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電動バイクで試験運用が始まった電子ナンバープレート。違反者はリモートで電源オフ

免許不要で乗れる電動バイク「電動車」の交通違反が多いため、ナンバープレート制が導入されることになった。しかし、ナンバープレートは、布で隠す、折り曲げる、汚すという手法で、隠されることもある。そこで、上海市などの都市で、電子タグ技術を使った電子ナンバープレートの試験運用が始まっていると山哥電車邦が報じた。

 

免許不要で乗れる電動バイク「電動車」

中国では、電動車と呼ばれる電気自転車が人気になっている。市民の足になっていることから、代歩車とも呼ばれる。保有量はすでに3.5億台を越え、自動車の2.7億台を上回る。文字通りの「国民の足」だ。

この電動車は、建前としては自転車であり、バッテリー走行も可能というものだが、現実にはペダルは収納できるようになっていて、電動バイクとして使われているケースがほとんどだ。規定により、車速が時速15kmを超えると警告音が鳴り、時速25km以上は出ないように設計されているが、バッテリーを取り替え、リミッター改造を行い、それ以上の速度が出るようにしているケースもある。もちろん、不正改造であり、発覚をすれば罰則を受けることになる。

また、フードデリバリーの配達にもよく使われ、改造や信号無視、歩道走行などの違反行為が頻発をし、社会問題にもなっている。

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▲典型的な電動車。時速は25kmまでに制限され、漕ぐためのペダルがついている。あくまでも電動走行も補助的にできる自転車という建前であるため、免許不要で乗ることができ、多くの人に使われている。

 

ナンバープレート制度実施のために新車販売が滞る

しかし、取り締まりがなかなか進まない事情があった。最大の理由は、あくまでも自転車という枠組みの中の乗り物であったために、ナンバープレートの制度もなかったことだ。そのため、警察官が違反を発見しても、逃げられたら取り締まりができない。

そこで電動車にもナンバープレート制度が導入された。2019年5月1日からは、ナンバープレートの取得と掲示が必要になり、2021年11月1日からはナンバーを掲示していない電動車は公道の走行ができなくなる。

しかし、この政策のため、ナンバー申請が殺到した。3.7億台の電動車すべてにナンバーを発行しなければならないからだ。その煽りを受けたのが、電動車の新車販売だ。ナンバーの取得の際には、車両検査も行われるため、先に電動車を購入し、それからナンバーを申請しなければならない。しかし、そこから1週間、2週間経ってもナンバーが交付されないので、乗ることができない。状況が落ち着くまで、電動車の購入を控えるという消費者が増えることを業界は心配をしている。

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電動バイクは事故を起こした場合、大きなケガに繋がるため、警察もこまめに取り締まりをこなっている。しかし、隙を見て逃げてしまう人もいる。そのため、ナンバープレート制度が導入されることになった。

 

売店でナンバー取得ができる成都方式

都市によっては、新車購入から1週間の間は、それを証明できれば、ナンバーを掲げず乗れる臨時措置を取ったところもあるが、業界からは、より寛大な移行措置が望まれている。

そこで、四川省成都市では「帯牌販売」方式が試みられた。販売店にナンバー交付拠点を設置し、販売時にナンバー申請から取得までを行なってしまい、購入者はそのまま電動車に乗って帰れるというものだ。この成都モデルは、北京や広東、福建など全国に広がっている。

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成都市で試みられている、販売店でナンバープレートが取得できる試み。購入とナンバー申請が一度で済むことから好評を得ている。

 

上海などで始まった電子ナンバープレート

さらに、上海、重慶杭州などでは、電子ナンバープレートの試験運用が始まっている。これは電子タグRFID技術を使ったもので、電動車内部に埋め込んでしまう。警察官が取り締まりをするときは、スマートフォンや専用端末をかざすと、登録されている車両情報や所有用情報が閲覧できるというものだ。

さらには、違反をした電動車が取り締まりから逃げてしまったり、反則金を支払わない場合は、電子ナンバープレート情報を介して、リモートで電動車の電源供給をオフにする仕組みも提案されている。

電子ナンバープレートは、まだ試験運用であるため、どのような運用になるのかはまだわからないが、2021年11月のナンバー掲示が必須になるまでに正式運用が始まる予定だ。

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電動バイクにテントのような雨よけをつけている人も多い。これが死角を生み、事故につながることから、現在では禁止をされている。つけたまま走ると、警察官にその場で外されることになる。