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わずか6分で注文した商品が届いた!半日配送が基本となる驚異の京東スピード

11月11日の独身の日セールで、京東はわずか6分間で商品を配送するという記録を作り、話題になっている。予約購入した商品を事前に近くの配送拠点まで配送をしていたもの。京東は「中国全土で24時間配送」を実現しようとしていると黒竜江新聞が報じた。

 

仕入れ、配送などすべてを自前で行うEC「京東」

アリババが11年前に始めた11月11日の独身の日セールは、アリババの天猫(Tmall)が合計で4982億元(約7.9兆円)という売上を上げた。注文件数は23.21億件だった。

独身の日セールに参加をしているのはアリババだけでない。アリババのライバルである京東(ジンドン)も同時期にセールを行い、2715億元(約4.3兆円)の売上を上げた。これは昨年の売上2044億元から32%増えたことになる。

京東は、アリババと同じECと言っても、その仕組みに大きな違いがある。アリババは基本的に売り手と買い手のマッチングサービス。配送などは、販売業者が宅配便業者を使って行うのが原則。一方、京東は販売店から進化したECであるために、仕入れ、倉庫、配送などを自社で行う。そのため、京東の方が安心ができるという理由で好む人もいる。

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▲独身の日セールはアリババだけではない。京東も同じ日にセールを行い、2715億元を売上ている。

 

注文してわずか6分で荷物が配送された驚異の京東スピード

京東の特長のひとつが、注文してから半日で商品が到着するスピードだ。今年の独身の日セールでは、注文した口紅がわずか6分で配送されてきたと話題になっている。

11月1日、独身の日セール期間が始まった朝方、黒竜江省漠河県の栄さんが、京東で口紅を注文すると、その6分後に宅配スタッフから電話が入った。「すみません。私は京東宅配です。ご都合がよければ、ドアを開けて、お受け取りをお願いします」。

栄さんが驚いて、ドアを開けると、そこには京東の宅配スタッフが立っていた。そして、自分が注文した口紅を届けてくれたのだ。栄さんはその顛末をウェイボーにあげた。「荷物は空を飛んできたのかも?」と栄さんは書いた。

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▲今年の独身の日セールでは、最短の配送時間が6分間という記録が作られた。京東は、予約購入した商品を事前に近くの配送拠点まで配送をしていた。

 

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▲京東の配送スタッフは、早朝から深夜まで活動している。中国全土で24時間配送を実現するのが京東の目標のひとつだった。それが実現しようとしている。

 

予約購入品を事前配送した京東

漠河県は黒竜江省という中国最北部にあり、中国で唯一オーロラを観測できる場所だ。北欧ほどではないが、白夜もある。そんな辺境の地に、わずか6分で荷物を届けたと話題になっている。

もちろん、6分間で倉庫から配送できるわけではない。京東は、今年のセールでは、アクセスの混雑を防ぐために予約制度を導入した。セールが始まる前に予約受付を可能にし、11月1日のセール期間になると確定をし、決済をするという方式にした。

栄さんは、10月27日に口紅を予約し、この時点で京東は商品を発送。配送先に最も近いステーションに留め置き、決済が完了したものから配送を始めるようにした。このため、栄さんの荷物は、10月30日には京東宅配大興安嶺漠河営業所に留め置かれていた。

11月1日に栄さんが決済をして、注文を確定すると、宅配スタッフはすぐに配送をし、栄さんの住所は営業所の近くであったため、わずか6分で配送できたのだ。

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▲京東は、仕入れから配送までを自前で行うEC企業。赤い京東の配送者が中国全土を走っている。

 

半日配送が基本になっている京東

このような京東の「分級配送」は、今年、北京、上海、講習などの一級都市と、辺境部の三級都市から六級都市で実施された。このような分級配送エリアの消費者が、化粧品、小型家電、電子製品などを予約購入した場合は、数分から1時間以内に宅配がされた。

京東は、「211限時達」と呼ばれる半日配送を始めて10年になる。午前11時までに注文をすれば、当日配送。夜11時までに注文すれば、翌日午後3時までに配送というものだ。午前11時と午後11時で締め切るため、「211限時達」というネーミングになっている。

このサービスは200都市で提供されている。

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▲京東の仕分けセンターでは、ロボティクス、人工知能など、さまざまなテクノロジーが用いられている。

 

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▲個々の荷物を配送先別に仕分けていく。カートは荷物を乗せ、自動で配送先を識別し、適切な穴に落としていく。穴の下には、配送先別の袋が用意されている。

 

京東の半日配送が、都市と地方の格差解消に貢献している

今年の独身の日セールでは、分級配送と211限時達を組み合わせたことにより、92%の県向け荷物で、83%の郷鎮向け荷物で24時間以内配送を実現できた。

このために、京東は全国に750箇所以上の倉庫を持ち、総面積は1800万平米になる。また、人工知能ロボットによる仕分けセンターも30箇所になる。

京東が中国どこでも24時間配送をほぼ実現していることは、中国を大きく変えている。地方では不便だから都会に出て仕事を探すというのが当たり前だった中国で、都会の大学を出て地方に戻り起業をする学生、地方にとどまり続けてビジネスをする若者が出始めている。

京東は、すでにドローン配送、自動運転カートによる配送も始めている。京東の創業以来の「中国全土に24時間配送」が実現しようとしている。