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人民解放軍の「最後の1km」問題。弾薬はドローンでピストン輸送

人民解放軍のドローン演習が公開された。戦場では、地形によっては、弾薬、食料などの物資を人手で輸送するしかないケースがある。この「最後の1km」問題をドローンによって解決するものだと解放軍報が報じた。

 

人民解放軍の「最後の1km」問題

都市生活の中では、ECで注文した商品、新小売やデリバリーで注文した商品は、宅配便、即時配送などが宅配してくれる。商品の「最後の1km」を担う即時配送という新たなビジネスが生まれている。

最後の1kmが問題になるのは、戦場でも同じことで、軍隊はこの問題に頭を悩ませてきた。戦場は地形的に複雑な場所であることが多いため、わずか100mか200mの距離でも輸送が難しく、最後は人手に頼るしかないケースもある。弾薬や兵士の食料を人手で運ぶしかない状況が、作戦遂行の大きな足枷になることも多い。

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人民解放軍が開発した弾薬輸送ドローン。最大積載量60km。農薬散布用ドローンをベースに開発をしたという。

 

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▲弾薬輸送ドローンの飛行演習。編隊飛行も可能。ルート設定をしておけば、自動で飛行する。

 

弾薬を前線に配送する軍事用ドローン

そこで、人民解放軍では、ドローンを使って、前線に弾薬を輸送する仕組みを導入し、その演習風景が公開された。

この弾薬輸送のドローンは、農薬散布などをする農業用ドローンをベースに開発され、最大積載量60kg、有効積載量30kg、航続距離30km以上、航行時間は10分から20分だという。製造コストは4万元から5万元程度で、軍事兵器としてはきわめて安価だ。

地図上で、着陸地点を精密に指定できるため、効率的に前線の兵士に物資を送り届けることができる。特に地形が複雑で、補給路を確保しづらい場所で有効だ。現在は、弾薬や食料などの物資補給を主にしているが、将来は大型化をして、負傷兵の救出や前線兵士の速やかな撤退に応用することも考えられている。

また、兵器としてのドローン開発も進んでいる。6軸12ローターのドローンで、歩兵に追従して飛行し、援護射撃をする「戦斧」もすでに実用化されている。

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▲攻撃用ドローンも開発をされている。敵軍のドローンを画像解析で自動判別し、発見すると、自動的に機銃で撃墜する。

 


解放军如何对付“蜂群”无人机?这场演习曝光了多种特殊武器 「威虎堂」20201023 | 军迷天下

人民解放軍が行ったドローン撃退演習の様子。自軍はドローンで物資輸送を行うが、敵軍のドローンは破壊をする。戦場でのドローンが、戦略の重要な鍵になりつつある。

 

「軍事用から民生用へ転用」の逆流現象が起きている

また、歩兵と並走する自動運転車もすでに実用化されていて、平地移動の場合は、大量の物資を輸送し、歩兵の負担を減らしている。

従来技術というのは、開発資金力の豊富な軍事技術から出発をして、民間に転用され、それが民生用にまで普及していくという流れがあった。しかし、近年では民生用に開発された技術が軍事に転用されていくという流れも起きている。軍事の世界でもイノベーションが起きている。