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人工知能が描く萌えキャラ。盗作なのか、創造なのか?で話題沸騰

上海市復旦大学の学生6人が開設したサイトMakeGirls.moeが話題を呼んでいる。二次元萌え美少女キャラを自動生成してくれるというもので、人工知能技術のひとつであるDCGANモデルが使われている。これは与えられたデータ群を学習して、そっくりのデータ群を生成するもの。これは盗作なのか、それとも創造なのか。ネット民の間で大きな話題になっていると雷峰網が報じた。

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▲MakeGirls.moeが生成した美少女キャラ。どれもどこかで見たことがあるような印象を受けるが、人間の手ではなく人工知能が生成したものだ。

 

2つのニューラルネットが対決しながら進化する人工知能

MakeGirls.moeは、二次元の美少女キャラを生成してくれるサイト。髪の色、スタイル、目の色や眼鏡、帽子などの属性を設定すると、人工知能が萌え美少女キャラを生成してくれる。

この人工知能のベースとなっているのは、DCGAN(Deep Convolutional Generative Adversarial Network=深層畳み込み生成対立ネットワーク)モデル。2つのニューラルネットワークが、対決をすることで高速学習をしていく。対決するネットワークとは生成と判別の2つだ。

この学習の仕組みは、偽札造りの例え話でよく説明される。生成ニューラルネットワークは、与えられたデータ群、つまり紙幣とそっくりの画像を生成するように学習していく。ところが、もうひとつの判別ニューラルネットワークは、生成された画像が本物の紙幣なのか、生成された偽の紙幣なのかを見分けるように学習をしていく。つまり、生成側はできるだけ本物そっくりにしようとし、判別側はそれを見破ろうとする。こうして、互いが競い合いながら学習を進めていくため、高速で学習が進んでいくのだ。

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▲MakeGirls.comでは、髪の色などを設定すると、お好みの美少女キャラを生成してくれる。

 

盗作と創造の境目が溶けていく

このGAN(生成対立ネットワーク)は、最終的に判別ネットワークの真贋の判別率が50%に落ち着く。つまり、真贋がつかないレベルまで、高速で学習が進んでいく。

しかし、これは盗作にならないのだろうか。例えば、ある絵師が描くキャラクター群を元のデータとして読み込ませて、このDCGANに学習をさせる。すると、生成されるのはその絵師が描いたキャラクター群とそっくりのキャラクター群だ。誰も、これがその絵師が描いたものか、生成されたものか、区別をすることはできない。しかし、絵師本人は(記憶が確かであれば)「これを描いた記憶がない。私の描いたものではない」と言うことができるだろう。

盗作と創造の境目がなくなってしまうことになり、絵師の権利はどうやったら守れるのかという議論が始まっている。

このDCGANの利用法としては、ゲームなどを開発するときに、主要なキャラクターを人間が描き、それを学習させたDCGANで別のキャラクターを大量生成するという制作プロセスの効率化が考えられる。また、絵師ではないプロデューサーが自分のセンスで選んだ(権利処理された)キャラクター群を学習させ、オリジナルのキャラクターを生成するという使い方も考えられる。

 

2006年以降、流れが変わった萌えキャラの描き方

復旦大学のチームは、まずGetchu.comから、大量の美少女画像を購入して、背景を抜き、これを元データとした。さらにIllustration2Vecを使って、髪の色、服装などの属性を分析させ、分類した。

これをDCGANモデルに学習をさせていったが、チームはその学習中にあることに気がついた。それは、描かれた年が古い画像が含まれていると、学習速度が上がらないのだ。

チームは、元データの画像を制作年ごとに分類をして並べてみた。すると、明らかに2006年以降、萌えキャラの傾向や流行が変わっていることがわかった。そこで、2005年以前の元データ画像を捨てて、2006年以降の3万1255枚の画像のみを使って再学習をさせると、学習速度が上がり、生成結果も満足のいくものになった。

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▲萌えキャラを制作年ごとに分類して見ると、人間の目で見ても、明らかに2006年以降、異なってきていることがわかる。

 

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▲Illustration2Vecは、キャラクター画像を読み込ませると、その属性を確率表示で分類してくれる。

 

人間も人工知能と同じ学習の結果、オリジナルを生み出す

生成された画像を見ると、確かによく見かける萌え美少女キャラだが、誰かが描いたものではない。描いた本人が見れば、確かに自分の絵にそっくりではあるけど、自分のものではないとしか言いようがない。ましてや複数の人が描いた画像群を元データとして学習すれば、誰も自分の絵だとは言えなくなる。

しかし、オリジナルを描いている絵師本人だって、子どもの頃から美少女キャラを”学習”して、模倣から始めて、オリジナルを生み出すようになっているわけで、MakeGirls.moeは、この人間の学習プロセスを、効率よく、素早く行っているだけにすぎないとも言える。MakeGirls.moeが盗作ツールであるなら、人間の絵師すべても盗作絵師ということになってしまう。

MakeGirls.moeは、著作表現という実に人間臭い行為に、人工知能が踏み込むことで、新たな問題を提起しようとしている。

萌えキャラクターの描き方 顔・からだ編

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