わずか創業8年で、グローバル企業に急成長したバイトダンス。中国国内では「今日頭条」で成功し、グローバル市場ではTik Tokで成功している。その背景には、創業者の張一鳴の独特な考え方があった。それは、「企業を製品のように開発する」というものだと中国企業家網が報じた。
わずか8年でグローバル企業に成長したバイトダンス
現在37歳の張一鳴(ジャン・イーミン)が創業した字節跳動(ズージエティアオドン、バイトダンス)ほど短期間で成功した企業は他にない。ニュースキュレーションアプリ「今日頭条」、ショートムービーアプリ「抖音」(ドウイン)、その国際版であるTik Tokなどのプロダクトを開発し、わずか8年でグローバル企業になった。
バイトダンスは、北京市四環知春路から世界に拡大をし、企業価値は750億ドル(約7.8兆円)となった。2019年末には、バイトダンスのプロダクトすべての月間アクティブユーザー数は15億人を超え、150以上の国で利用され、75の言語に対応をしている。バイトダンスの拠点も30の国、180都市に広がり、従業員数は世界で6万人となった。
▲バイトダンスの創業者、張一鳴。企業の成長を妨げる最大の要因は、創業者の認知の壁であるという。それを取り払うことができれば、企業はどこまでも成長できるという。
企業の成長を妨げるのは、創業者の認知の壁
張一鳴は、企業の成長を妨げる最大の要因は、創業者の認知であるという。創業者自身が、企業の成長はこのぐらいという成長の壁を知らず知らずに設定してしまっている。企業の成長はその創業者の認知の壁で成長が止まってしまう。もし、創業者がこの認知の壁に気がつき、取り払うことができれば、どこまでも企業は成長していけるという。
張一鳴の考え方は、Develop a company as a product.(企業を製品のように開発する)というものだ。そのために重要なのはアルゴリズムで、自分の生き方すら独自のアルゴリズムに基づいている。張一鳴は怒ったり、落ち込んだりすることは少なく、また興奮したり、喜びを表すことも少ない。「軽度の喜びと軽度の落胆の間に自分を置くようにしています。大きく興奮することもなく、大きく悩むこともしません。ロボットみたいですが、違いは、私は毎日必ず7時間以上眠るということです」。
自分たちで作らなければ、小さなイノベーションしか起こせない
バイトダンスの最初の成功したプロダクトはニュースキュレーションアプリ「今日頭条」だ。この今日頭条が他のニュースキュレーションと異なるのは、編集スタッフが存在しないことだ。すべては利用者の利用行動情報を解析して、それに基づいてニュースが配信される。この分析を行い、配信するニュースを決めるのが、リコメンドエンジンで機械学習などの人工知能技術が使われている。
今日頭条のプロダクトの開発が始まった時、チームには機械学習に熟知したエンジニアはいなかった。チームからは開発に対する不安の声があがった。しかし、それが変わったのは、張一鳴の一言だった。「我々はリコメンドエンジンを作ることはできないかもしれないが、学ぶことはできる」。
張一鳴は、リコメンドエンジンの専門家が技術書を出版すると聞いて、その著者に連絡を取り、電子版を購入したいとお願いをした。しかし、著者は出版前であることから断ってきた。すると、張一鳴はネットを検索して資料を集め、最初のリコメンドエンジン学習資料を作り上げた。チームはこの学習資料に基づいて学び、ゼロからリコメンドエンジンを開発した。
「リコメンドエンジンを自分たちで作らず、既存のものを利用したら、小さなイノベーションしか起こせません。ネットのメリットを生かしてそこそこの成功はできるかもしれませんが、根本を突破し、本当の価値を創造することはできないのです。私たちは、いついかなる時でも、根本を突破する努力をしなければなりません」。
▲バイトダンスを創業した頃の張一鳴。天津市の南開大学出身で、南開大学を選んだのは女性比率が高いという理由からだった。大学での目標は、ガールフレンドを作ることで、当時の大学生が今の妻になっている。
満足感の先送りをする張一鳴
張一鳴は「満足感の先送り」を実践している。目標を立て、それを達成したら満足感を感じる。しかし、満足感を感じた時は、喜びを抑えて、次の目標を考える。この方式で、リコメンドエンジンをニュースに適用した今日頭条が成功した後、張一鳴は喜ぶこともそこそこに、リコメンドエンジンを他のコンテンツに応用する目標を立てた。それがショートムービーで、そこからTik Tokが生まれてきた。Tik Tokが成功した今、このリコメンドエンジンをライブコマース、教育、ゲーム、ビジネスに応用しようとしている。
張一鳴は、どこまで行っても満足をしない獰猛な企業家ではない。成功した喜びを制御して、満足感を先送りしていくのだ。そのため、張一鳴は常に満足していて、常に満足していない。一定の精神状態で、仕事を淡々と進めている。
人材と技術を調達して、企業を製品のように開発する
張一鳴は、初期のバイトダンスで最初の人事担当者だった。自ら優秀な人材を集めてきて「アプリ工場」を構築した。バイトダンスが創業した8年前、中国のテック業界はBATの時代だった。張一鳴は、同じ北京にある百度(バイドゥ)から多くの人材を引き抜いた。当時のバイトダンスは無名で、百度も警戒をしていなかった。この時期に、バイトダンスの主要メンバーが揃った。ほとんどが、張一鳴自ら引き入れたメンバーだ。
また、張一鳴は当初から企業買収を行ってきた。バイトダンスが創業して半年もたたないうちに、天気アプリを開発している小さなチームを買収している。さらに、Musical.lyを創業したアレックスと陽陸育も、買収によってバイトダンスに加わった。バイトダンスの持つリコメンドエンジンとMusical.lyのもつリップシンク技術が融合し、Tik Tokが生まれてきた。
人材と技術を調達して、バイトダンスという「製品」を開発できる環境を整えていった。
▲Tik Tokの開発チーム。ほとんどのスタッフが、インターン程度の経験しか持っていない素人集団だった。それゆえに、真摯に利用者が何を好むかを調査し、それに応える開発が可能になった。
バイトダンスに必要なのは「なんでもやる人」
張一鳴は人材を見極める独特の見方を持っている。張一鳴は、2005年に南開大学を卒業し、旅行予約サイト「酷訊」に入社をした。張一鳴の成長ぶりは異常で、2年目には50人のチームを率いるリーダーになっていた。
なぜ、素早い成長ができたのか。「私は技術に関しても社内でいちばんではありませんでした。経験に関してはほとんどありません。それでも成長できたのは2つのことを実践したからです」。
ひとつは、自分のやるべきこと、やるべきではないことを決めずに、求められればなんでもやったことだ。これにより、張一鳴は酷訊の業務の全体像を知ることができた。
もうひとつは、「エンジニアだから技術周りの業務」という境界を取り払ったことだ。張一鳴は開発の責任者だったが、商品内容に問題があれば商品企画部の会議にも出て、販売に問題があれば営業部の会議にも出て、学び、自分の意見をぶつけた。
これにより、張一鳴は、ビジネスのすべてを知ることができ、その中で、エンジニアが適切に行動するにはどうすればいいかがわかるようになった。
優れたエンジニアというのは、テクノロジー的に最高のプロダクトが作れることではない。会社のビジネスにとって最高のプロダクトが作れるエンジニアだというのが、張一鳴の考え方だ。だからこそ、張一鳴は重要な仕事を任されるようになっていった。当然、バイトダンスのエンジニアにも、そう行動することを求めている。それがバイトダンスという企業を強くしている。
カシオ(CASIO)電子キーボード Casiotone CT-S200WE(ホワイト) 61鍵盤 軽量&コンパクト 持ち運びしやすくPOPなデザイン ダンスミュージックモード
- 発売日: 2019/10/04
- メディア: エレクトロニクス