中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

ビジネスとして成立をし始めたeスポーツ。老舗企業も注目する新たなコンテンツ産業

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明日、vol. 067が発行になります。

 

eスポーツというと、日本では「ゲーム大会」の感覚がまだまだ抜けませんが、中国ではすでに産業として成立しています。

転換点となったのは、2017年10月に、北京市の国家体育館で開催されたレジェンド・オブ・リーグ(LoL)世界大会の準決勝戦でした。LoLはMOBA(マルチプレイヤー・オンライン・バトル・アリーナ)に分類されるゲームで、3人から5人のチームが対戦相手のチームと戦います。ゲームとしては、相手の陣地に到達したら勝ちというシンプルなものですが、チームメンバーの役割分担、協力、コミュニケーションが決め手になります。斜め上から俯瞰をして、各プレイヤーの動きを見て、コミュニケーションを取りながら、敵を倒し、相手の陣地を目指します。

この準決勝戦は、中国のRNG(ロイヤル・ネバー・ギブアップ)と韓国のSKテレコムの対戦となりました。北京で開催され、国のプライドをかけた戦いになったこともあり、ライブ中継は異常な盛り上がりで、中国内で1億人以上が視聴したと言われています。

残念ながら、RNGは負けてしまい、決勝戦SKテレコムサムスンギャラクシーという韓国チーム同士の対戦となりましたが、それでも中国内で2500万人がライブ中継を視聴しました。

 

なぜ、このような桁違いの視聴者数になるのでしょうか。中国は人口14億人、有効消費者数10億人という巨大な市場ですが、理由はそれだけではありません。日本ではサブカルチャーと呼ばれているオタク文化が、根付いているどころではなく、若い世代のメインカルチャーになっているのです。

中国では、このようなオタク文化はACG(アニメ、コミック、ゲーム)と呼ばれます。「バーチャルアイドル観察報告」(愛奇芸)によると、ACGファンの数は4.9億人と推定されています。これはなんとネット民の52%にもあたります。若い世代では、ACGに興味のないという人の方が珍しいほどです。

この巨大な市場があるために、eスポーツもビジネスとして成立しますし、さまざまな企業が販売促進になるという理由で、eスポーツのプロチームや大会のスポンサーになります。

 

現在世界のeスポーツ人口は、「2020 Global Games Market Report」(NEWZOO)によると4.95億人で、ちょうど中国のACGファンと同じくらいの規模になっています。つまり、eスポーツは中国と北米を除くと、1国ではなかなかビジネスとして成立しづらいものの、世界を市場にすればビジネスとして成立する状況です。eスポーツは、中国、北米、欧州という3つの地域から新しいトレンドが生まれ、それが世界展開されていくという図式で展開をしていくことになります。

特に中国では、企業のスポンサー活動が盛んです。自動車、家電、服飾、化粧品、飲料などの企業ばかりでなく、金融などの老舗企業もeスポーツとコラボをしたプロモーションを行っています。

このように、企業が積極的に参加しているというのが中国のeスポーツのひとつの特徴になります。

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▲世界のeスポーツ人口は4.95億人。世界という枠組みであればビジネスとして成立する状況になっている。核心ファンとは1ヶ月に1回以上、eスポーツコンテンツに触れる人と定義されている。「2020 Global Games Market Report」(NEWZOO)より作成。

 

もうひとつの特徴が、歴史が古いということです。弾幕付きの動画共有サービス「ビリビリ」はACGのホームグラウンドになっていますが、創業は2009年です。しかし、ゲームライブ配信サイト「遊戯風雲」は2004年の創業です。世界的に有名になっているTwitch(ツイッチ)の成立が2011年で、そのTwitchの元になっているJustin.tvですら2007年の創業です。つまり、中国人にとって、eスポーツとは、外から輸入されて入ってきたものではなく、自国の中から生まれた文化でもあるのです。

そのため、eスポーツという言葉はあまり使われず、「電競」(ディエンジン)と呼ばれることがほとんどです。電子競技の略語です。なので、勝ち負けがつくゲームであれば、すべてeスポーツになります。

 

歴史が古いと言っても、最初からeスポーツが盛り上がっていたわけではありません。ゲームライブの配信サイト「遊戯風雲」は2004年に創業しましたが、当初は視聴者数も少なく、従業員の月給は3000元(約5万円)という時代が長く続きました。ようやく人並みの給料がもらえるようになったのは2013年頃だそうです。

それでもやり続け、情熱を注ぎ込んだ人たちがいたのです。2011年に、米国で同じコンセプトのTwitchが誕生しました。しかし、Twitchも当時はコアなファンだけが視聴する知る人ぞ知るサイトでした。

同じようなコンセプトのサイトが登場したことを知った遊戯風雲のeスポーツ部門の責任者は、2012年に渡米し、Twitchの賠償交渉を行なっています。遊戯風雲が提示した価格は5000万円というものでした。Twitch側の感触は悪くなく、買収交渉がまとまる気配があったと言います。現在のTwitchを知る人には信じられないほどの低額の買収交渉ですが、当時の規模はそんなものだったのです。

この話は、遊戯風雲側が5000万円の買収資金を用意することが難しく、流れてしまいました。しかし、その2年後の2014年に、Twitchはアマゾンから9.7億ドル(約1000億円)で買収されることになりました。

 

もうひとつ大きな転換点になったのが、2015年に登場したテンセントのMOBA「王者栄耀」です。ゲームシステムはLoLそっくりですが、キャラクターに項羽劉邦孫悟空武則天、チンギスハン、さらには宮本武蔵までの古今東西の有名キャラが選べるというのが特徴です。

このゲームが子どもから大人まで大流行し、小学生のスマホ所有率を一気に引き上げたと言われます。あまりの流行ぶりに、学校でのプレイは禁止となり、テンセント側が12歳未満には、1日の利用時間制限や夜間の起動ができないなどの仕組みを導入したほどです。

王者栄耀は今でもプレイ時間、ダウンロード数ともに中国スマホゲームランキングのトップ10に入る人気ゲームですが、最も流行していた2017年頃、女性ユーザーの比率が高いということも話題になりました。女性の比率が高いどころではなく、当時、多くの調査会社が調査をしたユーザーの男女比で、女性の方がわずかに多かったのです。これはバトルを基本にするゲームとしてはありえないことでした。

 

なぜ、王者栄耀はここまで女性比率が高かったのか。それは課金の考え方が大きく変わったからです。これにより、王者栄耀は、競技性が生まれ、eスポーツ産業が花開く下地をつくりました。

今回は、中国でどのようにしてeスポーツ産業が成長していったのかをご紹介し、企業がどのようなスポンサー活動を行っているか、事例をご紹介します。

 

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