中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

テック企業にとっての春節。テックサービスを地方と高齢者に伝播をさせる重要な時期

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明日、vol. 063が発行になります。

 

中国が1月1日の正月よりも、1月下旬から2月上旬にかけての旧暦による旧正月春節を盛大に祝うことはご存知の方も多いと思います。新年になって最初の満月の日は元宵節と呼ばれ、春節から元宵節までの2週間(旧暦なので、月は必ず新月の日から始まります。そこから満月になる元宵節までは15日間になります)が、正月の期間です。最初の1週間は休みとなり、次の1週間は仕事に出ますが、新年の挨拶回りなど和やかな空気の中で仕事をするのが一般的でした。

春節の休みの間は、実家に帰省し、家族三代、四代が勢揃いをして、大晦日には日本の年越しそばにあたる「年夜飯」を食べ、春節期間にはお節料理にあたる「年味」を楽しみます。中国では、農村で生まれ、都市に働きに出ているという人が多いので、この季節には大量の人が帰省する「春運」と呼ばれる民族大移動が行われます。

鉄道、長距離バスなどは大量に増発されますが、それでもチケットを購入するのは至難の技で、毎年、春運の時期には、鉄道駅やバスターミナルは限界を超えた混雑になっていました。

 

それでも帰省をするのは、中国人の文化の中で、家族全員が集まって食事をするのが最大の幸福という考え方があるからです。儒教の影響が色濃く残っているのだと思います。

また、都市に定住をして、子どもができると、初めて親の気持ちが理解できるようになります。子どもが遠くに行っていて、簡単に会うことができないというのはどれだけ寂しい気持ちになるかという親の気持ちが理解できるようになり、春節ぐらいは顔を見せに帰りたい、孫の顔を見せてやりたいと思うのです。

また、農村で子どもが生まれた場合、親は子どもを実家の両親に預けて、親だけで都会に出て働く例も少なくありません。農村で生まれた子どもは、農村の戸籍が作られるため、都市に連れていっても、都市の学校に通わせることができません。近年では、都市戸籍を取得するハードルはだいぶ低くなりましたが、それでも、その都市に貢献できる何か(経済的な成功や秀でた特殊技能)がなければ、都市戸籍は取得できません。ちょうど、外国人が日本国籍を取得するのと同じくらいの難しさがあります。

そういう親は、自分の子どもと会えるのが春節ぐらいしかありません。ですから、大混雑をする中、なんとしてでも実家に帰ろうとするのです。

 

このような春節の習慣が毎年続いていましたが、今年は大きく異なり、さまざまな新しい考え方、言葉が生まれています。言うまでもなく、新型コロナの感染予防で長距離移動が非推奨となったからです。

国家衛生健康委員会は長距離移動をする場合は、7日以内にPCR検査を受けて陰性であることを証明することを義務づけました。また、多くの都市では、長距離移動から戻った場合は、7日間から14日間の自宅隔離またはホテル隔離を求めています。春節の休みは1週間なのですから、勤め人は、会社を1週間休まなければならなくなります。そのため、多くの人が帰省せずに働いている都市で年越しをすることを選びました。

このような現地で年越しをして、帰省をしない人のことは「原年人」(原地過年的人の略語)と呼ばれるようになりました。新華社の報道によると、1億人が原年人となり、現在地で年を越したと見られています。

今年の春節期間の旅客輸送量は9841.6万人となりました。春節前に帰省した人が加算されていませんが、行って戻ってくることを考えると、帰省したのは5000万人以下だと推定できます。今年は、帰省するよりも、現地で年越しをした人の方が多かったと思われます。

 

これに伴い、生まれた新しい言葉が「雲拝年」と「雲紅包」です。雲とはクラウドのことです。拝年は新年の挨拶のことで、紅包はお年玉を入れる赤いポチ袋のことです。伝統的な春節では、その家の年長者が椅子に座り、家族はその前で、叩頭と呼ばれる拝礼をします。ひざまずいて、額を床につける丁寧な挨拶です。叩頭をしながら「新年おめでとうございます」などの口上を述べると、年長者がお年玉を入れた紅包を渡すというものです。この習慣は、農村では現在でも普通に行われていますし、都市でもさすがに叩頭まではしませんが、新年の口上を述べ、お年玉をもらうということが行われています。

それが今年は帰省ができないので、SNS「WeChat」や「抖音」(ドウイン、Tik Tok)などのビデオ通話機能を使って、新年の挨拶をします。そして、お年玉はWeChatペイで送金するということになりました。

チェーン展開をしているレストランなどでは、個室に大型モニタを設置して、同じ時間に異なる支店とビデオ通話で結び、遠く離れている家族がリモート会食できるサービスを行うところも出てきました。

 

面白いのは、今年の新年の挨拶の口上は、以前とは異なるものが流行しました。もちろん、冗談半分でのものですが、「おじいさま、新年おめでとうございます。現金でもアリペイでもWeChatペイでもかまいません」という口上がTik Tokを媒介として拡散し、流行しました。

なお、お年玉は大人でももらいます。縁起物なので、額は少額ですが、年長者から年下へ贈るものなので、拝年をした人には必ず渡します。春節が明けて、企業が仕事始めになる日には、CEOがロビーに立ち、出勤する社員全員に紅包を配るという企業も少なくありません。

このように、帰省できないことにより、様変わりをした春節ですが、もうひとつ大きな要因がスマートフォンです。ネットサービスは、都市にいても、農村に帰っても、ほぼ変わりなく利用することができます。そのため、ゲームで遊んだり、ECで買い物をすることもできるわけです。

今回は、今年の春節にどのような変化が起きたのかをご紹介します。

 

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