中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

定着をする新中国茶カフェ。鍵は「品質」「ネット」「アート」

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明日、vol. 052が発行になります。

 

日本でも中国茶を好まれる方はたくさんいらっしゃると思います。独特の味わいと香りのある発酵茶「プーアール茶」、日本の緑茶とはまた違った爽やかな香りの「龍井茶」、複雑な味わいの「岩茶」、香りが楽しい「ジャスミン茶」などの人気は年々高くなっています。また、ウーロン茶の系統である品種「東方美人」は、フルーツのような香りもし、そのネーミングからも、日本を含むアジア圏でヒット商品にもなりました。

多くの日本人にとって、中国茶のイメージは、竹などで編んだスノコのようなものの上で、小さな急須で小さな茶碗に入れて飲むというものだと思います。しかし、あれは中国茶を美味しく飲むためと目を楽しませるために、近代になって作り上げられた作法で、どちらかというと外向きのものです。観光地でその土地のお茶を楽しんだり、少し贅沢な時間を過ごしたい時に行うもので、中国人の毎日の生活の中ではあのような手間のかかることはあまりしません。

多くの人は、ガラスのコップの中に茶葉を放り込み、お湯を入れて飲んでしまいます。慣れているので、うまいこと茶葉が口に入らないように飲むことができます。茶葉は健康食品としても評価が高いので、万が一口の中に入ってしまったら、そのまま食べてしまうようです。

以前は多くの人が水筒を持ち歩いていました。中に茶葉を入れて、お湯を注いで飲むのです。お湯は飲食店では無料で入れてくれますし、下町であれば町内の中に大きなボイラーでお湯を沸かしている給湯所があり、通りがかりの人でも、一言断れば、水筒にお湯を入れてくれます。

 

10年か15年ぐらい前までは、中国人の成人はほぼ全員が毎日お茶を飲んでいたといっても間違いではありません。

お茶が普及をしている理由は、想像になりますが、中国の水の質はあまりよくないことがあるのだと思います。日本と違って、川の流れがゆっくりであり、水郷の街というと風景はきれいですが、水は澱んでいます。しかも、ミネラル分が多い硬水です。生水を飲むと、お腹の調子が悪くなることも多々あります。さ湯を飲んでも、不快な臭い、味がすることすらあります。

そのため、冷たい水を飲むという習慣がありませんでした。以前は、かなり高級なレストランにいっても、自分の水筒を取り出し、自分で持参をしたお茶を飲む人が見受けられました。飲食店でも、嫌な顔をせずにお湯を足してくれました。

つまり、水の質が悪いために、茶葉を入れて飲みやすくして飲んでいたのだと思います。それが庶民のお茶でした。

ところが10年前ぐらいから「若い人が中国茶を飲まなくなった」と嘆く中高年が増えてきました。ペットボトル飲料が普及をし、若者は甘みの強い果汁飲料を好むようになったのです。サントリーの「ウーロン茶」も中国で販売されていましたが、加糖と微糖、無糖の3種類が販売され、加糖がいちばん人気になったこともあります。

中高年から見ると、冷えたお茶を飲むだけでも驚くことなのに、砂糖を入れているというのはもはや理解を超えた現象でした。

中国には茶館という文化があります。中国茶専門の喫茶店ですが、居心地がよく、静かに中国茶を楽しめる場所です。また、公園などの一角が、青空茶館になっている場所もたくさんありました。こちらはお茶を飲みながら本を読んだり、あるいは麻雀をしたり、おしゃべりを楽しむ社交場です。

しかし、このような場所で、若者を見かけることは稀です。中高年と外国人観光客がいく場所になり、若者たちはカフェに行き、コーヒーを飲むようになりました。中国茶の文化は、そのままでは消えてなくなる可能性もあったのです。

 

ところが、今、中国は中国茶ブームといっても過言ではありません。若者が中国茶に注目をし、今いちばん新しい飲料になっています。

もちろん、茶館に行って伝統的な中国茶を飲むわけではありません。タピオカミルクティーのような新しい形の中国茶の楽しみ方です。また、フルーツティーも人気です。レモンティーのように一切れだけを入れるのではなく、大量のフルーツを焙煎の濃いウーロン茶の中に入れ、冷やして飲みます。紅茶でも同じようなことはできますが、味わいが濃い中国茶の方が合います。フルーツの酸味に負けないのです。さらに、フルーツの爽やかな味と香りがして、夏の暑い日には普段以上に美味しく感じる飲料です。

 

中国というと、スターバックスが大量出店をし、モバイルオーダーをうまく使いこなしたラッキンコーヒーが登場したこともあって、コーヒーがよく飲まれているように見えてしまうことがありますが、カフェ市場(店舗で飲料を提供する)でのコーヒーの売上は38%にすぎません。すでに2019年の段階で、中国茶は54%になっているのです。コーヒーは、ビジネスパーソンが仕事中や休憩中に飲むものというイメージになっています。

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▲カフェ、スタンドの2019年市場規模は約1300億元(約2兆円)。そのうちの最大のものは中国茶になっている。「2020新茶飲研究報告」(中国チェーン経営協会、アリババ新サービス研究センター)より作成。

 

お湯で入れる伝統的な中国茶ではなく、冷やして飲むアレンジ中国茶というスタイルが若者に受け入れられました。しかし、若者の心をつかんだのはそれだけではありません。ネットサービスと密接に結びついているのです。

また、このような中国茶カフェのブランドは、常にメッセージを発信し続けます。どのようなメッセージであるかはブランドによって異なりますが、扱っている商品を軸にして、中国文化をモダンに再定義したレトロモダン的なメッセージ、環境に配慮したエコロジーのメッセージを発信しています。

このようなメッセージに共感する若者が多く、中国茶カフェから広がって、中国の伝統老舗商品を新鮮な目で見直す「国潮」と呼ばれるムーブメントが起きています。

その典型例が、中国の伝統衣装である漢服で、20年前の中国で漢服を着るなどという人はまずいませんでした。それがコスプレのひとつとして着られるようになり、パーティーなどでの衣装としての市民権を得ていきます。さすがに普段着として着て街を歩いている人はあまりいないと思いますが、簡素化した漢服を部屋着として着る人は増えているそうです。実際、淘宝網タオバオ)で、漢服を検索してみると、部屋着に使える簡素なものから、精巧な刺繍が施された高級品までさまざまな漢服が大量に見つかります。

 

この変化は、少し前の中国の若者文化を知っている人は面食らいます。なぜなら、中国の若者文化は「過去を否定し、未来を肯定する」というわかりやすい法則があったからです。ですから、中国茶などという伝統飲料はダサい、コーヒーやエナジードリンクのようなものがかっこいい、伝統衣装はダサい、最先端ファッションがかっこいい、中国の老舗企業の製品はダサい、新しい企業の製品がかっこいいというわかりやすい価値観だったのです。

今は、このわかりやすい法則が通用しなくなりました。この価値観を変えたのが、ネットサービスをうまく使いこなした中国茶カフェです。

今回は、このような中国茶カフェが、どのようにして若者の価値観を変えていったのかをご紹介します。

 

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