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中国を中心にしたアジアのテック最新事情

北京中関村で始まったトイレ革命。水と電気の供給は不要

中国北京市中関村に突如公衆トイレが設置され話題になっている。水や電気の供給が不要であるため、工事の必要はなく置くだけというトイレで、場所さえあれば簡単に設置し、移動させることもできる。このモバイルトイレはスタートアップ「摩室科技」が提供しているサービスだと鉛筆道が報じた。

 

外部接続が不要な置くだけ公衆トイレ

北京市のIT企業が集まる中関村の彩和坊路に、突然公衆トイレが出現した。QRコードをスキャンすることで、5分1元(約17円)で利用でき、外に出るときに自動精算される。不思議なのは、一般の公衆トイレに必要な水道と電力の供給がなく、独立していることだ。つまり、トイレだけをどこにでも移動することができる。

この移動トイレを設置したのは、スタートアップ「摩室科技」。すでに中関村に4台を設置し、雄安新区に2台を設置、年内に100台の設置を目指している。

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▲中関村の彩和坊路に突如現れたシェアリング公衆トイレ。5分1元で利用できる。

 

2013年から中央政府が進める「トイレ革命」

中国都市部の公衆トイレは、数としては決して少ないわけではないが、衛生的な問題、設備の古さは以前から問題になっていた。新しい公衆トイレも設置されているが、設置コスト、管理の手間などがあり、決してじゅうぶんに進んでいるとは言えない。

2013年に、中国政府は「トイレ革命」を提唱し始めた。公衆トイレの環境を大きく改善していこうというものだ。しかし、実際に行われているのは、既存のトイレの改修と、企業などが自社のトイレを一般向けに開放するというもので、「革命」と呼ぶほどの効果はあがっていない。

 

誰も手をつけなかったシェアリングトイレ

摩室科技の創設者、武星宇(ウー・シンユー)は、北京映画学院に在学中から、将来自分は起業したいと考えていた。なにをする会社を作るのか。武星宇が着目したのが当時、急成長していたシェアリング自転車だった。中国社会で以前から課題とされていた「最後の1kmの移動」を解決する決め手になるビジネスだった。

これを見て、武星宇は、「中国社会で抱えている課題で、政府が解決に動いているが、成功していない分野」が成功の確率が高いと考えた。市民からのニーズはあり、関連する法律や規制などの整備も進むからだ。

では、具体的にどのようなものがあるか。武星宇は考え続け、公衆トイレという他人がまだ手をつけていないブルーオーシャンを発見した。

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▲摩室科技の創設者、武星宇CEO。「中国社会の課題」「政府が解決施策を実行」「しかし成果があがっていない」の3つがクロスするところにビジネスのタネがあると考え、シェアリングトイレに至った。

 

電源は太陽光発電、水は内部でリサイクル

一般の公衆トイレは、電源と上下水道に接続しなければならない。このため工事コストは高くつき、しかも一度設置したら移動できないのが大きな問題だ。都市環境が激変している中国で、ショッピングモールがひとつできただけで、人の流れは大きく変わる。ところが、従来型の公衆トイレでは人の流れが生まれたところに設置をするのにも時間がかかり、人の流れがなくなったところから撤去をするのにも時間がかかる。公衆トイレの衛生状態を保つには、人による定期的な管理が必要で、大きな無駄をしていることになる。

摩室科技のシェアリングトイレは、外部接続を一切必要としてない。電力は天井に設置した太陽光発電パネルから供給され、内部のバッテリーに蓄積される。水に関しては、濾過フィルターを使い、内部の水をリサイクルして利用する。そのため、置くだけで設置ができ、持ち去るだけで撤去ができる。激変する都市環境に即応でき、人による管理の効率を高めることができるのだ。

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▲内部はごく一般的なトイレだが、広告や衛生用品の販売などでも収益をあげる。また、地方政府からトイレそのものの購入の引き合いもあるという。


18ヶ月でコスト回収が可能

ビジネスモデルとしては、利用者から5分1元の利用料。さらに、トイレ内でのトイレットペーパーなどの販売。トイレ内の広告。さらに、排泄物を農業系の企業に肥料の原料として売却もできる。

摩室科技では、1台の公衆トイレのコスト回収は18カ月で可能としており、利用者の多い適切な場所に設置をすれば、月に1万元(約17万円)から1.5万元(約24万円)の売上が見込めるとしている。さらに、地方政府に公衆トイレそのものを販売する計画も立てている。

今後は、大都市のバス停、地下鉄駅や道路や駐車場などの人通りの多い場所を中心に設置を進めていくという。また、電気、上下水道の外部接続を必要としないことから、インフラの整備が十分ではない自然景観地などの観光地で、エコロジートイレとしての需要も大きいのではないかという声もある。

摩室科技は、100万元のシード投資、400万元のエンジェル投資をすでに受けているが、事業拡大のために2000万元(約3億2000万円)の投資資金を集める計画を進めている。

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