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アクティブな銀髪族。サービスを利用するだけでなく、発信も始めた高齢者

現役世代のネット人口が頭打ちになる中、注目をされているのが高齢者で、銀髪族と呼ばれるようになっている。時間があるために、熱心にネットサービスを使い、積極的に情報発信を行い、有名になる高齢者配信主も登場していると解放日報が報じた。

 

朝5時からネットで活動を始める銀髪族

コロナ禍以降、不思議な現象が起きている。生活関連のニュースアプリ「趣頭条」(チートウティアオ)では、朝5時という早い時間から100万人規模のアクセスが始まり、その集団は午後9時にはアクセスしなくなる。他のアプリやサービスでも、朝5時から午後9時の利用者が急増している。このような生活パターンを持っているのは高齢者で、銀髪族と呼ばれている。

調査会社QuestMobileの調査によると、昨2020年5月に、50歳以上の中高年モバイルネットユーザーは1億人を突破した。どのサービスでも、銀髪族の動きを無視できなくなっている。

 

ビリビリに90歳の配信主が登場

若い世代が主に利用する動画共有サイト「ビリビリ」に、昨年90歳の配信主が現れた。広州の江敏慈(ジャン・ミンツー)さんだ。

4月頃、孫がビリビリに動画をアップするのを見て、わずか2日後に、自分も自撮り動画をアップし、配信主となった。その動画は「90歳ですが、ビリビリの配信主になれますか?」というもので、瞬く間に500万回以上再生され、さらには各メディアも「最高齢のビリビリ配信主」としてニュースに取り上げた。現在でも、江敏慈さんの動画は「おばあちゃん、こんにちは」という弾幕で埋めつくされ、弾幕をオフにしないと画面が見れないほどだ。

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▲あっという間にビリビリで有名人になった90歳の配信主、江敏慈さん。「おばあちゃん、こんにちは」という弾幕で埋め尽くすされるのが恒例になっている。

 

ポイント集めに夢中になる高齢者が続出

アクティブな高齢者は、江敏慈さんだけではない。多くの高齢者が、中年や若者に比べてアプリ内でアクティブな行動を取るようになっている。

趣頭条では、ユーザー数を拡大するために、ニュースなどの記事を読むとポイントが貯まり、友人を紹介するとポイントが貯まる仕組みを導入している。といっても、貯まるポイントはごくわずかであり、あまり大きな効果は得られていなかった。

ところが、高齢者はこのポイントを集める行動を懸命にやってくれる。上海の周季梅(ジョウ・ジーメイ)さんは、現在61歳だが、2年前から趣頭条を使い始めた。これといった趣味もないため時間を持て余していたところ、娘が勧めてくれたからだ。周季梅さんは、記事を読むとポイントが稼げるというところにハマってしまい、夢中になってしまった。

朝5時に起きると、ベッドの中で趣頭条を開く。家事の合間にも趣頭条を開く。夜はテレビも見ずに長時間、趣頭条を読んでいる。健康やお笑い、時事ニュースなどを朝から晩まで読んで、ポイントを稼ぐ。と言っても、1日に稼げるポイントは1元分にも満たない。

娘たちは驚いている。今までご近所の噂話しかしなかった周季梅さんが、突然、米国大統領選について熱く語り始めたからだ。少しスマホに熱中しすぎにも思えるが、本人は楽しんでいるし、知識が増えることは悪いことではないので、娘たちは静かに見守っている。

 

ミニゲームにも夢中になる高齢者

趣頭条には、クルミの木を育てるミニゲームがある。毎日水をやり、虫を取り、クルミの木を育てていき、育つと抽選で本物のクルミ500gがあたるというものだ。これは趣頭条が行った農業新興キャンペーンで、趣頭条が農産物を買い上げて、利用者にプレゼントするというものだ。

周季梅さんは、このミニゲームに夢中になってしまった。稼いだポイントを注ぎ込んで肥料を買い、どんどんクルミの木を育てる。そして、抽選でなんと500kgのクルミを当ててしまった。とても家族では食べきれないので、近くの老人介護施設に寄贈をした。記事を読み、ポイントを貯め、それでゲームをし、介護施設からは感謝された。

周季梅さんは、スマホのデータ通信量契約を変えた。趣頭条を始める前は、ほとんどデータ通信をしなかったので、最も安い月18元の契約だった。それを大容量の月38元の契約に変えた。

趣頭条によると、60歳以上のユーザーは平均して1日に64.8分趣頭条を使うという。これは40歳以上のユーザーの48.6分よりも16.2分も多い。

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▲趣頭条が始めた「趣助農」キャンペーン。ミニゲームをすることで、農産品が当たるというもの。高齢者が夢中になっている。

 

若者から人気を得る高齢者配信主

このようなネットアクティブな高齢者が続々と登場している。70歳になる「新疆李奶奶」(シンジャンリーナイナイ)も人気だ。彼女は、80年代に皮革工場を経営し、一財産を作った。そのお金で、大規模なブドウ園を買収し、老後の楽しみと生活費を稼いでいる。

2019年に、若い知り合いがこのブドウ園に遊びにきた。その規模の大きさと本格的な経営に驚き、スマホで撮影をし、SNSでブドウ園を紹介した。これが話題となり、新疆李奶奶自身もビリビリなどで映像を公開し始めた。現在はブドウ園だけでなく、新疆のグルメや観光スポットの紹介映像も公開して人気になっている。

Tik Tok(抖音)で有名なのは、75歳の「北海爺爺」(ベイハイイエイエ)だ。男性だが、いつもおしゃれをして、上級の生活を追求している。かっこいいおじいちゃんとして人気になり、Tik Tokに動画をあげるようになって6ヶ月で、40万人近いファンを獲得している。

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▲ブドウ園を経営するリッチなおばあちゃん、新疆李奶奶。今では、新疆の観光地などを紹介する有名配信主となった。

 

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▲Tik Tokで人気になっている75歳の北海爺爺。おしゃれなおじいちゃんが、優雅な生活を紹介している。

 

使い始めればアクティブにネットを使う高齢者

高齢者がネットを利用するようになると、アクティブな行動を取ることが多い。時間があること、一度習慣化をするとそれを守ることなどから、若者よりもアクティブになる。各サービスがポイント還元の施策を打つと、それに真面目に乗ってきてくれるのは高齢者だ。

中国の60歳以上の高齢者人口は3億人。そのうちのネット利用者は1億人だ。つまり、まだ2億人の潜在ユーザーがいることになる。各ネットサービスは、この潜在する2億人に注目を始めている。