中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

ショッピングモールの不振から見える小売業の変革。人と商品の関係性が変わる

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明日、vol. 060が発行になります。

 

中国のショッピングモールが苦しんでいます。「2020H1一二線都市ショッピングモール空き店舗率報告」(WIN DATA)によると、2020年上半期の空き店舗率が8.88%となりました。これは、19の主要都市の5万平米以上のショッピングモール1116カ所に対する調査結果です。

広州、杭州重慶などの8つの都市では、空き店舗率が10%を超えています。しかも、ショッピングモールの店舗には契約期間があるため、その期間が終了しなければ退去することができません。これにより、2020年下半期ではさらに空き店舗率があがっているのではないかと懸念をされています。実際、すでに空き店舗率が50%を超えてしまい、存続そのものが難しくなっているショッピングモールが出始めているようです。

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▲ショッピンモールの空き店舗率。大都市でも8.88%になり、8つの大都市で10%を超えている。2020H2はさらに空き店舗率が上昇するのではないかと懸念されている。「2020H1一二線都市ショッピングモール空き店舗率報告」(WIN DATA)より作成。

 

ここ数年で中国の都市を訪れたことがある方の中には、ショッピングモールの多さに驚かれた方もいるのではないでしょうか。大都市はモールだらけといってもいいほどです。実際、2019年にはすでにモールの過当競争が大きな課題になっていました。明かに多すぎるのです。しかし、人は新しくできたモールに行きたがるので、過当競争を勝ち抜くには、新しいモールを作るしかない。単なる買い物センターではなく、有名飲食店が入り、シネコンなどの映画館、観覧車などの本格的な遊戯施設があるのも当たり前、さらにはオフィス棟、住居棟なども併設される例も増えていました。

モールには、都市型モールと郊外型モールがあります。都市型モールは都市内にあるもので、郊外型モールは市外に広大な敷地をとって半日そこで遊べるというものです。このうち、都市型モールはそれなりに利用されているようです。スーパーやカフェもあり、地下鉄の駅から徒歩圏内で、通勤経路の途中にあるため、日用品を買うのに使われているからです。

厳しさが増しているのは郊外型モールです。郊外型モールは、わざわざ行かなければならないため、コロナ禍による外出自粛で客数が大きく減ることとなりました。

 

コロナ禍による業績悪化はどうしようもないことです。どの業種も大きな痛手を被っています。しかし、中国の感染拡大は厳しかったものの、他国よりも一早く終息をしています。2020年の3月には終息が見えてきて、6月には市民感覚ではほぼ終息をしたと感じ、9月には中央政府が、人民大会堂で、感染対策に貢献をした人への表彰が行われ、事実上の終息宣言をしました。

もちろん、それ以降も、無症状感染者が見つかったり、小規模クラスターの発生は断続的に続いています。そこには対策チームが急行し、その地区を封鎖し、住民、関係者を一斉にPCR検査をするという手法で、最後の掃討戦を行っています。

市民感覚としては、もう新型コロナのことは過去のものになっているようです。ただし、感染予防対策は続いています。多くの都市で、公共交通機関を利用するには健康コード(感染リスクを緑、黄、赤の3段階で表示する仕組み)の提示が必要ですし、店舗を利用するにはマスク着用と体温測定、さらには長距離移動をした場合は、戻ってから14日間程度の自己隔離が必要になります。

そのため、毎年、故郷に帰る人で空港、鉄道、高速道路が大混雑となる春節も、今年は故郷に帰らなかったという人が多かったようです。各都市の政府も春節で故郷に帰らないことを推奨しています。

 

このような制限はまだあるとはいうものの、人出の賑わいは各地で戻っています。最近使われるようになった言葉が「内循環」です。つまり、長距離移動には制限があるため、制限を受けない同じ都市の中、同じ省の中でレジャーを楽しむというものです。人気になっているのは、フィールドアスレチックやキャンプ、サイクリングなどのアウトドアアクティビティです。家に閉じこもっている期間が長かったため、広い場所で思いっきり体を動かしたいのだと思います。スポーツが苦手な人も、景観の美しい場所、広い公園などにいくという傾向が高くなっているようです。

 

経済も完全に復活をしているといっていい状態です。中国のGDP成長率は、感染拡大期にあたる2020年Q1(第1四半期)には-6.8%という大きな落ち込みになりましたが、Q2には+3.2%と復活し、Q3は+4.9%、Q4には+6.5%となりました。2019年のGPD成長率は6.0%前後を推移していたので、2020Q4には再び成長軌道に乗ったといってもいいほどです。

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▲中国の四半期ごとのGDP成長率(前年比)。感染拡大期には-6.8%の落ち込みとなったが、現在は+6,5%に戻っている。というより、2019年の数字よりも成長率が高くなっている。中国国家統計局のデータより作成。

 

社会消費品小売総額(日本の個人消費に相当)も2020年9月に前年を上回り、それ以降、わずかとは言え成長をしています。特に目覚ましいのがネット売上で、2020年はコロナ禍があったにもかかわらず10.9%の成長となりました。ネット小売の中で、最も成長をしたのが食品で30.6%の成長です。一方、最も低調だったのが衣類で5.8%の成長にとどまりました。

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▲社会消費品小売総額も2020年9月に前年を超えるようになり、それ以来前年ごえが続いている(単位:億元)。中国国家統計局のデータより作成。

 

このように経済が以前の水準に戻っている中、戻り切れていないのが旅客関係と大型小売店です。旅客関係は、長距離移動が制限されているので致し方ありません。といっても、移動制限が解除されるにつれて遅れて戻っていくことは確実なので、業界関係者は大いに期待をしているでしょう。

問題はショッピングモールなどの大型小売店です。なぜ、モールだけが復調できないのでしょうか。それはコロナ禍による影響だけではありません。不運なところもありますが、時代の流れを読み違えていたことも大きな原因です。モールの不調を調べることで、モールだけではなく、中国の小売業に大きな変化が起きていることがわかってきます。

中国の小売業はこの20年、大きな変化トレンドの中にあって、コロナ禍は突発事態というよりも、そのトレンドを加速したにすぎないと見ることもできるのです。モールは時代に合わせた業態変革に遅れていたところにコロナ禍が襲ってきたために、致命的な打撃を受けたと見ることができます。

今回は、ショッピングモールの苦境をご紹介し、そこから見えてくる小売業の変革トレンドとはどのようなものなのかをご紹介します。

 

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