中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

アリババ社員がブラック労働に耐えられる理由

中国杭州市に本拠を置くアリババ。タオバオ、TmallといったECサイトで急成長し、現在ではQRコード方式スマホ決済「アリペイ」を核として、シェアリング経済、社会信用スコアなど、社会の仕組みを変えていくほどのインパクトがある事業を進めている。そのアリババの社員は猛烈に働く。ブラック労働といっても過言ではないほどだが、離職率は極めて低いという。なぜ、アリババ社員は過酷な労働に耐えられるのか。三茅網が解説した。

 

海外帰国組IT企業と国内組IT企業

現在中国で、最も勢いのある企業はBATJあるいはBATXなどと言われる。BATJとは、百度、アリババ、テンセント、京東の4社の頭文字で、BATXは京東の代わりにシャオミーが入る。この5社は、2種類に分けられる。それは創業者が海外帰国組か国内組かという分類だ。当初は、百度のように海外の大学で学び、中国に帰国し創業した帰国組によるIT企業に勢いがあった。しかし、今、勢いがあるのがアリババ、テンセント、京東、シャオミーのような留学経験のない国内組により創業されたIT企業だ。

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海外帰国組のロビン・リー

アリババの創設者ジャック・マー会長は、百度の創設者ロビン・リーCEOとよく比較をされる。ロビン・リーはトップの成績で北京大学に入学をし、卒業後、ニューヨーク州立大学に留学。その後、インフォシークなどのシリコンバレー企業で働き、帰国をして百度を創設した「帰国組」。現在の百度は、独自のイノベーションを起こしているが、当初は「グーグルの真似」をしていた。帰国組経営者のIT企業にはこのパターンが多い。中国のインターネットが外部と遮断された「巨大LAN」になっていることを利用して、海外の優れたサービスを真似るところから出発している。

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国内組のジャック・マー

一方で、ジャック・マー会長は、大学進学にも苦労するほどの劣等生。海外留学の経験もない「国内組」。海外のサービスを真似しようにも、海外の事情をよく知らない。そのため、中国の社会状況をよく観察し、中国独自のサービスを構築してきた。最初は、「世界の工場」と呼ばれた中国で、企業間が機械部品などの商取引をマッチングさせるBtoBサイト「アリババドットコム」で成功。この仕組みをそのまま使い、CtoC個人間取引サイト「タオバオ」、BtoCショッピングモールサイト「Tmall」で成功。ECサイトで利用していたサイト内通貨を、実体店舗でも使えるようにした「アリペイ」で、中国社会を変えつつある。

中国は、外からイノベーションを持ち込む海外組と、内からイノベーションを起こす国内組で、外と内から変革をしつつある。

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4倍の給料を提示しても引き抜くことができないアリババ社員

そのアリババは、おそらく中国一のブラック企業かもしれない。社員はほぼ全員、猛烈に働く。就業時間の規則はあるものの、誰も詳しく知らないという状態だ。それでも、ジャック・マー会長は「他企業が4倍の給料を提示しても、アリババ社員を引き抜くことはできない」と豪語する。仕事は確かにハードだが、それ以上の待遇が用意されているからだ。

中国人は、誰もが食べることに貪欲だ。アリババ本社は、2フロアが社員食堂になっており、だいたい20元(約340円)で一食を食べることができる。10年前の中国を知っている人にとっては、あまり安いとは思えないかもしれないが、今の中国の外食は価格が上昇し、東京とほぼ変わらない。ちょっとしたレストランに行って、一人100元(約1700円)以内に収めようとすると、注文を工夫する必要がある。外食の価格が上昇し続ける中国で、20元で食べられる社員食堂は、ありがたい存在だ。

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▲基本ランチセットは20元(約350円)。ホテルレストランのスタッフが雇用されていて、味は高級ホテルクラスだという。

 

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▲アリババの社員食堂では、15元(約250円)の定食が人気。中国の外食は値上がりを続け、感覚的には東京よりも高く感じるほど。その中で、15元の定食は格安だ。

 

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▲副食は1品わずか4元。種類も多く、味も好評だ。

 

月収は34万円、プラス自社株、プラスボーナス

給与に関する待遇も破格だ。研修期間を終えて、一人前の仕事ができるようになると、給与は月2万元(約34万円)ほどになる。また、社員は自社株を2000株まで購入することができる。アリババが米国市場に上場する前に2000株を持っていた社員は、タダ同然で2000株分の価値=約100万元(約1700万円)の資産を手に入れたことになる。

また、毎年4月末には、アリババの年度が終わり、業績と各社員の成績に応じてボーナスが支給される。額は、社員個人の業績次第だが、大きな事業を成功させた社員には数千万元のボーナスが支給されたこともある。

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▲アリババがいちばん忙しくなる11月11日独身の日セール。セールが終わると、ジャック・マー会長自ら大きな魚をさばき、社員に振る舞うのが恒例になっている。

 

マンションも4割引で購入、無利子ローンも

さらに、福利厚生も充実している。住宅資金として、社員は30万元(約510万円)の無利息融資を受けることができる。住宅資金としては額が小さく思えるが、アリババは杭州市内に独自にマンションを建設していて、アリババ社員は4割引で購入できるのだ。

また、アリババでは、社内結婚を奨励していて、結婚前提の合コンがたびたび開催される。また、子作りも奨励されていて、妊娠をした社員には300元(約5000円)の奨励金と、電磁波を遮断するエプロンが贈られる。

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▲アリババ社員はみな猛烈に働くが、仲もいい。日本が失ってしまった家族主義的企業経営が生きている。

 

昭和の日本企業のような家族主義と猛烈労働

このような待遇、福利厚生策を聞いて、中高年は思い当たることがあるだろう。それは昭和の日本企業とそっくりなのだ。猛烈に働くけど、社員を家族のように大切にする。給与だけではなく、住居、結婚、子作りまで面倒を見る。

確かに百度などの海外組IT企業から見ると、アリババは泥臭く洗練されていないかもしれない。しかし、ジャック・マー会長は、このような家族的経営が中国人の心を掴めることを知っているのだ。アリババは、中国IT企業の中でも離職率が図抜けて低いことでも有名だ。また、スピンアウトして起業する社員が多いことでも有名だ。中国のIT企業は、シリコンバレーの真似をするところから始めて、中国独自のあり方を築き上げるようになっている。

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