中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

TikTokがEC販売を本格化。キーワードは食飲遊楽泊商品

中国版TikTok「抖音」がECを本格化させている。2020年にはすでに流通総額が約8兆円を突破したという。現在のところ、宅配する商品ではなく、飲食店など現地で消費する食飲遊楽泊の商品が中心になっていると最極客が報じた。

 

主要テック企業に全方位で挑戦をするTikTok

バイドダンスは中国版TikTok「抖音」(ドウイン)の大改造を行っている。SNS化を進めてテンセントのWeChatと衝突しているだけでなく、ライブコマース、独自のスマホ決済「抖音支付」を始めてアリババの淘宝網タオバオ)と衝突、ショートムービー検索エンジンの開発を始めると宣言して百度と衝突、さらに今度は「団購」と呼ばれるまとめ買い機能を搭載し、美団(メイトワン)と衝突をすることになった。

まるで、中国の全テック企業に次々と挑戦をしているような状況だ。

 

ムービーの商品紹介を見て購入するEC

この団購は、現在、上海、北京、杭州の大都市で、評価版として提供されており、企業アカウントを取得している企業は、現在のところ、手数料なしで、商品を販売できるようになっている。

「同城」(同じ都市)のタブをタップすると、都市内で公開されたショートムービーの他に、団購の購入パネルが表示される。販売されている商品は、複数人分のコース料理、ホテル宿泊、娯楽施設のチケットなど。宅配される商品ではなく、現地で消費する商品が主体だ。ショートムービーを見て、内容に納得したら購入ボタンをタップし、抖音支付などで決済。QRコード画面が表示されるので、これを現地で見せれば、利用できるというものだ。

f:id:tamakino:20210406182653j:plain

TikTok団購の仕組み。コース料理など商品のショートムービーを見る。タップすると商品ページに移るので、内容に問題がなければ、購入ボタンをタップ。飲食店で表示されるQRコードを見せれば食事が提供される。

 

エンタメ方向ではなく、生活サービス方向に進むTikTok

TikTokがミニプログラムやライブコマースに対応をした時、アリババや美団のような生活サービスの方向に進むのではなく、映画やコンサート、クラブなどのエンターテイメント系サービスに進むのではないかと見る人もいた。しかし、今のところ、直球の生活系サービスを提供しようとしていて、アリババや美団と正面衝突をする可能性もある。ただし、現在のところ、食飲遊楽泊の商品が中心になっていて、生活サービスの中でもエンタメ要素の高い部分に特化をしている。

Tik Tokの検索も、商品検索を行うとライブコマース映像が表示され、販売価格もわかりやすく表示されるようになり、ECの検索画面と変わらなくなっている。違いは、多くのECが商品をテキストと写真で説明するが、TikTokの場合はショートムービーで説明するという点だ。

f:id:tamakino:20210406182656j:plain

TikTokで商品検索をすると、さまざまな商品が表示される。いずれも商品紹介は、ムービーが中心になっている。食飲遊楽泊の分野の商品は、テキストと写真の説明より、ムービーの説明の方が購買意欲が湧きやすい。

 

ECに本気を出しているTikTok

このTik Tokの生活サービス対応については、バイトダンスは本気のようだ。2020年12月に、バイトダンスは「本地直営営業センター」を設立して、生活サービスを扱う部門を設置した。すでにここには1万名規模のスタッフが勤務しているという。ライブコマースや団購などのEC系サービスの業務を行なっている。

2020年のTik TokのEC流通総額はすでに5000億元(約8.3兆円)超となり、2019年の3倍以上になっている。この販売チャネルの強さを軸に、バイトダンスはTik Tok上で次々と生活系サービスを展開しようとしている。

 

網紅が介在し、食飲遊楽泊商品を売る

Tik Tokでは、すでに300都市以上でその都市専用のページが提供されていて、「食飲遊楽泊」の5つのジャンルでのサービス、商品の販売が行われている。確かに販売されている商品は、アリババや美団と重なっているが、違うのはTik Tokインフルエンサーの存在だ。

団購商品を出品する企業アカウントからは、Tik Tokの網紅(ワンホン、インフルエンサー)に直接連絡を取る機能が用意されており、自社のサービス、商品を網紅に紹介することができる。それが面白いと感じた網紅は、利用をしてみて、そのショートムービーをTik Tokに投稿することになる。網紅が自主的に投稿することもあれば、企業が報酬を支払って投稿をしてもらうこともあるだろう。現在、バイトダンスは手数料や紹介料などを設定していない。しかし、どこかの段階で、仲介料を取るようになり、バイトダンスの大きな収入になっていくと思われる。

アリババや美団との違いは、この網紅の介在があり、他のEC、ライブコマースと比べて次元の異なる拡散力を利用できる点だ。

 

ショートムービーの方が伝えやすいという発見

バイトダンスは、現在のネットテクノロジーをすべて新しいものに置き換えようとしている。商品の紹介は、従来、テキストと写真で行われていたが、15秒のショートムービーを中心にした方が伝わりやすい。であれば、ショートムービーをダイレクトに検索できる仕組みが必要になる。そのため、ムービー用の検索エンジンの開発も始めている。

Tik Tokの手柄は、「情報密度の高い動画であれば、15秒で多くのことを伝えられる」ということを発見したことだが、このショートムービーを使って、インターネットのコンテンツすべてを上書きしようとしている。