中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

エンジニアが最も働きやすく、起業しやすいのは北京市中関村

エンジニアが働くのに最も環境のいい都市は?少し前であれば、そして今でも、シリコンバレーだと答える人は多いはず。しかし、ロンドンを拠点とするコンサルティング企業「エキスパートマーケット」が包括的な調査分析をしたところ、1位は中国北京市の中関村、2位はドイツベルリン市のシリコンアレーとなり、米シリコンバレーは3位であるという結果になった。

 

エンジニアが働きやすい都市は北京

エキスパートマーケットの調査方法は、3つの観点でポイントをつけ、総合順位を決定するというもの。3つの観点とは、1)ソフトウェアエンジニアの平均給与、2)生活必需品の物価、3)スタートアップへの投資額だ。つまり、給与が高く、物価が安くて暮らしやすく、なおかつ起業もしやすい都市が、エンジニアにとっていい街ということになる。

その中で、目立ったのが米シリコンバレーが順位を下げたことと、北京、上海、バンガロール(インド)などのアジア都市が躍進をしたことだ。エンジニアの平均給与は米シリコンバレーが未だに世界一で、流れ込むスタートアップの投資資金も世界一であることには変わりない。しかし、同時に物価が高騰していることが、エンジニアにとってネガティブに作用している。

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▲エキスパートマーケットが公表した世界テックハブ都市のランキング。物価なども考慮され、エンジニアにとって働きやすい街のランキング。ベルリンが2位にランキングされていることにも注目をしたい。

 

シリコンバレーは生活費が高すぎる

シリコンバレーで働くエンジニアに聞くと、日本円で年収1000万円程度だと、貧しいとまではいかないものの、かなり節約をしなければならない不自由な生活を強いられるという。夫婦それぞれが年収1000万円を確保して、ようやくゆとりのある生活ができるようになる感覚だという。とにかく、家賃と食費にお金がかかるそうだ。

また、近年ではあえてシリコンバレーでの起業を避ける起業家も現れ始めている。外国人起業家がほとんどだが、シリコンバレーで活動をして、投資家とのつながりを持つと、母国に帰ってから起業する。シリコンバレーではエンジニアの給与が高すぎて、スタートアップ企業にはつらいのだという。また、東京、北京、ベルリンなどであれば、シリコンバレーと同程度のスキルのエンジニアが低コストで調達できることが魅力になっているという。

中国、インドなどは、都市開発が進んでいると言っても、まだまだ生活コストは抑えられる。そのため、さほど高くない給与でも、エンジニアが集まるのだ。

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▲現在の中関村。電子製品の小売店が集まってきただけでなく、百度、シャオミーなどのIT企業がオフィスを構えるようになり、中国のシリコンバレーとなっていった。

 

シリコンバレーと中間村の2つがテックの中心に

このランキングは、あくまでもエンジニアにとって働きやすい都市であって、新しいテックが生まれる、世界のゆりかごとなっているのがシリコンバレーであることには変わりない。しかし、エキスパートマーケットでは、北京中関村が、シリコンバレーの強力なライバルになっているという。なぜなら、中国は市場の規模が巨大で、なおかつ消費者の反応が早いため、スタートアップの成長速度が圧倒的に速いからだ。

以前お伝えしたように、企業価値10億ドルになりながら未上場のスタートアップをユニコーン企業と言うが、シリコンバレーでスタートアップがユニコーン化するまでの平均時間は約7年だが、中国では3年程度。

世界のテック地図が、この数年で大きく塗り替えられることも多いにありそうだ。

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▲2001年の北京市中関村。この頃は、なにも発展していない北京市の郊外にすぎなかった。電気パーツ店などがようやく店を開き始めた頃。