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スマホ決済はもう古い。顔パス決済で食事ができるケンタッキーレストラン

浙江省杭州市でケンタッキーフライドチキンがKProという名称のレストランの営業を始めた。KProでは顔認識による決済が可能になり、財布もスマホも不要だ。杭州市は顔認識などの生体認証を推進している市で、この顔認証決済は、他の店舗にも広がって行くことになると第一経済が報じた。

 

笑顔で決済ができるスマイルペイ

浙江省杭州市は、文人墨客が愛した西湖を抱える中国随一の文化都市だ。人口も700万人と、中国の都市としては中規模。落ち着きのある静かで美しい都市として知られる。

しかし、他の都市と違うのが、杭州市にはアリババの本社があるということだ。そのため、杭州市はアリババのアリペイが推進する「無現金化都市」政策を積極的に取り入れ、さらには市政府は顔認証技術を推進している。

このふたつが結びついて、「顔認証決済」がケンタッキーフライドチキンが運営するレストランKProに導入された。アリババでは、この顔認証決済のことをスマイルペイと呼んでいる。

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杭州市にあるアリババ本社。アリババの本拠地であるため、関連のIT企業も多く、杭州市は、深圳、北京に次ぐIT企業の都市になろうとしている。

 

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ケンタッキーフライドチキンが、杭州市に開いたカフェレストランKPro。顔認証で食事ができる。メニューも、健康やエコに気を使ったものになっている。

 

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▲メニューは、健康に配慮した野菜中心のものになっている。

 

登録してしまえば、財布もスマホも不要

Kproは、ケンタッキーが運営するレストランだが、店内はより高級感を出し、「健康、エコ、有機」を前面に出したレストランだ。新鮮なサラダ、その場で絞ってくれるフレッシュジュースなどが売りで、杭州市のホワイトカラーの間で人気が出ている。

このKproで、顔認証決済が導入されている。

Kproレストランに入り口には、数台の大きなタッチパネルが用意されている。最初は、このタッチパネルを使って、顔を登録し、スマホ決済「アリペイ」のIDとの紐付けを行う。それから、カメラが起動し、顔認証を行い、認証が行われると、料理のメニューが出てくるので、タッチをして選ぶ。

次に、空いている座席表が現れるので、座りたい席を選ぶ。あとは、その席で待っていれば、注文した料理が運ばれてきて、食べるだけ。代金は、アリペイで自動的に引き落とされるので、食べ終わったら帰ればいいだけだ。

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▲入り口付近にある大型タッチパネル。ここで、顔認証、メニュー選択、座席選択を行う。

 

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▲最初に顔認証を行う。これだけで、紐づけておいたアリペイから、代金が引き落とされる。将来は、この顔認証プロセスをステルス化して、来店客がメニューや座席を選ぶのと並行して行うことも可能だ。

 

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▲顔認証が終わったら、メニューと座席を決め、その座席で待っていると料理が運ばれてくる。

 

レジに並ばない、席を探さない。食べて帰るだけの快適体験

これは、回転率が比較的高いファストフード系レストランやカフェなどにはうってつけのシステムだ。例えば、日本の多くのカフェのユーザー体験と比べてみれば、このKproの快適さが理解できる。日本の多くのカフェでは、混雑時には、注文レジに並び、次に飲料が出てくるカウンター前に並び、さらに次は、飲料を自分でトレイで運びながら、空いている席を探さなければならない。ひどい時には、「先にお席の確保をお願いします」などと、本来客にやらせるべきではない作業まで押し付けられる。

一方で、Kproは「レジに並ぶ」「商品カウンターに並ぶ」「自分で商品を運ぶ」「席を探す」という悪いユーザー体験がすべて解消されている。なおかつ、レストランのようにフロアの状況を把握し、来店客を誘導するホールスタッフは不要で、ホール係はできあがった商品を決まった席に運ぶだけでいい。店舗側のスタッフの負担も大きく軽減できる。

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▲メニューは、野菜などの健康的な食材が中心。店内も高級感にあふれている。

 

顔認証ステップもステルス化させることが可能

現在、大型タッチパネルでは、まず顔認証のステップが行われるが、これはまだ客側も慣れていないため、「顔認証が行われている」ということを伝えるために必要なだけで、将来的にはこのステップを見えなくしてしまうことも可能だ。わざわざ「顔認証中です」というようなステップを作らなくても、客がメニューと座席を選んでいる間に、カメラをオンにして顔認証を行ってしまえばいいのだ。

こうなると、客は「料理を選んで」「座席を選んで」「食べて」「帰る」という4ステップで食事を済ませることができるようになる。

 

顔検索ではなく、一致を確認しているだけなので、認識率も高い

顔認証といっても、顔画像からユーザーを検索するのではなく、アリペイアプリに事前登録した顔画像と、店頭の大型タッチパネルのカメラで捉えた顔画像が一致するかどうかを確認しているだけなので、認識率は99.6%以上になるという。

今後、多くのファストフード店、カフェなどが、ユーザー体験向上のため、顔認証決済システムを導入して行くと期待されている。