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東南アジアでも開催される独身の日セール。アリババとラザダの連携

11月11日には、東南アジア6ヵ国でも独身の日セールが行われる。その中心になっているのはLazada(ラザダ)だ。ラザダは2016年からアリババ傘下となり、技術や資金の支援を受けている。ラザダはアリババにとってもグローバル化の重要な一歩になっていると品玩が報じた。

 

東南アジアでも開催される「独身の日セール」

今年2020年11月1日から11日まで、中国のアリババのEC「天猫」(Tmall)などが中心となって、独身の日セールが行われ、昨年の記録を大きく上回った。独身のセールは今年で12年目となる。

11月11日には、東南アジアでも独身の日セールが開催され、今年で8年目となる。その中心になっているのは、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムでEC、物流、決済サービスを展開するLazada(ラザダ)だ。

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▲東南アジア6ヵ国でECを展開するラザダでも、11月11日に独身の日セールを行う。独身の日セールは、東南アジア全域でのセールになろうとしている。

 

コロナ禍を契機に東南アジアでもECに追い風

例えばタイでは、ラザダの流通額は毎年200%以上、つまり3倍以上の成長をしている。それでも、社会全体の小売総額の3%から5%程度でしかない。タイでは価格の安さよりも、サービスの手厚さを重要視する傾向があり、ECよりも実体店舗がまだまだ好まれる。また、地方都市、農村などではそもそもECで購入する習慣がまだ根付いていない。

しかし、今年2020年の新型コロナの感染拡大により潮目が変わった。2003年に中国でSARSの流行により、アリババの淘宝網タオバオ)の需要が一気に伸びたように、東南アジアでも人との接触を避けたい人たちがラザダを使い始めている。

また、ラザダの共同CEOである劉秀雲によると、高級品専門店は、以前はラザダに出店することに及び腰だった。しかし、2020年3月から現在の間に、50社を超える高級品メーカーがラザダに出店をしている。今年上半期のラザダのタイでの高級化粧品の売上は昨年と比べて540%増加し、購入者数は300%増えたという。

このような追い風にラザダも着々と手を打っている。各国で偽物商品を購入した場合の賠償制度を始めた。もし、偽物ブランド品などを購入してしまった場合は、タイとマレーシアでは価格の最高5倍まで、シンガポールベトナムインドネシアでは最高2倍までの賠償をするという制度だ。さらに、15日以内であれば、無条件の返品ができる制度も始めた。

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▲ラザダでも、中国で流行しているライブコマースを始めている。

 

アリババのテクノロジーを導入するラザダ

ラザダは、2016年にアリババ傘下となり、その最も大きな効果は、物流システムの構築だった。アリババ傘下の菜鳥物流からデジタル化された物流システムを導入し、さらに大型倉庫も整備をしていった。

現在、17の都市に30の大型倉庫を持ち、15の仕分けセンター、400箇所の配送拠点を持つようになった。さらに、6カ国すべてにサポートセンターを開設している。

また、商品点数を増やす点でもアリババ傘下に入ったことが大きな効果をもたらしている。中国メーカーの商品が大量にラザダで販売されるようになった。中国企業も、今後急成長が期待される東南アジア市場に進出をするルートとして、アリババ経由でのラザダへの出品に注目をしている。

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▲ラザダの流通センター。アリババの技術、資金の支援を受け、東南アジア最大のECに成長してきている。

 

現地化がラザダの当面の課題

ラザダは、2012年にドイツのインキュベーター、ロケットインターネットから生まれて、シンガポールで創業されたECだ。当時、東南アジアではアマゾンがまだ浸透していなかったがめ、アマゾンが入る前にその地位を確保しようという狙いだった。

しかし、成長はするものの、なかなか黒字化が達成できず、2016年、アリババが10億ドル(約1000億円)でラザダの経営権を取得した。

ラザダの課題になったのが「現地化」だった。中国系企業となったため、消費者から愛されるのが難しい。特に、政治的に中国との問題を抱えるベトナムなどではラザダに抵抗感を持っている人もいる。

タイ市場CBO(チーフ・ブランディング・オフィサー)であるタイ人のモリーは、この問題を地道な努力で解消しようとしている。「バンコクの有名なチャトチャックのフリーマケットは年に4回、3日間だけ開放されます。その3日間は、誰でも商品を売ることができます。私たちラザダも100種類以上の服飾品、化粧品を出品し、1万人以上の方が訪れました。購入した商品はそのまま持って帰ることもできますし、スマホで注文をして宅配をすることもできます。このような手法で、タイの消費者にラザダを知っていただき、さらにEC購入の利便性を知っていただこうとしています」。

 

東南アジアへの窓口として機能するラザダ

一方で、アリババ傘下に入って以来、ラザダは東南アジアのアリババになることをひとつの目標と定めている。2018年には、アリペイを運営するアントフィナンシャルの技術提供を受けて、独自のラザダウォレットをリリースした。

また、アリババのTmallとの提携を深め、中国ブランドがラザダに進出をする例が増えている。中国企業の多くが、東南アジア市場の成長力に注目をしているが、では具体的にどの国から進出をすべきかと考えると立ち止まってしまう。東南アジア市場と一口でいっても、各国は人種、言葉、宗教、文化それぞれが異なっているからだ。

そのような中国企業にとって、ラザダは東南アジア市場への窓口の役目を果たしてくれる。ラザダに出品をすることで、ラザダが適切な市場に配分をし、販売をしてくれるのだ。

さらに東南アジアのブランドがTmallに進出する例も生まれている。サプライチェーン、物流、管理などすべての面で、Tmallとラザダの融合が始まっている。

 

ラザダはアリババのグローバル化にとって重要な一歩

アリババにとって、ラザダは年々重要なECになってきている。今年2020Q1の決算発表の後のアナリストのリモート会議に出席したアリババの張勇(ジャン・ヨン、ダニエル・チャン)CEOは、こう述べたという。「東南アジアは、アリババのグローバル成長にとって重要な地区です。ラザダは、テクノロジーを活用して、持続的なデジタル小売プラットフォームを確立しました。今度は、人工知能技術を活用して、需要と供給のバランスを取り、持続的な成長が可能になるでしょう。ラザダは、アリババのグローバル化の重要な第1歩です」。