中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

「ダンナ休憩カプセル」が上海のショッピングモールに出現

上海のショッピングモールにダンナ休憩カプセルが登場して話題を呼んでいる。高速鉄道グリーン車のシートを使い、Wi-Fiも完備し、ゲーム機も用意されている。スタートアップ「等吧」が試験運用したものだが、今後、広く展開できるのかどうか注目されていると鳳凰文創が伝えた。

 

買い物疲れのダンナを預かるカプセル

休日に家族で買い物に行くというのは、どこの国でも見られる光景だ。しかし、女性は4時間でも5時間でも買い物を楽しめるが、男性はだいたい30分ほどで主な店は回ってしまい時間を持て余すというのも万国共通の風景だ。

そこで、中国の百貨店では、広い休憩スペースを確保し、そこにユーモアで「ダンナ一時預かり所」という名前をつけていた。しかし、大型のショッピングモールには、この「ダンナ一時預かり所」は設置されない。大勢の人が座っている姿というのは、ショッピングモールにとってあまり都合がよくないことだからだ。人を座らせてしまったら、消費をしてくれない。消費の効率を上げるために、座る場所は最小限にし、どうしても座って休憩をしたい人は、カフェやレストランに誘導をする。そういう発想があるために、男性からはショッピングモールの評判はよくない。とにかく疲れるというのだ。

f:id:tamakino:20170803105733j:plain

▲ショッピングモールに設置された「ダンナ休憩カプセル」。奥さんや子どもが買い物を楽しんでいる間、ダンナはここでネットやゲームをして休んでいる。

 

ダンナはゲームをしながら、妻子を待つ

ここに目をつけたスタートアップ「等爾吧」が、「ダンナ休憩カプセル」の試験運用を始めた。透明カプセルの中には、高速鉄道グリーン車と同品質のシートを用意し、680種類のゲームが楽しめる。現在は試験運用であるため無料で利用できるが、正式運用後は、利用料やゲーム利用料などのマネタイズを考えていく予定だ。

実際に使った男性の評判は、両極端に分かれた。不評の第一位はエアコンが入っていないということだ。密閉されたカプセルの中では、温度と湿度がすぐに上がってしまい、不快に感じることもあったという。不評の第二位はカプセルが透明であることだ。まるで晒し者になっていて恥ずかしいという。

また、女性側からも不満が上がっている。買い物が終わって休憩カプセルのところにダンナを迎えてにいくと、ゲームに夢中になっていて、今度は女性が待たされることがあるというのだ。

f:id:tamakino:20170803105809j:plain

▲カプセルが透明であることに不満が多いが、完全に遮蔽してしまうと、中を汚されたり、場合によっては犯罪的な利用をされる可能性があることから、透明カプセルになっているという。

 

中国ではO2Oビジネスに投資が集中している

中国は、このようなカプセル型店舗の起業が相次いでいる。2人まで楽しめるミニカラオケ、恋人と2人でゆっくりとできるミニバー、ミニシアター、睡眠が取れる睡眠カプセルなどだ。

tamakino.hatenablog.com

この背景には、ネット完結型のサービスの収益が頭打ちになっていることがある。特に中国では、ネットによるコンテンツ配信ビジネスがほとんど成立しない。音楽や映画は、違法配信が多く、動画共有サイトにもすぐにアップロードされてしまうため、お金を払ってまで利用する人が極めて少ない。

そこで、中国で注目されているのがO2O(Online to Offline)ビジネスだ。日本のマーケティング用語のO2Oとは少し違っていて、ネットサービスとリアルサービスを組み合わせたビジネスに将来性があるという考え方だ。アプリで利用する自転車ライドシェアや無人スーパー、無人コンビニなどが代表格だ。このような中国版O2Oビジネスには投資が集まりやすい環境がある。

tamakino.hatenablog.com

tamakino.hatenablog.com

tamakino.hatenablog.com

この「ダンナ休憩カプセル」もそのような投資資金を受けたもののひとつだ。ダンナ休憩カプセルという面白コンセプトだけでは、拡大していくことは難しいだろうが、空港や駅などで、一般の待合室よりもリラックスできるスペースとして、あるいは街中にあって、ちょっとした仕事をこなせるミニオフィスとして活用することも考えているようで、コンセプトをピボットしていくことで、意外に成長する可能性はあるのかもしれない。