中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

80人乗りの無人運転バス。公道試験が始まる

湖南省株洲市の公道で、無人運転バスの公開走行が行われた。全長12mの大型バスで、80人の乗客を乗せることができる。最高速度は時速40kmで走行し、車線変更、追い越しなどの試験も行われた。都市交通や観光路線に応用されると澎湃新聞が報じた。

 

大型バスの無人運転技術を開発する中国

中国中車は、鉄道車両を開発、製造している国有企業。その子会社である湖南中車時代電動汽車株式会社では、無人運転バスの開発が行われている。その公道での公開走行が湖南省株洲市で行われた。最高時速40kmの走行で、右左折、車線変更、追い越し、停車なども行われた。80人の乗客を乗せることができる。また、化石燃料は一切使わない完全電気自動車になっている。

安全のため、運転手が運転席に座ったが、公開走行中、発車から停止まで、運転手がハンドルやペダルに触れることはなく、5kmの全行程を無事走行した。


全球首款!中国中车发布12米纯电动智能驾驶客车

▲公道公開走行の取材映像。交通量の少ない道路が選ばれたため、トラブルもなく成功した。今後は、天候、時間、交通量などより複雑な状況での公道試験を進めていく。

 

試験道路では、すでに2ヶ月の試験を経験

この無人運転バスは、閉鎖された試験道路ですでに2ヶ月の走行試験を経ている。中車時代電動汽車の唐広笛(とう・こうてき)社長補佐は、澎湃新聞の取材に応えた。「今日の公道試験は、試験道路よりも条件がさらに複雑です。天候、路面、周辺環境など、複数の要因が無人運転に影響します。この公開走行に成功したとことで、私たちの人工知能運転技術の水準が示されたと考えています」。

f:id:tamakino:20170828095805j:plain

湖南省株洲市の公道で行われた公開公道試験走行。乗っているのは取材に訪れたメディア。運転手も一応乗車したが、途中で運転席を外れてしまった。

 

8000台のバスの運行データを人工知能が学習

この1台の無人運転バスの背後には、全国8000台のバスの走行データが存在している。有人運転のバス8000台のデータを自動収集し、このデータを使って、人工知能を学習させている。

1台のバスが1日に生成するデータは150メガから200メガ程度で、中車時代電動汽車では現在50テラ程度のデータを集積し、現在でもこのデータは増え続けている。

収集されるデータは、ペダルの使用回数、方向、エアコンのオンオフ、電圧、電流、温度、加速度、警告灯など多岐にわたっている。

f:id:tamakino:20170828095851j:plain

▲走行中の運転席。通常のハンドル、ペダルなどが備えられているが、走行中は勝手にハンドルが回っていく。

 

夜間でも安全に無人運転が可能

無人運転バスには、道路の交通規則判断システムと画像解析システムが搭載されている。交通規則判断システムには、各道路の交通規制情報が入っていて、さらにレーダーで前後左右の一般車両を補足し、交通規則に基づいて車線変更、追い越しなどをする。画像解析システムでは、道路の白線を補足し、無人運転バスが車線からはみ出ないように微修正を促す。

また、カメラ、レーザーレーダー、ミリ波レーダー、超音波レーダーなどが前後左右の障害物や歩行者を補足する。レーダー系が前方200m以内に障害物を発見すると、カメラによる画像解析で、その障害物が歩行者であるのか、車両であるのか、信号機であるのか、あるいはそれ以外であるのかを判別する。さらにミリ波レーダーなどを組み合わせ、障害物の正確な位置を割り出し、障害物の種類によって適切な行動が行われる。基本は、減速、停止だが、その時のバスの速度や周辺環境を判断して、回避が適切な場合は、回避行動をする。

また、暗視カメラが採用されているため、この無人運転バスは夜間でも安全に走行できる。

 

都市交通の視点からは、無人よりも「コネクティッド」

中車時代電動汽車では、無人運転バスの車体の開発と同時に、バスの運行をモニタリングするクラウドプラットフォームも同時に開発をしている。無人運転バスは、すべてコネクティッドカーになるべきで、常にプラットフォームがバスの状況を把握している状況が重要だという。

例えば、乗客が突然増えた路線に、臨時にバスを追加したり、渋滞などが発生した場合は、臨時にその場所を迂回させるなどができるようになる。また、将来的にはバス停という考え方はなくなり、スマートフォンから乗車、下車を通知すると、周囲の環境を考えて、バスが停止できる場所に停車するということになっていくという。

f:id:tamakino:20170828095927j:plain

▲中車時代電動汽車が開発した無人運転バス。見た目は普通のバスと変わらない。電動で80人乗り。このような無人運転バスが、プラットフォームがリアルタイムに弾き出す最適ルートを走行するというのが将来の公共交通だ。

 

バス路線という考え方はなくなり、シェア交通になっていく

さらには、路線という考え方も消滅し、スマートフォンから出発地と目的地を指定すると、そのデータを分析して、バスの最適走行ルートをリアルタイムで生成し、都市全体の乗客の移動時間を最小化させることもできるようになる。

大都市用のような乗客が多い地区では、路線がある程度設定されている方が乗客はわかりやすいかもしれないが、過疎地などでは、路線という考えを捨てて、乗客のリアルタイムの要求に基づいて、走行ルートを自動判断するという方が効率的だ。乗客にしてみれば、多少遠回りをされてしまうこともあるかもしれないが、その代わり、バスの待ち時間が減り、乗客全員の移動時間を最小化させることができる。

中車時代電動汽車では、この無人運転技術を中型バス、小型バスにも応用していき、最終的には乗用車サイズの無人運転も実現させたいとしている。このような乗客数の異なる複数のバスがコネクティッドされて走るというのが、スマート都市での公共交通のあり方なのだ。

tamakino.hatenablog.com


全球首例自动驾驶大客车成功运行 / Test of unmanned bus successful

▲2015年8月には、河南省州市で、宇通客車が開発した無人運転バスの公道走行が行われている。都市交通問題に深刻な課題がある中国では、バスの無人運転技術の開発も進んでいる。