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スマホのない高齢者のために運用が始まったオフライン健康コード

四川省でオフライン健康コードの運用が始まった。紙に印刷した健康コードを提示すれば、健康コードと同じ扱いになるというもの。健康コードは感染抑止の切り札となっていたが、スマホを持っていない人は利用できないという問題があった。このオフライン健康コードを使うことで、スマホを持っていない人も行動できるようになると界面新聞が報じた。

 

コロナ終息の切り札になった健康コード

中国の新型コロナ感染拡大が速やかに終息をした大きな理由のひとつが健康コードだ。位置情報、接触履歴などから、感染リスクを判定し、緑、黄、赤の3種類のQRコードを表示するというものだ。

運用方法は都市によって異なるが、多くの場合、緑でないと地下鉄、バスなどの公共交通機関を利用できない。また、公共施設、商店などでも、自主的に緑以外の入店を拒否している。つまり、黄色や赤になってしまうと、EC、生鮮EC、フードデリバリー、リモートワークなどを使って、自主的に自宅隔離する以外なくなってしまう。

このようにして、高リスクの人に自主隔離をしてもらい、低リスクの人に経済を回してもらうという方法で、中国は新型コロナの感染を乗り切った。

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杭州市から始まった健康コードは、新型コロナの感染抑止に大きな貢献をした。位置情報、接触履歴などから、その人の感染リスクを3段階で判定し、色で表示するというもの。公共交通を利用するには、緑の健康コードを提示する必要がある。

 

9億人が利用する健康コード

この健康コードは、2020年2月11日という感染拡大がまだ厳しい最中に、杭州市とアリババが共同開発をして、杭州市民に提供され、すぐに他都市でも運用が始まり、全国に広がった。

「第47次中国インターネット発展状況統計報告」(中国インターネット情報センター、CNNIC)によると、この健康コードを利用している人は約9億人と見積もられ、400億回利用されたという。つまり、地方都市を含め、都市部のほとんどで使われているということだ。

 

スマホを持たない高齢者や子どもには家族登録で対応

しかし、この健康コードにも弱点はある。中国の携帯電話利用者数は9.86億人。普及率は70%程度だ。つまり、3割の人はスマホはおろか、携帯電話を持っていない。その多くは高齢者と幼児だ。高齢者と幼児が地下鉄やバスを利用したい場合はどうしたらいいのだろうか。スーパーで買い物をしたい場合はどうしたらいいのだろうか。スマホを持ち、健康コードを提示しなければバスにも乗れないし、スーパーも利用できない。健康コードの利用は義務付けられてはいないが、健康コードが提示できない場合は「赤」と同じ扱いになる。

その解決策のひとつが、家族利用だ。健康コードのアプリやミニプログラムには、家族登録をする機能が用意されており、高齢者や子どもを登録できる。家族と一緒に行動をするときは、あらかじめ家族の誰かのスマホの健康コードに、家族も登録をしておき、健康コードを提示すれば、一緒にバスに乗ったりすることができる。小さな子どもがいる家庭では、この機能を使っている。

 

身分証番号で1回限りの健康コード表示も可能

もうひとつは、他人の健康コードアプリに、身分証番号を入れると、使い捨ての健康コードが表示できる機能を用意している都市もある。高齢者が友人と出かけるときに、誰か一人スマホを持っていれば、健康コードが提示できるようになる。

ただし、毎回、身分証番号を入力しなければならない煩わしさがあり、身分証番号という個人情報を他人に知らせることになってしまう。身分証番号は18桁の数字だが、最初の14桁は居住地の番号で誰でも簡単に推測ができる。次の8桁は生年月日で、個人情報とは言え、機微情報までとは言えない。最後の4桁だけが推測のできない機微情報となる。これを他人に知らせることになるので、よほど親しい友人など信用できる間柄である必要がある。

 

身分証や市民カードでも健康コードの代わりになる

もうひとつの方法は、直接身分証や市民カードをかざす方法だ。これでも健康コードの代わりとなり、居住地、勤務地、過去の感染歴などから感染リスクを簡易的に判別し、公共交通機関などを利用することができる。

ただし、この方法では、専用のスキャン装置が用意されている場所でしか利用できない。多くの場合、地下鉄と公共施設で、バスや商店では設備がなく、利用できないことがある。

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四川省の健康コードミニプログラム「四川天府健康通」。健康コードだけでなく、PCR検査の申し込みや結果表示、ワクチン接種の申し込み、高リスク地域の表示など、新型コロナ関連のサービスがすべて利用できるようになっている。

 

四川省がオフライン健康コードを提供開始

小さな子どもは、多くの場合、親とともに行動するので、親のスマホに健康コードを登録しておけば問題ないが、高齢者の場合は高齢者だけで行動することも多く、健康コードに対する不満が高まっていた。

四川省では、このような不満を解消するために、四川省の健康コードミニプログラム「四川天府健康通」に、オフライン健康コードの機能を搭載した。これは家族のスマホに登録をした健康コードを紙に印刷できる機能で、紙に印刷された健康コードを提示すれば、スマホの健康コードと同じように利用できるというものだ。有効期間は、印刷をしてから7日間に設定されている。

家族に自分の健康コードを印刷してもらえば、高齢者は紙を1枚持ち歩くだけで、健康コードとして利用することができる。また、自分でスマホを持っている高齢者であっても、いちいちスマホの操作をするのが面倒な人は、このオフライン健康コードを使っている人もいるという。

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四川省で始まったオフライン健康コード。家族のスマホに家族登録をし、プリントしておくことができ、健康コードの代わりになる。有効期間は、印刷をしてから7日間に設定されている。

 

段階的に行動制限を緩めていく中国

このような代替の健康コードは、スマホアプリ、ミニプログラムの健康コードに比べて、感染リスクの判定精度が甘くなるという問題がある。スマホの健康コードであれば、位置情報や接触履歴などのデータを利用して、精度の高いリスク判定ができるが、代替の健康コードでは、過去の感染状況、健康コードを提示してスキャンした場所情報程度しか判定材料がないため、判定精度はかなり悪くなる。

四川省では、新型コロナがほぼ終息をし、ワクチン接種も進んでいることから、感染抑止よりも市民の利便性の方が重要になってきたと判断をしたようだ。

このオフライン健康コードは、四川省の市民から好評で、他都市も注目していることから、全国に広まっていくものと見られる。

 

携帯アルコール除菌スプレー 1本入

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