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老人介護施設にスマートスピーカー。活用実験始まる

話題になっているスマートスピーカー。アマゾン、グーグルからだけでなく、様々な企業が発売をしている。しかし、「すでに飽きた」という人もいる中、中国では老人介護施設での利用が始まっていると科技行者が報じた。

 

使い道がまだ見えてこないスマートスピーカー

昨年暮れから日本でも販売が始まったスマートスピーカー。未来を感じさせるアイテムだが、まだ具体的な用途が見えていないところもあり、買ってはみたものの、ただの音楽スピーカーになってしまい、すでに持て余しているという人も多いかもしれない。スマートスピーカーは、今後スマートフォンに取って代わるかもしれないポテンシャルを持っているが、現在のところは、提供する側も使う側も用途を模索している段階だ。

中国では、老人介護施設スマートスピーカー「天猫精霊」を利用するという試みが始まっている。

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北京市の老人介護施設「北京普楽園」に導入されたスマートスピーカー「天猫精霊」。

家電の操作や入居者の安全のために使われるスマートスピーカー

スマートスピーカーを導入した老人介護施設は、北京市南六環外にある北京普楽園。180名のお年寄りが暮らし、7割以上が80歳以上。自立生活ができるお年寄りは10%に満たない。

現在、スマートスピーカーは9種類の利用がされている。

・照明、カーテンの開け閉め

・室内の温度をセンシングし、エアコンを自動調節する

・照明の時間による自動オンオフ

・エアコン、テレビなどのオンオフ

・人の位置をセンシングし、どこに人がいるかを知らせる

・ドアや窓が予定外に開いた場合、知らせる(徘徊防止のため)

・緊急通報

・カメラと連動し、室内から外にテレビ電話がかけられる

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▲入居者たちは、テレビや照明、カーテンの操作を音声で行っている。京劇などの娯楽ラジオ放送を聞くという使い方も好評だ。

 

安全、補助、娯楽、省力化で活用

北京普楽園では、4つの観点で、スマートスピーカーの機能を進化させていきたいとしている。

・安全監視:室内外を音と映像で監視し、入居者の徘徊や事故を察知する

・生活補助:窓、エアコン、テレビなどを入居者自身で音声で操作できるようにする

・娯楽:音声で必要なものを購入できたり、外に電話ができるようにする

・省力化:スタッフの作業を軽減し、人件費を抑える。

 

アリラボが想定する入居者の1日

このスマートスピーカーとシステムを提供しているのは、アリババ傘下のアリラボ。アリラボでは、老人介護施設向けのシステムを開発するため、北京普楽園と共同で試験を行っている。

アリラボでは、北京普楽園に入居しているお年寄りがどのようにスマートスピーカーを活用しているか、典型的な1日を紹介している。

06:00:眼が覚める。システムがタイマーで自動的にカーテンを開け、灯りをつける。

06:30:起床。自動的にその日の天気と温度、衣服のアドバイスを伝える。

07:30:朝食。飲むべき薬をお知らせし、ニュースを読み上げる

09:30:娯楽。京劇の中継など、入居者の好みに合わせた番組を放送する。

10:30:介助。なにかあったときは、その場で「助けて」と口にするだけで、ナースセンターに通知がいく。

12:30:昼食。音声で出前を注文することもできる。

18:30:日記:音声で日記を書くことができる。

20:30:消灯。自動的に灯りが消える。

21:30:睡眠。眠りに入りやすい音楽を流す。

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▲開発者向けのセミナーの資料。決済は、声紋識別で、誰の支払いであるかがわかるようにするという。

 

スマホ決済がベースにあるため生活サービスに使われるスマートスピーカー

現在、天猫精霊は、すでに100万個以上が販売され、中国の家庭で使われている。主な使われ方は、出前、タクシーの注文、ECサイトでの日用品の購入など、生活補助関連が多いという。中国では、スマホ決済が普及をしたため、スマホで簡単に決済ができるようになり、スマホからタクシーを読んだり、出前を注文したり、ECサイトで日用品を購入するということが定着をした。そういう人たちにとっては、スマートスピーカーは「スマホを使うより便利」と感じるのだ。

この「決済の電子化、スマホ化」が進んでいないと、せっかくスマートスピーカーがあっても、いちいち決済操作が必要となり、「スマホの方が便利」と感じ、スマートスピーカー普及のブレーキとなってしまう。ただの音楽スピーカーとしてしか使い道が見出せず、すぐに飽きてしまうことになるだろう。

スマートスピーカー普及の鍵は、「生活に役立つ機能」をどこまで充実させることができるか。アリラボは、老人介護施設という場所で、どのような機能が必要かを探り出そうとしている。

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