中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

中国のスタートアップは3年でツノを出す。中国IT経済の強さを支えるユニコーン企業

コンサルティング企業「ボストンコンサルティンググループ」(BCG)は、中国アリリサーチ、百度発展研究センター、滴滴政策研究院と共同して、『中国インターネット経済白書:中国インターネットの特色を読み解く』を公開した。目を引くのは、中国のユニコーン企業の多さと、創業からユニコーン化するまでのスピード感だ。

 

潜在力を残している世界最大のネット大国、中国

『中国インターネット経済白書:中国インターネットの特色を読み解く』は、主要国のインターネット経済を分析した報告書。各国のインターネット経済データが比較され、eGDP(GDP中のインターネット関連生産額の割合)なども比較されている。

中国のインターネット経済の特色は、何と言ってもインターネット人口の多さだ。すでに7.1億人がインターネットを利用し、これは米国の2倍以上になる。しかも、これは中国の総人口の半数程度であり、中国はまだまだインターネット経済を成長させる潜在力を秘めている。

これはネット消費額からも裏付けられる。ネット消費額は米国に迫る勢いだが、ネット人口を考え、ネット利用者一人あたりの消費額を計算してみると、米国は約3900ドル、中国は約1360ドルと1/3以下になる。つまり、ネット経済が成熟をしている米国に比べて、中国はネット人口からも一人当たりの消費額からも、まだまだ成長空間がたっぷりと残されていることがわかる。

f:id:tamakino:20170921090734p:plain

▲中国は圧倒的にネット人口が多い。しかし、それでも人口の半分程度でしかなく、今後まだまだ成長できる空間を残している。

 

f:id:tamakino:20170921090740p:plain

▲中国のネット消費額は米国に迫る勢い。しかし、1人当たりの消費額にすると米国の1/3程度になってしまう。1人当たりの消費額でも成長空間が残されている。中国のネット企業が海外よりも国内市場開拓に熱心なのも当然だ。

 

ネット経済の依存度が高い韓国と中国

しかし、eGDPを比較すると、別の見方も出てくる。eGDPとはGDP(国民総生産)中のネット総生産額の割合だ。高ければ高いほどネット依存の経済であり、低ければ低いほど既存産業の存在感があるということになる。

このeGDPを見ると、米国は5.4%と、ネット経済の規模も大きいが、非ネット経済の規模も大きく、健在な経済社会構成になっていることがわかる。

しかし、アジア圏の韓国、中国はeGDPが高く、ネット経済への依存度が高い。特に、韓国はネット経済の成長率が高くないのに、eGDPが高いということは、既存産業の縮少が起こっているということであり、注意しておく必要がある。

一人あたりのスマートフォンアプリ装着率(一人平均いくつのアプリを入れているか)も、世界平均に比べて、中国、韓国、日本が高い。アジア各国は、完全にネット経済が成長の中心軸になっている。

f:id:tamakino:20170921090745p:plain

▲eGDPはGDP中のネット由来の総生産額の割合。数値が高いほどネット経済が進んでいることになる。アジア各国はいずれもeGDPが高い。しかし、逆に言えば、既存産業が縮小していることにもなる。

 

世界ネット企業ランキングは、米国と中国の企業ばかり

アジア圏で、ネット経済が著しく成長しているのは中国だ。それは、ネット企業の世界ランキングを見てもわかる(アップルやマイクロソフトなどのような企業は、ネットのみの企業ではないので除外されている)。

圧倒的に強いのは、グーグル、アマゾン、フェイスブックといった米国のネット企業だが、アリババとテンセントが4位と5位に食い込み始めた。さらに、百度、京都、網易も10位以内にランクインしている。

しかし、このような中国のネット企業の多くは、グローバル化してなく、市場のほとんどは中国国内だ。そのため、中国のネット人口の成長に合わせて、今後も成長はしていくだろうが、その成長率は緩やかなものになると想像できる。中国のネット企業が、今後も大きく成長するには、海外展開がどれだけ成功するかにかかっている。グーグル、アマゾン、フェイスブックの上位3社はグローバル展開をしており、これが上位3社と、それ以下を分けている鍵になっている。

f:id:tamakino:20170921090752p:plain

▲世界のネット企業時価総額ランキング。グーグル、アマゾン、フェイスブックに次いで、アリババ、テンセントという中国企業ランクインしている。10位まではいずれも米国企業か中国企業だ。

 

勝負が早い中国のスタートアップ企業

中国のネット経済の強さのもうひとつの秘密がユニコーン企業だ。ユニコーン企業は、企業価値が10億ドル以上になりながら、まだ上場していない企業。つまりは、急成長をしたスタートアップのことだ。このようなユニコーン企業に投資をして、上場をすれば、莫大なリターンが得られることから、投資家たちは有望なユニコーン企業を血眼で探している。

ユニコーン企業と言えば、米国、特にシリコンバレー地区に集中しているイメージだが、実は中国にも数多く存在している。企業価値の合計で比較すると、米国とほぼ互角のところまできている。

特に驚かされるのが、スタートアップがユニコーン企業に成長するまでにかかる時間だ。米国では、ユニコーン企業に成長するまでに平均7年かかっているが、中国の場合は平均4年。46%の企業が、2年以内にユニコーン化している。これは驚くべきスピードで、これが中国のネット経済の力強さの秘密になっている。

日本では、自転車ライドシェアや無人コンビニといった中国スタートアップの失敗例ばかりが報道され、あたかも社会が混乱しているかのように感じている人もいるかもしれないが、要は中国のスタートアップは勝負が早いのだ。わずか2年で、ユニコーン化か倒産かがはっきりしてしまう。このスピード感が、中国のネット経済を成長させている。

f:id:tamakino:20170921090759p:plain

ユニコーン企業の企業数。圧倒的に米国が多い。

 

f:id:tamakino:20170921090804p:plain

▲しかし、ユニコーン企業の企業価値の合計で見ると、中国は米国に迫る勢いになる。中国のスタートアップが急成長していることがわかる。

 

f:id:tamakino:20170921090809p:plain

▲驚くのはスタートアップがユニコーン化するまでの年数。米国は平均7年だが、中国は平均4年。しかも2年目にユニコーン化する企業も多い。このスピード感が中国のネット経済の急成長を支えている。