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行列のできないカフェ「ラッキンコーヒー」が大躍進

創業してわずか3ヶ月のカフェ「ラッキンコーヒー」が大躍進をしている。すでに10億元(約170億円)を投入し、5月末までに500店舗に拡大する計画を公表した。その躍進の秘密は、ユーザー体験を一新したことにあると新消費が報じた。

 

スターバックスがリードする中国のカフェ市場

中国でカフェ競争が激化をしている。1999年に米スターバックスが、北京市故宮の中に店舗を開いて以来、2007年には英コスタコーヒーが進出。それを見て、国内系のパシフィックコーヒーなども店舗数を増やしていった。

中国のコーヒー消費量は、毎年15%程度伸び続け、2020年には1兆元(約17兆円)市場、2030年には2-3兆元市場に成長すると見込まれている。

スターバックスは、近い将来、中国が同社最大の市場になると見込み、2021年までに5000店舗を展開する計画を立てている。さらに、昨年には上海市に高級業態であるリザーブ・ロースタリーを開店。焙煎工場が併設をされ、高級コーヒーをその場で飲んだり、豆を購入できる。リザーブ・ロースタリーは、米国シアトル市に続いて2店舗目で、規模はシアトル市1号店の2倍になる。また、中国国内に焙煎工場が設置されたことで、新鮮なコーヒー豆を中国国内の店舗に供給できることになり、コーヒーの味も格段に改善されることになる。

また、英コスタコーヒーも2022年に700店舗展開の計画を進めている。さらに、ケンタッキー、マクドナルドというファストフード、セブンイレブンなどのコンビニも挽きたてドリップコーヒーを始めている。

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スターバックスが上海に開業したリザーブ・ロースタリー。中国人が好むゴージャスなデザイン。CGのデザイン画ではなく、実写写真。

 

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スターバックスが上海に開業した高級店「リザーブ・ロースタリー」。品質の高い豆で淹れるスペシャリティコーヒーが楽しめる。焙煎拠点ともなり、中国のスターバックスコーヒー全体の味も向上した。

 

行列ができない人気カフェ「ラッキンコーヒー」

国内系カフェは一歩遅れをとっている形だが、昨年創業したばかりのラッキンコーヒーが、大人気となり、10億元の資金を投入して、5月末までに500店舗展開する計画を発表した。この計画が成功すれば、国内系最大のカフェチェーンとなり、スターバックスに対抗できるカフェとなる。

人気の秘密は「行列ができないカフェ」であるという。

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▲ラッキンコーヒーの店内。店内客だけでなく、テイクアウト客を重視することで、客数を大幅に増やした。

 

コーヒーは高く、滞在時間が長い中国のカフェ

都市部では、そこかしこにカフェがある状況になってはいるが、中国人にコーヒーを飲む習慣が定着しているとはまだ言えない。中国全体のコーヒー消費量の70%はインスタントコーヒーで、豆を挽いてコーヒーを楽しんでいる家庭はまだまだ少ない。美味しいコーヒーが飲みたいときは、カフェにいくというのが常識で、それでカフェに人が集まっているところがある。

しかし、問題は、コーヒーはまだまだ高価格の飲み物であるという点だ。例えば、スターバックスではラテが36元(約610円)する。日本人の感覚でも高く感じるし、ペットボトル飲料が5元(約85円)程度であることを考えると、コーヒーはかなり高価格の飲み物になる。

そのため、顧客の多くはビジネス街の高収入のホワイトカラーだ。しかも、高い飲み物であるので、みな滞在時間が長い。他の国と同じように、MacBookを開いて仕事をしているというのが基本で、本を読む人、友人同士でまったりする人など、雰囲気はいいが、客席の回転率は極めて悪い。これが売り上げの足枷となってしまって、価格を下げらない状況にある。

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高い飲料なのに、行列に並ばなくてはならない不満

ラッキンコーヒーの銭治亜代表は、新消費の取材に応えた。「コーヒーは素晴らしい飲料ですが、中国ではまだじゅうぶんに注目されていませんし、コーヒーを飲む習慣も定着してしません。課題は二つです。ひとつは本格コーヒーの価格が高いこと。もうひとつは購入のユーザー体験が悪すぎることです」。

中国人に評判が悪いのが、行列に並ばされることだ。注文レジに並ばなければならず、商品カウンターに並ばなければならない。さらに、席を自分で確保する必要があり、混雑時には席がないと店員とトラブルになるケースもある。露店で安いスイカジュースを買うのに並ぶのであればともかく、かなり高級で高価な飲み物を買うのにこれはないだろうと感じてしまうのだ。そういう顧客が、コンビニやファストフードのコーヒーに流れてしまうのではないかと、業界人は恐れているという。

 

ユーザー体験と低コストを同時に実現する

ラッキンコーヒーは、この2つの課題を解決した。ラテの価格を21元からにしたのだ。しかし、品質を下げて価格を下げたわけではない。むしろ、品質はあげている。世界バリスタチャンピオンシップで3位に入賞したバリスタに依頼をし、中国人の嗜好に合ったコーヒーの焙煎、挽き方を研究した。さらに、原料とする豆は、スターバックスが採用しているものより20%から30%も高価なものを使っている。それで、どうして価格を安くできるのか。作業効率とユーザー体験を同時に高める方法を採用したからだ。

 

事前にアプリで注文、行けば商品は用意してある

ラッキンコーヒーは、一般のカフェと同じように、注文カウンターに並んで、店内でコーヒーを楽しむこともできる。しかし、受けているのは、アプリからの事前注文だ。アプリを開くと、最も近い店舗が表示され、注文をするといつできあがるかという予想時間が表示される。これを使って、事前注文をしておけば、カウンターに並ぶ必要はなく、できあがり時間に商品カウンターに行けば、待つことなく商品を受け取れる。アプリが表示するQRコードを見せれば、すぐに商品がでてきて、スマホ決済で自動的に支払いが行われる。

アプリからの注文をする人は、店内で飲むというよりもテイクアウトするケースが多い。典型的なのは、近くのオフィスで働いていて、手元のスマートフォンからコーヒーを注文、出来上がり時刻に取りに行き、飲みながらオフィスに戻るというパターンだ。

これはユーザーにとっても「行列をしなくていい」というユーザー体験の向上にもなるが、ラッキンコーヒーにとっても大きなメリットが生まれる。ひとつは、テイクアウト客が増えるというとこは、店内の回転率(1日の客数/席数)は大きく向上するということだ。

もうひとつ大きいのが、注文の平準化ができることだ。コーヒーを1杯作るのには結構時間がかかる。1杯1杯豆を挽いて、抽出をして、ラテの場合は、ミルクを泡立てる必要がある。1杯を作るのに5分程度はかかってしまう。そのため、グループ客が入ってきただけで、行列ができ、来店客を待たせることになってしまう。アプリからの事前注文が多くなれば、数分後の注文数の予測が立つようになる。間に合わない場合は、でき上がり時間を数分遅らせても、事前に注文客に明示しているのだから、ユーザー体験を損なうわけではない。

こうして、ユーザー体験の向上と、作業効率の向上を同時に行うことで、コストを下げ、低価格でコーヒーを提供できるのだ。

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▲ラッキンコーヒーは、アプリから注文ができる。商品のできあがり時間が表示されるので、その時間に合わせていけば、待たずに商品を受け取れる。このアプリ内で決済も完結する。

 

1杯買うともう1杯無料で、新規顧客を連れてきてもらう

さらに、アプリからの事前注文を採用することで、さまざまなキャンペーン施策を打てるようになった。好評なのは、「1つ買うともう1つ無料」クーポンだ。このクーポンを使ってコーヒーを注文すると、1杯分の値段で2杯購入できる。これを使って、ラッキンコーヒーのファンが、友人知人に「コーヒーおごるよ」と言って、2杯を持って帰り、ラッキンコーヒーのファンを増やしてくれる。

カフェは意外にITやネットを活用していない。ラッキンコーヒーは、ネットをうまく活用することで、新しいユーザー体験を提供し、急速に拡大をしている。なお、代表の銭治亜は、前職はタクシー配車サービスUCARのCOO(最高執行責任者)だった。つまり、ITをビジネスにどう活かすかについては熟知をしているのだ。飲食業界出身ではないことで、新鮮な目でカフェを見ることができているのかもしれない。

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