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中国の消費者保護はどうなっているのか。三包とテスラ問題、iPhone問題の関係

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明日、vol. 072が発行になります。

 

今回は、中国の消費者保護の問題を取り上げます。

2021年4月19日午後、上海で開催されたモーターショーで、マスクをした女性がテスラ車の屋根に登り、「テスラのブレーキは効かない!」と叫び続けた事件は、日本のニュース番組でも報道されました。この女性は引きずり降ろされ、上海市公安の青浦分局に逮捕され、公共秩序を混乱させたとして、勾留5日間の行政処分を受けました。

この女性は、2月21日に父親が運転するテスラモデル3に乗っている時に、河南省安陽市で交通事故にあいました。女性の主張では、ブレーキが効かなかったというもので、テスラに対して、第三者機関による検証と、テスラ車の返品、医療費の請求を求めていました。その交渉がうまく進まず、モーターショーでの行動となったのです。

ここだけ切り出すと、ややクレーマーにも思えてしまいますが、テスラ側の対応にも明らかに問題があり、中国ではこの数ヶ月、大きな話題になり続けています。また、メディアにより連日テスラの交通事故が報道されているため、テスラ車に対する信頼問題にも発展しています。

 

中国は意外なことに、消費者保護関連の法律は日本よりも厳しくなっています。もちろん、実際にその通りに行われているかどうかはまた話が別です。しかし、法律で定められていることを要求する消費者がこの10年で増え、消費者意識が生まれています。

例えば、家電製品や電子製品には、日本では、1年間の保証期間がつくのが常識です。しかし、日本の消費者基本法など消費者保護関連法の中に、そのような義務は規定されていません。なので、コンビニなどで販売されている単価の安い電池式の携帯電話充電器やポケットラジオなどでは、保証期間が設定されていない製品もあります。消費者基本法の理念からするとやや問題はありますが、多くの消費者が壊れても修理をせず、新しいものを買ってしまうことからの判断かもしれません。

また、保証期間があると言っても、対応は無償修理です。この対応に不満を述べる消費者は多くはありませんが、数々の問題が潜んでいます。最も大きいのは、消費者は、修理の間の期間、その機器を使えないということです。これが毎日使うスマートフォンなどの場合には大きな不利益を受けることになります。そこで、大手キャリアは代替機の無料貸し出しを行っていますが、これも義務ではなく、あくまでもサービスなので、MVNOや直接メーカーから購入した場合は、代替機サービスがあるかどうかは相手次第となります。

また、修理に必要な期間にも特に定めがないので、販売側が1ヶ月かかると言われれば、消費者はそれでも保証修理をするか、あるいは短期で修理できる別の業者に有償で依頼するか、その商品をあきらめるしかありません。修理をすれば正常に動くのですから、返品をすることもできません。返品についても法律の規定はなく、一般には開封後、使用後には返品はできず、最初から動かないといった初期不良のみ認めるところがほとんどです。

それでも大きな消費者問題にならないのは、日本の消費者と販売業者の関係が良好で、互いに歩み寄る姿勢があるからです。

 

中国の法律では、このような製造者と販売者の消費者に対する責任が法律により明記されています。産品質量法(製品品質法)の中で、三包(サンバオ)についての規定があります。三包とは無償修理、新品交換、返品の3つのことです。

これは、自転車、テレビ、家電製品、携帯電話など22の製品で定められている保証の方法です。具体的には各製品ごとに規定が定められていますが、一般的には、

1:購入してから7日に以内に故障した場合、消費者が返品、新品交換、無償修理を選ぶことができる。

2:購入してから15日以内に故障した場合、消費者が新品交換か無償修理を選ぶことができる。

つまり、初期不良の場合、修理だけでなく、新品交換、返品という選択肢があり、しかも消費者側がどの方法を取るかを選ぶことができるのです。

 

また、産品質量法には、故障により消費者の身体、財産に損害を与えた場合は、それもすべて賠償しなければならないことが明記されています。さらに、その賠償の請求先は、消費者が販売者または製造者のいずれでも選べるようになっています。

このような消費者を手厚く保護する法律が整っているという背景を知ると、テスラのブレーキ事故の女性が、テスラに対して、第三者機関による事故の検証、返品、医療費を求めたのは、過大な要求とも言えません。それゆえに、中国で大きな話題になっているのです。

 

今回は、中国の製造者、販売者と消費者の関係がどうなっているのかを考えます。このテスラの事故についても後ほど詳しくご紹介します。

また、少し古い事例ですが、2013年に起きたiPhone4、iPhone4Sの不適切な修理問題で、アップルのティム・クックCEOが公式に謝罪をした事件もご紹介します。これも日本の報道では、「中国がアップルに難癖をつけたが、中国が大きな市場になっていたため、ティム・クックCEOは謝罪をせざるを得なかった」というニュアンスで報道されたので、そのようにご記憶されている方も多いのではないかと思います。しかし、この問題は、保証サービスを考える上で、有益なケーススタディになっています。

今回は、保証サービスである三包政策についてご紹介します。

 

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