアリババの「未来食堂」

アリババの社食は、アリババらしく未来食堂となっている。アリババの社食は、杭州市のアリババ本社の9号棟にあり、そのうちの1階、2階、5階、8階が食堂になっている。中国起業家雑誌が取材できたのは5階部分のみだったが、これでも面積は4700平米あり、アメリカンフットボールの競技場の面積にほぼ近い。毎日、4000人以上の社員がここで食事をするという。

アリババの社食が未来食堂と呼ばれるのは、顔認証技術を採用しているからだ。以前のアリババの社食は、昼時になると10分以上行列をしなければならないのが当たり前だった。これが問題となり、社員から食堂システムの改善研究が自主的に始まった。こうして生まれたのが、画面からメニューを選び、顔認証でアリペイ決済するシステムだった。

単に決済を効率化するだけでなく、データも分析し、どのようなメニューが好まれるかによりメニューを改善したり、また、個人別のデータも分析し、栄養バランスや摂取カロリーなども表示し、社員が自分の食の健康を考えられるようになっている。

また、残業などをする社員のために、保温箱も用意されている。事前に注文をしておくと、料理が保温箱に収められ、食堂の営業時間が終わっても、保温箱から食事を取り出して食べることができる。

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▲アリババの「未来食堂」。レストラン部分は特に大きな特徴はないが、裏では最先端技術が使われている。

 

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▲アリババの社食では、当然顔認証システムが利用できる。社食の混雑を緩和するために、社員たちが自主的に開発したもの。

 

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▲アリババの社食は、デザートやスイーツも充実をしている。

 

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▲社食には保温箱が設置され、時間外でも食事をとることができる。スマホに送られてくる暗証番号を入力してドアを開ける。

 

味が自慢で、他社社員もこっそり食べにくる「網易」

ポータルサイト「網易」(ワンイー)の社食は、北京市中関村の本社の地下1階にある。面積は5000平米で、大企業の社食としてはさほど広くはない。しかし、毎日メニューが変わるのが特色で、ウェブからその日のメニューが閲覧できるようになっている。味も評判がよく、近くの新浪(シンラン)、百度バイドゥ)の社員も隠れてやってきて食事をしているという。

京東やアリババのようなゆったりとした社食ではないが、環境には気を使っている。音楽演奏を入れたり、妊娠をしている女性社員のための優先席を設けたり、また好評なのがテラス席を用意している。

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▲網易の社員食堂は、地下にあり、スペースはやや狭目。しかし、味は抜群で、近所の百度や新浪の社員もこっそり食事をしていくという。

 

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▲いつも混雑しているため、妊娠した女性の専用席も確保してある。

 

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▲網易では、社食のスペースが狭いために季節のいい時期にはオープンテラス席も用意している。

 

中国人の生活の中心は「食」

中国人の理想の生活の中心にあるのは「食」だ。それも高級料理というよりは「うまいもの」をふんだんに食べられることを好む。しかも、大勢の仲間と楽しく食べることを好む。他のIT企業でも、ほぼ例外なく社食には力を入れているのは、人材を確保するためでもある。

美味しくない食事を提供されることは、「会社から大切にされていない」と感じる。食事の不満で転職を考えるというと大人げないように聞こえるかもしれないが、社員を大切にしない企業に未来はないと考えるようだ。中国の企業を訪問する機会があったら、社内を見学するよりも、CEOに会うよりも、社食で食事をした方がその企業をよく理解できるかもしれない。

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