中華IT最新事情

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わずか数秒で、20億人を識別。中国の監視カメラシステム「ドラゴンフライアイ」

上海のYituが開発をした監視カメラシステム「ドラゴンフライアイ」は、人工知能により数秒で20億人を識別するという性能を持っている。犯罪の抑止効果が高いことから、各地公安が続々と導入を始めていると南華早報が報じた。

 

ボタンが一切ないエレベーター

上海のIT企業Yituの本社ビルのエレベーターには、階数ボタンが一切存在しない。あるのは監視カメラと小さなモニターだけだ。顔認証で、訪問予定リストにない人が乗り込むとエレベーターは動かない。事前に受付を済ますと、自動的に顔が撮影され、顔認証をして適切な階にエレベーター自動的に移動をする。

オープンスペースには、大きなモニターにYituのフロアマップが描かれ、人を指定するとその人がどの場所にいるのかがリアルタイムでわかるようになっている。企業のセキュリティーをカードに頼るのではなく、すべてを顔認証で行っている。

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▲Yitu社内の大型モニターには、全員の居場所がリアルタイムで表示される。顔認証で追跡をされているのだ。

 

数秒で20億人の顔を識別する人工知能

Yituは、監視カメラのクラウド化と人工知能による顔識別の技術を磨き、「ドラゴンフライアイ」という名前のシステムを開発、中国の各地公安が続々と導入中だ。Yituの共同創設者、朱龍は、南華早報の取材に応えた。「ドラゴンフライアイは、わずか数秒で20億人の顔を識別することができます。これは、3年前にはまったく考えられないことでした」。

ドラゴンフライアイは、すでに中国政府が保有する18億人の顔データベースに連結をし、一部の地域で稼働中だ。逃亡犯、前科のある者、テロリストなどの顔を見分け、瞬時にアラートを発令する。監視カメラは、街頭にも無数に設置されているが、駅、港、空港などが重要視され、このような重要拠点には解像度の高い監視カメラが設置され、認識率を向上させている。

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▲空港や駅などのゲートには、このような監視カメラが設置され、犯罪者やテロリストを識別すると、アラートが発せられる。このシステムは、中国の主要都市ですでに活用され、成果をあげている。

 

中国で導入が始まる顔認証監視システム

Yituによると、ドラゴンフライアイは、すでに20の県、直轄市レベルの公安、150の市町村レベルの公安で採用されているという。Yituのサイトには、堂々と採用事例が掲載されている。掲載されているのは、蘇州市、アモイ市、武漢市、寧波市。上海地下鉄で、今年の1月に試験運用をしたところ、3ヶ月間で567人の犯罪者を逮捕するという大きな成果をあげた。犯罪抑止、治安の向上にも大きな成果があるため、中国全土で採用されることになると、Yituは強気の見通しを立てている。

朱龍は言う。「顔認証が実用的かどうかなどということを議論するのはもはや時間の浪費です。2015年には、すでに顔識別で人工知能は人間を負かしているのです。しかも、この2年で、人工知能による顔識別は1000倍は精度が上がりました」。

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▲Yituの共同創設者、朱龍氏。2400万人の人口がある上海市で利用できる顔認証監視システムを開発することを目標に起業をした。

 

私たち外国人もデータベースに登録されている

中国人は公称、人口14億人だ。なぜ、データベースには18億人分が登録されているのか。中国を訪れる外国人もデータベースに登録されているからだ。国際的な問題になりそうな話だが、米国もつい最近まで、愛国者法により外国人のメールや電話は裁判所の事前許可なしに盗聴が可能な状態だった。テロから市民を守るため、どこの国も必死にセキュリティ対策を行っているのだ。もし、あなたが「上海、小籠包食べ放題2泊3日ツアー」に参加したとしても、おそらくこのドラゴンフライアイのシステムに顔が登録され、中国政府がその気になれば、あなたがどの辺りをうろついているかリアルタイムで知ることができる状態になるだろう。

100%の安全と100%のプライバシーを両立させることはできない。私たちは、いずれかを選択しなければならないのだ。あなたはどちらを選ぶだろうか。

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