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テック企業に蔓延する996。社会問題化する長時間労働問題

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明日、vol. 057が発行になります。

 

「996工作制」という言葉を聞いたことがあるかと思います。996とは朝9時出勤、夜9時退社の週6日勤務ということで、いわゆる長時間労働のことです。元々、テック企業では長時間労働が常態化をしていましたが、2019年にプログラミングコードの共有プラットフォームであるGitHub上に996.ICUhttps://github.com/996icu/996.ICU)というリポジトリが匿名のエンジニアによって開設されました。996.ICUとは、996で働いていたら、病気になってICUに入院することになるという意味です。

すると、ファーウェイ、アリババ、アントグループ、京東、58同城、蘇寧、ピンドードーなどの社員から「うちも996になっている」という通報が相次ぎました。

 

中国の「中華人民共和国労働法」に定められた労働時間の規定は、常識的なものです。第36条には、1日の労働時間は8時間を超えて定めてはならず、1週間の労働時間は44時間を超えて定めてはならないと規定されています。

また、第41条には、残業に関しては、労働者の健康をそこなわない条件で、1日に3時間、月に36時間を超えてはならないとされています。

この労働法によると、1月(4週間)で最大に働いても212時間となります。しかし、996では288時間にもなります。労働法で許された最大限の働き方よりも、1日あたり3時間近くも長く働いていることになります。

 

この問題が大きな社会的な関心を呼んだのは、テック企業の経営者たちのあまりにもかけ離れた考え方でした。

この996ICUが話題になった直後の2019年4月11日、アリババの創業者ジャック・マーは996を肯定する発言をアリババ内部で開催された従業員との対話集会の中で語りました。これが大きな議論を呼んだのです。もちろん、「ジャック・マーはひどすぎる経営者だ。従業員の命をなんだと思っている」という非難が大半です。しかし、ごく少数ですが、「ジャック・マーの言うこともわかる」と理解を示した人もいます。

少し長くなりますが、ジャック・マーの発言をご紹介します。ぜひ、ご自身で、ジャック・マーの発言に納得がいくかどうかを判断してみてください。

 

「996について、国内で話題になっている。私個人の見方だが、996は一種の大きな福だと思っている。なぜなら、多くの企業、多くの人は、996が絶好のチャンスだとは考えていないからだ(ライバル企業に勝てるチャンスになるという意味)。若い時に996をやらなくて、いつやるのか?一生996をしないで生きてきたことが、自慢になるのか?この世界では、誰もが成功しようと思い、誰もが美しい生活をしたいと願い、誰もが尊敬されたいと願っている。みなさんに問いたい。人よりも努力をし、人よりも時間を注ぎ込まないで、どうやって成功できるのだろうか?

996の話は今日以降しない。でも、私自身は12時間労働を週に12日やってきた。この世界に996の人はたくさんいるが、1日12時間、13時間働く人もたくさんいて、私たちよりも苦労をし、私たちよりも努力をし、私たちよりも聡明な人がたくさんいる…(中略)。

アリババとはどんな企業か。この世から不可能なビジネスをなくす(すべての社会課題をビジネスによって解決できることを実証するという意味)。それがアリババのミッションだ。そのために私たちはつらい仕事をしている。あなた方に、アリババは楽な仕事だなどと言って騙したことは一度もない。「不可能なビジネスをなくす」などと言うことは信じられないだろうか。私たちはそれをやってきた。

今日、私たちはこれだけ大きな企業になり、遠大なミッションを持っている。それを実現するために、代価を払わないなどということが可能だろうか。絶対に不可能だ。だから、私たちは、アリババにくるなら、毎日12時間働くつもりできなさいと言っている。それが嫌なら、あなたはアリババにきて、いったい何をするつもりなのだろうか。私たちは8時間しか働かないお気楽な人たちではないのだ」。

 

ジャック・マーはこの問題に興奮をしたようで、発言全文はこの3倍ほどあります。ジャック・マーが従業員を鼓舞するために、大袈裟、強い言葉を使っていることは割り引いて考えなければなりませんが、要は人より努力しなければ成功はおぼつかないという話です。一方で、過労死をしかねない長時間労働を推奨ではなく、当然と考えているところは、多くのネット民から批判をされ炎上をしました。

この996問題は、時間とともに沈静化をしてきましたが、コロナ禍により再び再燃をしています。それは多くの企業でリモートワークが導入され、自宅で長時間労働するという「隠れ残業」が問題になってきたからです。

そして、2020年12月末に、ピンドードーの女性社員が亡くなるという痛ましい事件が起き、996問題が再燃しています。さらに、ピンドードーでは、飛び降り自殺をする従業員も出て、ネットには労働環境の悪さを指摘する内部告発の書き込みが相次いでいます。

今回は、このピンドードーにまつわる事件をご紹介し、そして、北京義聯労働法援助研究センターが行った「ハイテク企業従業員労働時間調査研究」から見えてきたテック企業の労働環境の実態をご紹介します。

 

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