中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

SARS禍で生まれたEC。SARSで成長したアリババと京東

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明日、vol. 045が発行になります。

 

コロナ禍による経済の停滞は、いったいいつまで続くのかと焦れている方も多いのではないでしょうか。GoToキャンペーンは人為的なものなので、飲食チェーンや中級以上のホテルにとってはありがたい政策であるものの、その恩恵をほとんど受けられていない飲食店やホテルもあります。

横浜から出港したクルーズ船で、香港で下船をした男性の感染が確認されたのが2月1日でした。それからあっという間にクルーズ船内で感染が拡大し、3月に入ると国内でも感染者が増え始めたのですから、もう9ヶ月にもなります。しかも、人が動き始めているので、拡大をさせないように誰もが配慮しているものの、陽性者数は思うように減らず、終息がいつのことになるのか見当もつきません。

 

中国の新型コロナの感染拡大は1月下旬の春節休みから本格化しましたが、3月の終わりには終息が見え、5月に入ると大きな感染はほぼ起こらない状況になりました。それ以降も散発的な小規模クラスターが起きていますが、拡大は抑えられています。感染拡大の震源地でありながら、世界の中でもいち早く終息をした国だということができます。

しかし、経済回復の足取りは重たい印象です。例えば、人々の経済活動の回復の目安として、旅行人数が挙げられます。経済が回復をして、生活に対する不安感がなくなれば、旅行に行く人が増えるからです。

今年の2月末、感染拡大がようやくピークを過ぎたばかりの頃、経済回復に関するレポートが公開されました。あるシンクタンクが旅行の回復を予測したものですが、なんと5月の連休には回復をし、前年を上回るという内容でした。これを見た時は正直驚きました。2月末の段階では、まだ終息がいつ頃のことになるのかはっきりしない段階です。それが3月には終息し、5月の連休には、観光地が再びあの中国級の混雑になるというのです。もちろん、5月の旅行は短期、近距離のものが中心になると説明されていましたが、にわかには信じられない話です。

実際、5月に旅行に行く人はほとんどいませんでした。夏休みも多くの人が控え、中国最大の長期休暇である10月の国慶節に期待が集まり、この時はかなりの人手になりましたが、昨年よりも2割減となっています。今年の国慶節は、中秋節とうまく連結され、例年にない長期休暇となったのに、2割減というのはかなり悪い数字です。未だに、旅行に対する不安が拭えないのです。

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▲3月に発表されたあるシンクタンクのレポートでは、旅行が5月には回復するという楽観的すぎるものだった。現実は甘くなく、10月の国慶節で、ようやく8割の回復をした。SARSの時は、人々の不安が完全になくなるまでに、ほぼ1年かかっている。

 

中国は、新型コロナの前に、2003年にSARSの感染拡大を経験しています。SARSの感染が厳しかったのは、2003年の3月から6月までで、8月になって最後の入院患者が退院をし終息をしました。しかし、その影響は長く続きました。2003年10月の国慶節の旅行は低迷をし、2004年の春節にも帰郷を控える人がいました。旅行が完全に回復したのは、2004年の5月の連休で、完全回復するには1年近くかかっているのです。

感染症の拡大は、不安を長引かせるだけではありません。人々の意識も変えていきます。コロナ禍で明らかに起きた変化が「既存小売の新小売化」と「飲食店の小売化」の2つです。

 

新小売は、このメルマガをお読みの方にはもはやおなじみだと思います。代表例はアリババの新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)で、スマートフォンからの注文を半径3km圏内に30分配送してくれるというものです。普通のスーパーと同じように、店舗で購入することもでき、「スマホ/店頭」注文+「持帰り/宅配」を都合に合わせて自由に組み合わせることができます。

感染拡大期には外出を控える人が多かったため、新小売は通常の4倍から10倍以上の注文が入るという人気になりました。終息後も便利さから利用し続ける人が多く、既存の伝統的なスーパーは市場を奪われてしまいました。これを奪還しようと、既存スーパー、百貨店も続々と「到家サービス」を始めています。新小売に対抗するための、スマホ注文・宅配サービスです。

 

もうひとつが飲食店の小売化です。飲食店も客足が戻りきりません。また、未だに席を間引いているところもあります。席を密にするとお客さんが避けてしまう、席を疎にするとお客さんはきてくれても客数が目標に達しないというジレンマに悩んでいます。

そこで、開発力のある飲食チェーンは、半調理品を開発して、内食市場に参入をしています。例えば、火鍋で人気チェーンとなった海底撈(ハイディーラオ)では、ミニ火鍋セットを販売しています。スマホで注文すれば宅配してくれるというもので、1人または2人で自宅で火鍋を楽しめます。鍋と燃料もついているという徹底ぶりです。この他、温めるだけ、一手間加えるだけという半調理品をさまざまな飲食チェーンが開発をして、宅配販売するようになりました。

しかし、ここでも新小売が顔を出します。新小売勢も食品メーカーなどと提携して半調理品の販売を始め、内食をめぐって、飲食店と新小売が激突しています。

 

今後、どのような展開になるのかはわかりませんが、もはや商品というのは「買いに行くもの」ではなく「届けてもらうもの」になる傾向が進んでいくことは間違いありません。そうなると、自然に外出する機会は少なくなり、自宅ですごす時間が多くなるでしょう。映画やコンサートも、出かけて見るものではなく、自宅で見るものになるかもしれません。当然、自宅を快適にしようとする人が増え、家具業界などはすでに好調になってきています。

となると、自動車の需要は低迷し、旅行需要も低迷するかもしれません。コロナ禍により、今までの常識がオセロゲームのようにひっくり返り始めているのです。

 

今、私たちが当たり前だと思っているライフスタイルも、実は2003年のSARSの影響による部分がかなりあります。中国のECはSARSをきっかけに普及をしました。ECが普及をすると、オンライン決済が必要になり、銀聯カードが普及をし、後にアリペイ、WeChatペイのスマホ決済が登場してきます。

一時期、日本を訪れる中国人旅行者の「爆買い」が話題になりましたが、あの爆買いの多くは、中国に持って帰って、タオバオなどで売り捌くことが目的です。当時は、日本製品が簡単に手に入らないか、価格が高くなるので、タオバオなどで飛ぶように売れるのです。

現在のソーシャルECも、このECとSNSを組み合わせたものですし、新小売もECの倉庫と店舗を合体させるという発想のものです。多くのものがECを起点にした変奏曲であり、その原点はSARS禍による困難を解決したECにあるのです。そこから、アリババや京東(ジンドン)といった巨大企業も生まれてきました。

今回は、SARSの時に、どのようにしてECというビジネスが生まれてきたのかをご紹介します。お読みになる時に、どのような課題を解決しようとしていたのかという視点でお読みください。その考え方は、現在のコロナ禍にも通じるものがあると思います。

今回は、SARSで生まれたECというビジネスをご紹介します。

 

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