中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

中国シャオミーは、アップルや無印良品からなにを学んでいるか

中国産スマートフォンとして、最初に海外にも知られるようなったシャオミー。現在は家電製品ばかりでなく、家具や洋服なども手がけ、中国の無印良品のようなポジションになりつつある。そのシャオミーが、中国伝統医学で使われる抜罐器を発売したと駆動之家が報じた。

 

中国ではポピュラーなカッピング療法

抜罐器というのはカッピング療法に使われる器具。中国整体などで使われるツボのような形をした器具で、アルコールを含ませたガーゼに火をつけツボに入れ、取り出したら、背中などの凝っている場所につける。ツボの中の空気が冷えると、真空に近い状態になり、背中の皮膚が引っ張られ、うっ血を解消し、凝りをとってくれるというものだ。

中国の伝統的なマッサージ店では、この療法をやってくれるところが多いし、日本でも中国整体などの店で施術してもらえる。

効果があるのかどうかはそれぞれの感じ方次第だが、うっ血を解消して、背中の凝りが取れると感じる人が多い。ただし、抜罐器の跡が半日から1日程度残るというのが嫌だという人もいる。

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▲カッピング療法。アルコールの炎でツボの中を真空にし、背中などのうっ血を取るために使う。中国整体などで施術してくれるところがある。

 

おしゃれなカッピングカップが1800円でシャオミーから

その抜罐器がなぜかスマートフォンメーカーのシャオミーから発売された。大8個、小6個入りで、これにハンドルがついている。シャオミーの抜罐器は火を使わず、ハンドルを引いて真空状態を作り出すもので、安全であり、片手で操作できるので、自分で肩や太ももの患部を治療することができる。

シャオミーの直販サイトでは、価格は109元(約1800円)となっている。

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▲シャオミーが発売した抜罐器。炎ではなくハンドルで真空を作る方式なので安全であり、手が届けば自分一人でも施術することができる。

 

中国のアップルと呼ばれたシャオミー

シャオミーは、「中国産のスマートフォンも品質が悪くない」と海外に初めて認めさせたメーカー。スマートフォンだけでなく、その新作発表会でも、雷軍CEOがスティーブ・ジョブズばりの服装でステージに立つことから「中国のアップル」と呼ばれ、口の悪い人は「スマホから売り方までアップルのパクリ」と言われた。

それがインスパイアなのかパクリなのかはともかく、シャオミーはこのような枝葉末節のことではなく、ブランド構築という本質的なことでアップルをよく研究し、真似ている。

当初、シャオミーはEC直販サイトのみで販売をしていた。現在も、直販サイトと直営ショップを原則としている。これはアップルのアップルストアの真似で、販売チャンネルを絞ることでブランド価値を演出し、同時に購入というユーザ体験を高めようとしている。

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アップルの本質的な部分も学んでいるシャオミー

もうひとつ、大きいのが、ユーザとメーカーの距離を縮めていることだ。iPod発売以前のアップルは、アップルとユーザの距離が近く、公式の掲示板に例えば「4Kビデオを撮影をしてテレビのバラエティ番組に使いたい。どんな機器を揃えればいいか」という質問を投げれば、アップルの担当者や場合によってはデザイナー、エンジニアが気軽に応えてくれる企業だった。これがアップルのファンを増やすことにつながっていき、現在のアップルストアの「ジーニアス」につながっている。

シャオミーも同じように、ネットで気軽に相談ができるチャットチャンネルを開設している。このようなことから、シャオミーを気にいる人が多く、中国では「ミーファン」と呼ばれる熱狂的なシャオミーファンを生んでいる。

「アップルの真似」と言われればそうなのかもしれないが、決して表層的なことだけでなく、アップルの本質的で素晴らしい部分も真似あるいは学んでいるのだ。

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無印良品に学ぼうとしているシャオミー

そのシャオミーは、現在、家電製品なども販売をしている。家電だけでなく、家具、衣服、テレビ、PC、調理器具、シューズ、美容家電、食品、健康器具など、生活に必要なものはほとんど手がけている。

もちろん、すべてをシャオミーが製造しているわけではなく、OEM供給をしてもらっているものがほとんどだが、デザインコンセプトは統一されていて、「シャオミー有品」として都市の若い者を中心に受け入れられ始めている。

この抜罐器もそうだが、シャオミーの製品のデザインはしゃれている。お気づきだと思うが、極めて無印良品に雰囲気が似ているのだ。そのため、今度は「無印をパクっている」と言われるようになっているが、アップルとの時と同じように、単なる表層だけパクっているのではない。無印で最も重要な「ライフスタイルの提案をすること」を「パクって」おり、なにからなにまでシャオミー製品で揃えるという第二世代のミーファンを生み出しているのだ。

 

パクリの段階を脱し始めた中国製造メーカー

中国の「パクリ」は、もはや日本のアニメキャラクターを勝手に使ってしまうというレベルは脱している(地方の弱小メーカーではまだそんなことが起きてはいるが)。優れたブランドの表層的な部分ではなく、ビジネスの本質的な部分をパクるようになっている。これはもはやパクリではなく「学び」であり、雷軍CEOもあちこちで無印良品の素晴らしさを口にし、はっきりと「中国の無印良品になりたい」と公言している。

このような本質部分のパクリは、もう少し時間が経てば、オリジナリティーの創造につながっていく。シャオミーはすでにその段階に到達している。