中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

宅配便の梱包ゴミ洪水に飲み込まれていく中国の大都市

2016年の中国の宅配便件数は313.5億件、日本の8倍以上にもなる。宅配物流もパンク寸前だが、それ以上に問題化しているのが、宅配便の梱包材のゴミ問題だ。年平均1人が20kg以上の包装ゴミを出していると大洋網が報じた。

 

使用されたガムテープは地球425周分

中国でも、アリババが運営するタオバオ、Tモール、さらにはECサイト大手の京東商城などが人気で、ネット通販を利用する人が急増し、宅配便物流がパンク状態になっている。国家郵政局が2015年に公表した統計によると、宅配便件数が207億件で、その包装に布袋が31億枚、ビニール袋が82.68億枚、封筒が31.05億枚、段ボール箱が99.22億箱使用された。使われたガムテープの長さは169.85億メートルで、これは地球の赤道を425周する長さだという。

中国循環経済協会によると、宅配便件数は2016年に300億件を突破し、2017年には400億件を超えるとみられている。2020年には700億件に達する見込みだ。

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年間300億件以上の宅配便が利用されるが、そのすべてが梱包され、その梱包材がゴミとなっている。このままでは、宅配便ゴミに飲み込まれてしまう都市が現れてくる。

 

宅配ゴミは年一人20kg以上

宅配便の物流がパンク状態となり、すでに郊外ではドローン配送なども始まっているが、物流とともに大きな社会問題になっているのが、包装ゴミのリサイクル問題だ。

深圳市では、毎年一人が平均で172回の宅配便を利用し、毎年一人あたり20.29kgの宅配包装ゴミを生み出しているという。これは深圳市で処理するゴミの、実に40%以上になる。

中国の大都市では、どこでも似たような状況で、物流拠点は荷物に埋もれ、街は包装ゴミに埋もれそうになっている。

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過剰包装が大量ゴミの原因

深圳市の都市環境問題研究機関の報告によると、大量の包装ゴミが生み出される最大の原因は過剰包装だという。ネット通販を利用するのは女性が多く、美容関係の商品がよく売れる。ガラス瓶の場合、小さいものでも、段ボール箱の中に緩衝材を大量に入れる梱包が多い。段ボール箱の大きさを揃えた方が、梱包作業、運搬などが効率化できるため、大きな段ボール箱の中に大量の緩衝材を入れて、小さな商品を発送する。

 

もうひとつの理由がリサイクル率の低さ

すでに再利用できる梱包材、容易に分解する梱包材なども開発されているが、価格が高いために多くのECサイトが、従来型の段ボール箱とビニール袋などを利用する。このような低価格の梱包材のリサイクルは、価格が安いので利益がほとんど出ないため、進んでいない。

ある研究機関の推計によると、宅配梱包材のリサイクル率は10%程度で、段ボール箱ですら20%に達していないという。緩衝材やガムテープなどのリサイクル率はほぼ0であるという。

 

リサイクルの循環回路を確立することが重要

また、多くの人の誤ったリサイクル知識もこの問題を複雑にしている。宅配企業の順豊の包装実験室上級エンジニアの肖志明氏は、大洋網の取材に応えた。「多くの人がビニール素材よりも、段ボール箱の方が環境に優しいと考えています。しかし、紙をつくるには大量の樹木を伐採し、生産過程で大量の廃棄物を出し、環境に与えるインパクトは大きいのです。やるべきことは、リサイクルの循環を確立して、同じ梱包材を何度も再利用することなのです」。

順豊の包装実験室では、すでに複数回再利用が可能な梱包材を開発済みだが、価格が高い(リサイクル循環が確立すれば、1回あたりのコストは安くなる)ため、なかなか使用が広がらないという。

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宅配便の件数が多すぎて、どこの集荷場もパンク状態。遅配、不達なども日常的になっているという。

 

このままでは街が宅配便ゴミに飲み込まれる

中国循環経済協会の廃棄物資源化専門委員会の李海濤服秘書長は、大洋網の取材に応えた。「重要なのは、逆向きの物流体系を構築することです」。政府が主導をして、通常の物流とは逆に流れ、梱包材を回収するリサイクル物流経路を構築する必要があるという。集合住宅やオフィスビルに、回収ポイントを設置し、宅配便業者が、そこに出された梱包材を配達と同時に回収をしていく。必要な費用は、リサイクル基金を設立し、ECサイトの商品に上乗せをして徴収する。

こういった構想は、各都市でも提出されている。しかし、リサイクル基金の設立が進まず、リサイクル率はほとんど上がっていない。

このままでは、1、2年で限界を超え、街に段ボール箱と緩衝材があふれ出すことになるが、有効な対策はほとんど取られていない。

ECサイトと宅配便はより便利になり、農村でもECサイトを利用する人が増え始めている。その前に、宅配便ゴミをリサイクルする仕組みを作らない限り、中国の都市は宅配便ゴミの洪水に飲み込まれてしまう危険性がある。

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中国の都市部では、翌日配送が普通になっている。さらに、当日配送も始まるなど、サービスは急速に向上しているが、その裏でスタッフの重圧は限界を超えている。