中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

アリババが60歳以上限定社員を募集。年棒は700万円。

アリババが60歳以上限定で、社員募集をしていると話題になっている。しかも、年棒は40万元(約700万円)という高額のもの。「とにかく杭州市に行ってみる」「お父さんの履歴書を勝手に送った」など、ネットではちょっとした騒ぎになっていると銭江晩報が報じた。

 

人生経験にこそ価値がある

アリババが募集した60歳以上限定社員の仕事は、ECサイトタオバオ」のベテラン顧客研究員。60歳以上という年齢制限も異例だが、年棒も40万元(約700万円)という高額なもので、ネットでは「年齢をごまかしてでも働きたい」という人が続出している。

この募集内容をよく見ると、アリババは単なる話題作りのためにこのような募集をしたのではなく、必要だから募集をしたことがよくわかる。

ベテラン顧客研究員の仕事は、タオバオなどのECサイトに馴染みがない高齢者、あるいは未成年の手助けをすること。一緒に(リモートの場合もあり、実際に横についての場合もある)アクセスをして、ECサイトの使い方を教えるのが業務内容だ。

このような業務には、若者は必ずしも向いているとは言えない。特に中国の若者はデジタルリテラシーが高い人が多く、このような人が中高年や老人にECサイトの使い方を教えても「中高年がどこがわからないのかがわからない」ことになり、教えられる方は「若い講師が何を言っているのかがわからない」ことになりがちだ。

教える方も中高年であれば、中高年がどこが苦手であるかの勘所が分かっており、人間力を活かして教えることができる。

日本でも、このような中高年の人間力を、接客に活かそうとして、積極的に中高年を雇用している飲食チェーンもある。

f:id:tamakino:20180204164620p:plain

▲アリババ公式サイトの募集ページ。学歴不問だが、地域リーダー、心理学、社会学に興味にある人を優先する。

 

コミュニケーション能力の高い人を優先して採用

ただし、アリババは、60歳以上であれば誰でもいいと考えているわけではない。学歴は不問だが、ECサイトの利用経験が1年以上ある者で、3年以上の経験がある人を優先するとしている。

さらに重要なのが、広場舞KOL、社区委員を優先するとしていることだ。広場舞KOLとは、広場舞を組織しているリーダーの人のこと。中国では、朝方、公園で体を動かすことを奨励している。以前は、太極拳をする人が多かったため、今でも「中国の朝は太極拳から始まる」と思っている人が多い。しかし、現在では太極拳は少数派だ。なんと言っても多いのが「広場舞」と呼ばれるダンス。派手な衣装、派手な小道具、派手な音楽を使って、賑やかに大人数で踊る。このようなダンスチームを組織しているリーダーがKOL(Key Opnion Leader)と呼ばれる人たちだ。当然ながら、コミュニケーション能力が高く、地域での顔が広い。社区とは中国の町内会のような組織。この委員も地域のリーダー役を務めている。

つまり、60歳以上であれば誰でもいいというわけではなく、コミュニケーション能力が高い人を優先的に採用する方針だ。

アリババの雇用責任者は、銭江晩報の取材に応えた。「すでに大量の履歴書をいただいています。みな、残業をして一次審査をしている最中です。一次審査の合格者には面接を行い、さらにタオバオの代表と面接をしていただき、採用者を決める予定です。私たちは、人生経験のある中高年の方々のアドバイスを必要としていますし、よりよいサービスを提供するために力を貸していただきたいと考えています」。

f:id:tamakino:20180204164629j:plain

▲中国の朝、公園で見られる広場舞。太極拳は少なくなり、派手な衣装、派手な小道具を使ったダンスが現在では主流だ。ダンスも素人のレベルを超えているチームがかず多く見受けられる。

 

高齢者の知恵を借りてサービスの向上を図る

中国は、儒教の影響で、高齢者の知恵を借りるという感覚が今でも生きている。今回の募集は、2名のみという小規模なものだったが、ネットでは大きな話題となっている。

tamakino.hatenablog.com