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スマートフォン。7つの失敗デザイン

2007年1月に米国でiPhoneが発売されて10年余り。その歴史の中で、さまざまなデザインが登場してはい消えていった。粑粑数碼科技が、7つの失敗デザインを挙げている。

 

スマホ7つの失敗デザイン

スマートフォンが登場して10年余り。その間、さまざまなデザインが登場しては消えていった。粑粑数碼科技は、その中から7つの失敗デザインを紹介している。ただし、それを勇気ある挑戦と見るか、失敗と見るかは人それぞれだ。そんなデザインもあったと懐かしむ、そんなお気軽な気持ちで思い出していただきたい。

 

1)3Dディスプレイ

2011年にHTCのEVO 3Dが3D表示を搭載し、LGがOptimus 3Dなどで追従した。ただし、粑粑数碼科技は、2002年にシャープが発売したmova SH251iSが擬似3Dを搭載したのが最初であるとしている。

3Dは裸眼で立体画像が見られるというもので、発売当初は大きな話題になり、EVO 3D、Optimus 3Dなどの売れ行きも好調だった。しかし、それきりで、消費者は次第に3Dのことを忘れていき、大きなトレンドにはならなかった。

映画やテレビなどでも3Dが登場し、それなりの市場を得たものの、結局今では生き残っていない。なぜ3Dが受けないのか、その理由は誰にもわからない。1950年代にも3D映画が米国で製作された(ヒッチコックの「ダイアルMを廻せ」も3D映画だった)が結局一過性のブームで終わっている。今後も、ことあるごとに3Dブームが登場しては消えていくのかもしれない。

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裸眼立体視ができる3Dディスプレイ。面白い試みだったが、コンテンツ不足から長続きしなかった。

 

2)内蔵プロジェクター

2012年に登場したサムスンのGalaxy Beamは、プロジェクターを内蔵していて、最大50インチの大きさに投影できた。悪くない機能だが、定着しなかった。仕事の打ち合わせや会議などでは活躍することは間違いないし、出張での仕事終わりでのホテルや、寝室でちょっとドラマを見たい時などには重宝をするはずだ。画面が明るくない、バッテリーがもたないなどの不満もあったが、それは内蔵プロジェクターが定着すれば解決されていく問題だ。これも、なぜ消えたのかわからない失敗デザインだ。

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スマホ内蔵プロジェクターも悪くない試みだったが、これも追従するメーカーが現れなかった。

 

3)2画面折りたたみ

中国のZTEなどが挑戦した折りたたみの2画面スマホ。これは逆に何を狙っているのかがよくわからない。「画面が広く使える」ということなのだと思うが、スマホのUIは画面が狭くても必要十分なデザインで設計されている。本体価格が高くなる割に、そのメリットがあまり感じられなかった。トレンドは、多画面化よりも大型化に向かっている。

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▲折りたたみの2画面スマホ。ヒンジ部分が切れてしまうので、大画面として使うにも問題がある。これだったら、スマホと小さなタブレットの2台持ちの方がいいかもしれない。

4)組み立てスマホ

2016年にグーグルが始めたプロジェクト・アラ、さらにはオープンソースプロジェクトであるPhoneblockなど。本体はフレームのみで、そこにモジュール化されたバッテリーやカメラなどのパーツを組み立てていき、ユーザーが自分好みのスペックのスマホを作れるというもの。ハードウェアの性能が上がったら、そのパーツだけ交換して使い続けることが可能だ。

しかし、モジュール化する設計が難しく、結局CPU、アンテナ、センサー、バッテリー、ディスプレイは分離モジュールではなく、一体モジュールとして提供されることになってしまった。これでは、ほとんどモジュール化ができず、プロジェクトの存在意義がなくなってしまい、2016年にプロジェクトは終了している。

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▲組み立てスマホPhoneblocksのコンセプト図。自分好みのスマホが作れ、劣化したパーツだけを交換できる。

 

5)イヤホンジャック廃止

iPhoneが始めたイヤホン用のミニプラグ穴をなくす設計。これにより本体をより薄く、バッテリー容量をより大きくできる。しかし、多くの人にとってイヤホンジャックなしは不評だ。ワイヤレスイヤホンは、ペアリングや充電などの面倒があり、古い製品では遅延、途切れるなどの問題も起きている。イヤホンの価格が高くなることを嫌う人もいる。

「安価なイヤホンを穴に挿すだけ」という簡単な手順を、ここまで複雑にした割に、音質がものすごくよくなるなどの恩恵があまり実感できないというあたりが不満の理由のようだ。

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▲イヤホンジャック廃止にも不満を持っている人は多い。イヤホンがワイヤレスになるのはいいとしても、音質がよくなるなどそれ以外のメリットが見えづらいのが原因だ。

 

6)ノッチ

画面枠がほとんどなくなるベゼルレスデザインは好評だが、セルフィーカメラなどを設置するために、画面上部にM字ハゲ、ノッチなどと呼ばれる部分ができてしまう。中国では劉海と呼ばれる(特徴的な前髪で人気の女優の名前から)。

案の定、評判は悪い。アップルもiPhone XSの広告では、惑星の壁紙を使って、このノッチが目立たなくなる姑息な手法を使っている。アップル自身も弱点だと認識しているのだろう。

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▲問題のノッチ。セルフィーカメラを搭載するにはどうしても必要だが、ユーザーからの評判はよくない。

 

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▲アップルのiPhone XSの広告。惑星の図案を巧妙に使い、ノッチ部分がわからないようにしている。ちょっと姑息なやり方で、アップルらしくない。

 

7)Bixbyボタン

Galaxy S8以降には、側面にBixbyボタンと呼ばれる物理ボタンが搭載されている。PCでいうファンクションキーのようなもので、カレンダーやニュース、通知などを表示するBixby Homeアプリを起動できる。ただし、音量ボタンと間違えて押してしまう人が続出して、無効化している人も多いようだ。トレンドは、明らかに物理ボタンを減らす方向。Galaxy以外には広がらないだろうと粑粑数碼科技は指摘している。

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サムスンが始めたファンクション物理キーBixby。ネットでは、Bixbyを無効化するノウハウが交換されているほどで、むしろじゃまになっている。音量ボタンを押そうとして、間違えてBixbyボタンを押してしまう人が続出しているからだ。

 

求められる「スマホの次」

最初にも述べたが、この7つすべてが失敗かどうかは受け取り方次第だ。残念ながら定着に至らなかった挑戦だったと捉えることもできるし、イヤホンジャックやノッチは現在進行形のデザインだ。

いずれにしても、以前のようなスマホの本質的な機能で競争するのではなく、このような枝葉末節のデザインで競争するしかなくなっている。それだけ、スマホという製品が成熟してきたということだ。そろそろ、「スマホの次」の製品が求められる状況になってきている。