中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

25歳以下は、自分の顔を晒す抵抗感を持たない。変わるプライバシー意識

中国のFacePartyというスマートフォンアプリが大人気だ。わずか3ヶ月で、10万ダウンロードを達成しただけでなく、1日1人平均3回から4回起動されている。ユーザーの80%は、20代前半の若者であると鉛筆道が報じた。

 

未知の人にも平気で自分の顔を見せる25歳以下

FacePartyは、知らないもの同士が出会えるSNS。ただし、ビデオチャットであり、顔出しが基本だ。知らない人に対して、自分の顔を見せるというのには、まだ抵抗がある人も多いと思うが、中国の20代前半の若者は、だから面白いと、FacePartyが大人気のアプリとなっている。

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▲FacePartyの画面。グループ同士でビデオチャットが楽しめるようにし、ゲームも数多く用意されている。バーで2人組の男性が、2人組の女性をナンパする感覚が再現されている。これが20代前半の若者に受けた。

 

顔を隠す20代後半、顔を出す20代前半

FacePartyを開発した安明威(あん・めいい)氏は、IT企業「百度」で「百度貼吧」(掲示板)の動画掲示板の運営責任者をしていた。

その時に、同じ若者でも、20代前半と20代後半では、感覚がまったく違っていたことに気づいた。20代後半の若者は、自分の動画を投稿する時に、被り物をしたり、動画を加工して、自分の顔を隠してしまう。しかし、20代前半以下の若者は、顔を隠そうとせず、そのまま動画に登場することを好んだのだ。

安明威氏は、新しい感覚の世代が登場してきたことを感じ、百度内で動画SNS「Sala」の開発プロジェクトを始めた。知らない人と、テレビ電話でつながるというSNSだった。

 

いきなり顔を見て、仲良くなってしまうビデオSNS

ところが、このプロジェクトは順風満帆というわけにはいかなかった。なぜなら、見知らぬ人と出会えるSNSとしては、すでに「陌陌」「探探」などが存在し、ライバルが多すぎるという指摘を受けたのだ。しかし、安明威氏にしてみれば、Salaはそのような従来のSNSとはまったく違う。Salaは、知らないもの同士がいきなりテレビ電話で結ばれ会話をする。「陌陌」「探探」は、画像と文字が基本で、音声やテレビ電話で話すようになるまでには長い時間が必要になる。20代後半以上は、このように段階を踏みながら親しくなっていくSNSを好むかもしれないが、安明威氏の観察によれば、20代前半にとっては、そのような段階はうっとおしいだけで、いきなり相手の顔を見て、感覚で友人になれるかどうかを判断し、だめだと思ったら、その場で通話を切ってしまい、いいとなればすぐにでも会いにいくというスピード感が必要だった。

しかし、その違いが、社内ではなかなか理解してもらえなかった。すでに米国では見知らぬ人同士がいきなりテレビ電話でつながるMonkeyというアプリがリリースされ、わずか2ヶ月でAppStoreのSNSランキングの5位に入っていた。

のんびりしてはいられないと感じた安明威氏は、百度を辞職して、起業してSalaの開発を続けることにした。今年の3月に辞職をして、スタートアップ「FaceParty」を立ち上げた時に、安明威氏に賛同した百度のエンジニア4人が付いてきた。

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▲米国でもビデオチャットアプリMonkeyが人気になっている。こちらは1対1のビデオチャットのみ対応。文化の違いによるものだと思われる。

 

グループ同士でビデオチャットするナンパ感覚が受けた

FacePartyは、ただ見知らぬ同士をテレビ電話で繋ぐのではなく、中国人に受ける工夫をしていた。それまでのMonkeyなどは、1対1の会話をするアプリだが、中国人はそれでは話が盛り上がらないので、グループ同士でテレビ電話が繋がるようにした。例えば、ある男性が、離れたところにいる友人を誘って、2人のグループを作り、女性2人組のグループを検索する。これで繋がると、4人でテレビ電話で話ができるようにした。男性2人でバーに出かけて行き、女性2人組に声をかける。この感覚で、繋がれるようにした。

さらに、今年9月には、繋がっている同士で、人狼ゲームが楽しめるようにした。参加者の一人が密かに人狼に指定され、残りのプレイヤーは質問をしながら、誰が人狼であるかを推理していくゲームだ。

 

ユーザー数は10万人でも、毎日3回以上は起動される

こうした工夫で、リリースわずか3ヶ月で、10万人のユーザーを獲得した。ユーザー数はさほど多いとは言えないが、驚くのはアプリの利用率だ。1人平均1日で3回から4回はFacePartyを起動し、1回あたりの使用時間は30分から40分にもなる。ユーザーの80%は20代前半の若者で、男女比は1.3:1だという。

今後は、FacePartyの中で遊ぶゲームのアイテムの有料販売、有料VIP会員などの制度を設け、また有料の心理カウンセラー、語学レッスンなども追加し、マネタイズをし、投資を呼び込みたいとしている。