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北京のIT企業、夜10時。社員がまだ残業しているか調べてみた

北京のIT企業は何時まで残業をしているのか。夜10時すぎ、記者が本社ビルを回って、ついている灯りと迎車にきているタクシーの数を数えて、残業の程度を調べてみた。どの企業も、夜10時まで残業するのが当たり前のことになっていると北京日報が報じた。

 

北京のIT企業も10時始業、10時終業が当たり前

北京の某IT企業に務める馬科(仮名)は、毎晩、仕事が終わるのが夜10時だという。馬科は、北京日報の取材に応えた。「会社は残業を奨励していません。でも、仕事が終わらないのです」。

馬科は、会社から5kmほどのところに、3人でマンションを借りてシェアしている。夜10時であれば、地下鉄もあるし、バスで帰ることもできる。それでも、馬科はスマートフォンでタクシーやライドシェアを呼ぶ。「会社は残業を奨励していないと言っているものの、夜8時になるとマクドナルドなどの夜食の出前が無料になります。また、夜10時を過ぎるとタクシー代が出るのです」。

馬科は家に帰って、ゲームで1時間ほど遊ぶ。そして、深夜12時ごろ寝る。そして、6時か7時に起き、10時には出社をする。「平日は毎日こうです。週末は自分のためだけに使いたい。バスケをしたり、映画を見たりします。恋人はいませんが、恋人探しをする余裕はないですね」。

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京東10時20分。帰宅ラッシュでタクシーは100台

高給である分、仕事が忙しいのは仕方がないことなのかもしれない。北京日報の記者は、北京市内のIT企業はどこでも似たような状態なのかを調べるために、夜10時前後に企業の社屋をまわってみた。

ECサイト企業「京東」の本社ビル。木曜日の10時20分の様子。ビルの灯りはほとんどついているが、社屋前に約100台以上のタクシーが迎車にきている。これから、帰宅のピークが始まるのだと思われる。タクシーは駐車場や道路に並びきれず、京東の警備員が出てきて整理をしている。運転手の一人に取材をした。「このビルには2万人ぐらい働いています。帰宅はみな遅く、タクシー代は会社から出るようです。地下鉄でも帰れるのですが、地下鉄を使う人はいないですね」。

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▲京東、10時20分。帰宅のピークで、100台以上のタクシーが待っている。警備員が出てきてタクシーの整理をしている。

 

アリババ11時10分。灯りはついたまま

アリババの北京支社には木曜日の11時10分についた。11時をすぎているのに、7割ぐらいの灯りがついている。迎車にきているタクシーは約20台ぐらいだった。アリババも残業した場合は、タクシー代が支給されるようだった。

テンセントの北京支社には、金曜日の10時35分。役20台のタクシーが迎車にきていた。テンセントは、北京市内にはビルを一棟所有せず、数カ所のビルに分散してオフィスを持っている。そのため、灯りからどのくらい残業をしているのかは判断できなかった。

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▲アリババ北京支社、11時10分。ビルの灯りはほとんどがついている。

 

百度11時15分。タクシーの行列ができる

百度には金曜日の11時15分についた。約50台のタクシーが迎車にきていた。周囲の道の交通量は多く、特にタクシーが多い。記者は、まるで空港のように車が多いと感じたという。百度のビルは灯りがほとんどついていて、タクシーは一列に並んでいる。

運転手によると「百度はいつも9時ごろから社員が帰り始めますね。11時頃にも帰宅の波があり、12時30分にも波があります」と言う。また、タクシー代は会社が払ってくれる制度があるものの、全員ではなく、自腹でタクシー代を支払う人もいると言う。

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▲夜11時15分の百度。普通に社員が仕事をしている。

 

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百度本社前の知春路には、50台以上のタクシーが路上で、社員を待っている。一車線ふさがっているので、軽い渋滞が発生している。記者によると「まるで空港のよう」。

 

過度の残業が労働トラブルになる事例が増えている

このようなIT企業で、ほぼ全員が帰るのは深夜の3時、4時で、翌朝の9時または10時に出社をしなければならない。

すでに、残業が多すぎて離職をする社員も増えており、離職後に「適切な残業手当をもらっていない」として、労働人事争議仲裁院に仲裁を求める事例も増えているという。IT企業が集中する北京市海淀区の海淀区労働人事争議仲裁院の孫維一主任は、北京日報の取材に応えた。「この地区では、残業に関する労働仲裁が常に起きています」。

北京市国漢弁護士事務所の楊暁波弁護士は、「残業をするときは、できるだけデータをつけておいてください。あとで、労働法に定められた自分の権利を守るときに役立ちます」とアドバイスする。

中国IT企業にも、数年後には、残業時間を規制する働き方改革の波がやってくるのかもしれない。