中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

同じ商品でも、店舗よりもECで買う方が安い。その3つの理由

見た目はまったく同じ商品にしか見えないのに、ECでは店舗価格の半額程度で売られている商品がある。実は、パッケージは同じでも中身が異なっている商品があるのだ。ECの方が価格が安い理由には3つあると正商参閲が報じた。

 

同じ商品でもECの方が安くなる不思議

現在では、多くの日用品、食品がECで買えるようになっている。それだけでなく、ECの方が安く買えることが多い。例えば、同じメーカーの牛乳が、店舗では50元で売られているのに、ECでは半額の25元などということも珍しくない。ECは宅配までしなければならないのに、なぜこれほど安いのだろうか。

ECの方が安くなる理由は3つある。

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▲以前は78元だった牛乳が、ECでは46.8元で販売されている。さらに、199元購入すると30元割引になるクーポン、初めての購入では6元の紅包がもらえる。このような優待がたくさんあるため、どのくらい安いのかが分かりづらくなっている。

 

理由1:運営コストの低さ

ひとつは誰でも想像がつくように、運営コストの違いだ。店舗を運営するには、家賃や人件費、配送費、税金などが必要で、このコストが価格に転嫁をされるので高くなる。

一方で、ECの場合、店舗は不要で倉庫があればいい。あるいはメーカーから直接発送する仕組みを構築すれば、集積倉庫すら不要になる。さらに、卸問屋などの中間流通を省くことができるので、価格が安くなる。

しかし、これだけではなかなか半額にならない。

 

理由2:ダブルバージョン

最もよく使われる手法が、ダブルバージョンだ。早い話がパッケージは同じだが、中身は違うのだ。これは服飾品でよく使われる手法で、一見同じシャツに見えて、廉価版は縫製が省略してあったり、ボタンに安い素材のものが使われている。廉価版を製造するのに、正規版とは別の生産ラインを用意するとかえってコストが高くなってしまうので、同じラインで製造できるように、安価な素材に切り替えて製造できるようにするケースが多い。正規ショップで見た時は、品質が高いシャツに見えても、アウトレットショップなどの大量陳列やECサイトの写真では違いに気が付く人はほとんどいない。

もちろん商品ラベルの原材料などに虚偽を書くことはできないので、よく読めば違いがわかるが、そこまで確かめる人はまれだ。このような手法は、服飾品だけでなく、牛乳などの食品、ティッシュなどの紙製品、化粧品などでしばしば使われる。

パッケージも瓜二つに作られているが、関係者が区別がつかなくなると問題が起きるため、その商品ごとに見分け方が関係者が共有されている。例えば、パッケージに印刷されている文章のフォントが違う、色が違うなどだ。

消費者の誤解を誘う販売方法で、褒められた方法とは言えないが、スマートフォンなどの電子機器では、ストレージ容量の異なるバージョン違い、モデル違いが販売されるのは常識になっている。ダブルバージョン製品も、商品ラベルのスペックを細かく読めば違いはわかるはずだという理屈を販売業者側は立てている。

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▲ECで販売するときも、商品の情報や栄養成分表などに虚偽の情報を書くことはできない。このような詳細情報を確認すれば、店舗で販売されている商品と同じなのかどうかがわかるが、そこまで確認する消費者はほとんどいない。

 

理由3:消費期限までの残り時間

また、食品の場合、残りの消費期限が異なっていることも多い。中国では、ロングライフ牛乳が一般的で、未開封であれば3ヶ月から6ヶ月の消費期限があるため、以前からECでも牛乳はよく販売されている。スーパーでも、常温で平積み陳列されていることも多く、多くのメーカーが250mlパックが1ダースや2ダース入っている大箱なども販売している。

しかし、消費期限が近づくと、商品価値を失うことになるので、ECで格安で販売をすることがある。多くのECでは、消費期限の長さについては記述があるが、それが具体的にいつまでなのかまでは書いていない。もちろん、買ってみたら、消費期限があと1週間しか残っていなかったなどという場合は、クレーム案件になり、消費者は返品を要求することになる。中には、消費期限が迫っていることをうたい、ワケあり商品として激安販売をするケースもある。

 

直接質問ができるライブコマースが人気に

中国には「一分銭、一分貨」という言葉がある。一分(0.01元)で買った商品は、一分に見あった品質だというものだ。安物買いの銭失いを戒め、世の中にはお得な話はそうそうないという意味でも使われる。

このような事情があるため、ライブコマースが盛り上がっているという面もある。ライブコマースでは視聴者がチャットで配信主に質問ができるので、「直営店で売っている正規品と同じもの?」「消費期限はどれだけ残っているの?」と率直に聞くことができる。配信主はそこで虚偽の回答することはできない。

この販売者と直接対話ができるという点も、ライブコマース人気の理由のひとつになっている。