中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

身売りまでされたカルフールが復活の兆し。鍵は到家サービス

中国に上陸をして25年、近年は経営不振が続き、昨2019年9月に、蘇寧グループが48億元(約760億円)で株式の80%を取得するという形で買収されたカルフール。しかし、2019Q4から3四半期連続で黒字を達成するという回復を見せている。蘇寧はわずか1年という短期間でカルフールの何を変えたのか。北京商報が報じた。

 

買収直後から黒字化を達成させた蘇寧グループ

蘇寧傘下に入ってからのカルフールの回復ぶりが目覚ましい。昨2019年9月に買収が行われ、その次の2019Q4には、7年ぶりの黒字化を達成した。その後の2020Q1、Q2とも黒字で、3四半期連続の黒字となり、カルフールの回復が本物であることが証明された。

いったい、蘇寧はこの短期間にカルフールをどう変えたのだろうか。

f:id:tamakino:20201114131902p:plain

▲現在のカルフールには「蘇寧」の看板が並ぶ。蘇寧に買収されてから、カルフールは急速に復活の兆しを見せている。

 

「豊富な物資」から「利用しやすさ」へ変化

カルフールが大きく変わったことは、来店客の誰もが感じている。以前のカルフールは、床から天井まである大きな商品棚にぎっちりと商品が詰め込まれていた。スペースがある場所には卓球台ほどもあるワゴンが置かれ、そこに特売品が乱雑に投げ込まれていた。また、箱物商品は、人の背よりも高く山積みされるディスプレイ手法もよく使われていた。要は、「物資の豊富さ」がコンセプトだった。

これは25年前、カルフールが中国に上陸をした時には、中国人消費者を圧倒した。カルフールの上陸から「週末に家族で車に乗ってスーパーに行き、1週間分の買い物をする」というライフスタイルが始まった。カルフールは、中国人の消費生活のスタイルを変えることに成功した。

しかし、現在のカルフールの商品棚は、人の背丈程度のものになり、標準的なスーパーと同じものになっている。ただし、異なるのは、すべての商品のデジタル化が行われ、ビッグデータ解析によって、商品の配置が決められていることだ。

以前のカルフールは、一度入ってしまうと、店内を一巡しないと買い物が終わらなかった。現在は、必要な商品の場所がすぐわかるようになり、短時間で買い物がすむようになっている。

f:id:tamakino:20201114131848j:plain

▲以前のカルフール。商品が天井までぎっしりと並べられ、物資の豊富さで圧倒するコンセプトだった。

 

f:id:tamakino:20201114131913j:plain

f:id:tamakino:20201114131858j:plain

▲現在のカルフール。一般的なスーパーに近い形になり、目的とする商品にたどり着きやすくなった。買い物の断片化に対応している。

 

「買い物の断片化」に対応できなかったカルフール

この変化は、消費者、特に若年層の「買い物の断片化」に対応したものだ。現在の若者は1日に何回もコンビニを利用するが、カルフールのような郊外大型店には年に数回しか行かない。必要なものは、必要な時に購入する。そういう傾向が強まっている。

カルフールの不振は、このような消費者の変化に対応せず、25年前と変わらないコンセプトによる売場設計を行っていたことによる。カルフールの場合、ペットボトル飲料を1本買うだけであっても、入り口から入って、売り場を抜け、ペット飲料のコーナーにたどり着き、それからレジに向かうと10分近くかかってしまう。買い物の断片化が進んでいる若者がカルフールに行かなくなるのも当然のことだ。

このような利用に対応するために、売場設計を大きく変えただけでなく、スマホによるスキャン決済も導入した。売場で自分のスマホでバーコードをスキャンして決済まで行ってしまう。決済完了の表示が出るので、レジ横のスタッフにそれを提示することで、そのまま外に出ることができる。

f:id:tamakino:20201114131841p:plain

▲蘇寧グループは、自社の蘇寧易購、蘇寧生活広場などと到家サービスを含めて統合し、サービス水準を高め、コストを下げていく計画だ。

 

近中遠で濃淡をつけた到家サービスが復活の鍵

しかし、カルフール復活の鍵となったのは「到家サービス」だ。新小売スーパーの成功の鍵となった「スマホ注文+短時間宅配」をカルフールでも始めた。

カルフールでは、店舗を中心として、近、中、遠の3つのゾーンに分けて、サービスを提供する戦略を立てている。近距離の顧客に関しては店舗にきてもらい、スキャン購入で商品1つから買ってもらう。

中距離の顧客には、半径3km圏内に1時間で配送する到家サービスを提供する。そのために、WeChatミニプログラムを新しくして、スマホから気軽に注文ができるようにした。

遠方の顧客には、市内翌日配送を提供する。このためには、カルフールは209カ所の前置倉(前線倉庫)を設置した。遠方の顧客には、この前置倉から宅配を行う。

カルフールは運も強かった。このような体制を整えたところで、新型コロナの感染拡大が始まり、到家サービスの需要が急増した。

f:id:tamakino:20201114131909j:plain

カルフールのWeChatミニプログラム。生鮮食料品などカルフールで販売しているものはすべて1時間配送してもらえる。これが復活の鍵となった。

 

新店舗展開も進めるカルフール

蘇寧グループは、独自に「蘇寧易購」「蘇寧生活広場」「蘇寧百貨」などの店舗、「蘇寧小店」「紅孩子」「蘇寧極物」などの新小売を運営している。すべてがうまくいっているわけではなく、特に新小売系では苦戦をしている。蘇寧はカルフールを得たことにより、到家サービスを融合させ、扱い商品点数を増やし、配送の効率化を図る計画だ。

蘇寧がカルフールを買収して1年。カルフール成都市、瀋陽市、北京市などに新店舗を5店開店した。1年前はフェードアウトすると見られていたカルフールが、再び成長軌道に乗ろうとしている。

f:id:tamakino:20201114131833p:plain

カルフール復活の鍵は到家サービス。半径3km圏内では、スマホ注文をした商品が1時間で宅配される。新型コロナの感染拡大が強い追い風となった。

 

サーモス ポケットバッグ 10L ネイビー REX-010 NVY

サーモス ポケットバッグ 10L ネイビー REX-010 NVY

  • 発売日: 2020/02/21
  • メディア: ホーム&キッチン