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中国EC関係者が常用する数値指標の公式4つ。大きなKPIを小さなKPIに分解する

中国のEC関係者は、数値指標を常に気にしている。分析ツールが豊富にあるため、リアルタイムで自動で表示される環境が整っているからだ。その中でも次の4つの公式が極めて重要だという。公式を理解していると、数値指標をあげるための具体的な施策がわかるようになるからだと璽承電商が報じた。

 

具体的な施策に結びつけるための公式理解

ECビジネスを展開するマーケティング部門では、さまざまな暗号のような名前の数値指標が使われている。PV(ページビュー)、CV(コンバージョン)などは広く知られるようになっているが、UU(ユニークユーザー)、UV(ユニークビジター)、直帰率あたりになると、マーケティング関係者以外あまり知らない/使わないのではないだろうか。

中国のECにも同様の数々の数値指標がある。しかし、日本と異なるのは、ECに関わる人すべてがその数値を気にしているということだ。マーケティング担当者だけではなく、エンジニアもバイヤーも営業も気にしている。もちろん、どこまで理解しているかは別だが、数値指標の変動をチェックしている。

もうひとつ大きな違いが、ひとつの数値指標の変動を見るだけでなく、その数値指標の公式を意識していることだ。その数値指標がどのような式で計算できるのかを知っておけば、公式の各項目を上げる/下げる施策を打つことで、目的の数値指標を改善できるようになる。

例えば、重要指標「ビジター価値」を上げようと考えると具体的な施策がなかなか思いつかないが、「ビジター価値=客単価×コンバージョン率」という公式を理解していれば、ビジター価値をあげるには「客単価をあげる施策」「コンバージョン率をあげる施策」の2つを行えばいいということがわかる。

このような数値指標の中でも、関係者全員が理解しておかなければならないのが次の4つだという。

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▲公式を理解しなければならない理由は、具体的な施策に結びつくから。販売額は4つの項目の掛け算となる。つまり、販売額をあげるには、4つの項目それぞれを上げていく施策を打てばいいことになる。

 

1:販売額=インプレッション×クリック率×コンバージョン率×客単価

販売額というのは売上の合計だから、単純に足算をして計算するのが普通。それをこのような複雑な式にしているのには意味がある。ECビジネスで最も重要な販売額をこのような公式で理解しておくと、この式を変換することで、さまざまな数値指標が理解できるようになるからだ。

インプレッションとは、ある商品がウェブなどに表示された回数のこと。そのうちの何人かがクリックをし、商品の購入ページを表示する。全員が購入に至るわけではない。実際に購入に結びついた割合がコンバージョン率だ。つまり、実際に購入に結びついた人数と客単価を掛け算すると販売額になる。

例えば、ある商品Aが1日に1000回ウェブやアプリ上で表示をされた。そのうちの40%の人=400人がクリック/タップをして、商品の購入ページを見た。そのうちの60%の人=400×60%=240人が実際に購入をした。平均の客単価は150円だった。すると、販売額は1000×0.4×0.6×150=3万6000円となる。

 

販売額をあげるには、4つの項目をあげる施策を打つ

この公式はさまざまな指標を考える上での基礎公式となるだけでなく、ECビジネスで最も重要な販売額をあげるにはどうしたらいいかがわかってくるという点でも重要だ。販売額をあげるには4つの項目の数値をあげればいいのだ。

インプレッションをあげるには、キャンペーンを行う、より多くのECに出品をするなどがある。クリック率をあげるには商品の表示方法を魅力的なものに変える。コンバージョンをあげるにはクーポン配布などの施策を行う。客単価をあげるには商品の質をあげたり、セット販売をするなど、具体的な施策は商品によって異なるが、販売額をあげる策を4つの項目ごとに具体的に考えていくことができる。

常に4つの数値変動を追跡し、下がった数値項目に対してテコ入れをするということも可能になる。

このような理由で、これは最も重要な公式だとされている。

 

2:ビジター価値=客単価×コンバージョン率

ビジター価値とは、商品の購入ページを見た人の平均客単価。この数値指標が重要なのは、商品の値上げ、値下げの判断に利用できるからだ。

商品を値上げをすると、客単価は上がる。しかし、一方で、コンバージョン率は下がることになる。そのため、適切な値上げをした場合は、客単価×コンバージョン率で計算されるビジター価値は変動しないはずということになる。

逆に言えば、ビジター価値が上昇をしている場合は、値上げが可能になる。一方で、ビジター価値が下落している場合は、値下げを考えなければならなくなる。

先ほどの例で言えば、150円×0.6=90円と計算される。

 

1の公式から、施策目標を立てやすい公式に変換をする

しかし、なぜ、客単価×コンバージョン率でビジター価値が計算できるのだろうか。

ビジター価値というのは、本来は販売額/ビジター数で計算できる。これがビジター価値を定義する公式となる。1の公式を理解していれば、ここからビジター価値の公式が導き出せる。

販売額=インプレッション×クリック率×コンバージョン率×客単価だが、ビジター数というのは、インプレッション×クリック数、つまり購入ページを訪れた人の数なので、販売額=(インプレッション×クリック率)×コンバージョン率×客単価=ビジター数×コンバージョン率×客単価となる。

この式を、ビジター価値=販売額/ビジター数に代入すると、(ビジター数×コンバージョン率×客単価)/ビジター数となり、分母分子の両方にビジター数が現れることから約分することができ、コンバージョン率×客単価となる。

 

3:ROI=ビジター価値/クリック単価

ROI(Return On Investment)とは、ECビジネスの場合は費用対効果のこと。よく、ビジネスの現場では売上がKPIとして使われることが多いが、それはあくまでも仮目標であって、本来は利益を最大化することが最終目標だ。極端な話、100円の商品を売るのに100円のクーポンをつけて販売をすれば、売上は100円になるが、利益は0円になってしまう。

利益の最大化に重要になるのがROIだ。どれだけの経費をかけて、どのくらいの売上になったかを表してくれる数値指標となる。

このROIを最大化するには、ビジター価値を高めればいい。クリック単価というのは商品購入ページを開いてもらうためにかかったプロモーション費用など。クリック単価を小さくすることでもROIを上昇させることができるが、クリック単価には運営経費など固定費も含まれており、簡単に下げることは難しい。プロモーション費用などを削って下げても、今度はビジター価値(客単価×コンバージョン率)のコンバージョン率が下がり、ビジター価値まで下げてしまうことになる。そのため、ROIを高めるにはビジター価値を高めるのが基本的な考え方になる。

 

ビジター価値を高めると費用対効果も上がる

ROIの本来の定義は「販売額/経費」だ。しかし、今までの公式から、販売額=インプレッション×クリック率×コンバージョン率×客単価となり、経費=インプレッション×クリック率×クリック単価となる。

これをROI=販売額/経費に代入すると、ROI=(インプレッション×クリック率×コンバージョン率×客単価)/(インプレッション×クリック率×クリック単価)となり、「インプレッション×クリック率」は分母分子の両方に現れるので約分することができ、ROI=(コンバージョン率×客単価)/クリック単価となる。

ここで、2の式からコンバージョン率×客単価=ビジター価値なので、

ROI=ビジター価値/クリック単価となる。ここから、ROIを高めるにはビジター価値を高めればいいということがわかる。

 

4:損益分岐ビジター価値=クリック単価/粗利率

ビジネスをする時に、ROIとともに重要なのが、商品の損益分岐点だ。損益分岐点とは利益0の状態のこと。それ以上であれば利益が出て、それ以下であれば赤字となる。そのため、損益分岐点を死守することが、ビジネスにとっては継続できるかどうかを決めることになる。

しかし、損益分岐点を常に意識するのは難しいので、損益分岐点になるビジター価値を計算しておくことが重要だ。ビジター価値が損益分岐ビジター価値を上回るように施策を打てばよくなる。ビジター価値を高めるには、ビジター価値=客単価×コンバージョン率の公式から、客単価とコンバージョン率を高める施策を打てばいいということがわかる。

 

損益分岐点はビジター価値で見る

損益分岐点というのは、経費と粗利が同じになっている状態。例えば、150円で販売している商品の仕入れ値が100円だとすると、粗利は50円となる。さらに、運営やプロモーションなどの経費が50円かかっている場合、利益は0円になってしまう。黒字にするには、粗利をあげる(値上げする、仕入れ値を安くする)、経費を下げるなどをしなければならない。

ROI=販売額/経費だが、損益分岐点では経費と利益が同じになっているので、損益分岐ROI=販売額/粗利と表すことができる。

粗利は販売額×粗利率なので、これを代入すると、損益分岐ROI=販売額/(販売額×粗利率)となり、販売額が分母分子に現れるので約分でき、損益分岐ROI=1/粗利率となる。仕入れ値が100円、販売価格が150円の商品では、粗利は50円、損益分岐ROIは1/50=0.02となる。

ところで、3の公式より、ROI=ビジター価値/クリック単価なので、損益分岐ROI=ビジター価値/クリック単価=1/粗利率となる。

ビジター価値/クリック単価=1/粗利率の等式に両辺にクリック単価をかけて整理をすると、損益分岐ビジター価値=クリック単価/粗利率という式が得られる。粗利率は販売価格と仕入れ値から計算ができるので、クリック単価がわかれば、損益分岐ビジター価値が計算できる。

常にビジター価値を追跡し、この損益分岐ビジター価値を超えるように、ビジター価値を高める施策を打っていけば、損益分岐点を超えることができる。ビジター価値を高める方法は、ビジター価値=客単価×コンバージョン率なのだから、客単価、コンバージョン率をあげることを考えればいい。

 

大きなKPIを小さく具体的なKPIに分解をしていく

数学が苦手な人にはややこしく感じるかもしれないが、中学1年生で習う等式の性質程度のテクニックしか使っていない。

EC関係者がこのように等式をいじってさまざまな公式を導き出すのは、大きなKPIを小さく具体的なKPIに分解をしていくことができるからだ。

損益分岐点を超えろ」と言われても、具体的に何をしたらいいのかはピンとこない。しかし、損益分岐ビジター価値という数値目標を設定し、同時にビジター価値を高めるには客単価とコンバージョン率をあげればいいということがわかっていれば、客単価をあげる施策、コンバージョン率をあげる施策という具体策を打てるようになる。

中国の場合、この程度のことは、タオバオに安価な商品を出品している個人でも行っている。なぜなら、この手の数値指標を自動計算してくれる分析ツールが無数にあるからだ。

もちろん、全員が背景にある理論を理解しているわけではない。しかし、表示される数値をあげるためにはどのようなことをすればいいのかという事例は豊富に紹介をされているので、ゲームキャラクターのパラメーターを上げるように施策を行っていく。そのゲーム感覚が、業界全体の成長につながっている。

 

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  • メディア: オフィス用品