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杭州市で走る5Gバス。信号情報の背面表示がドライバーに好評

杭州市で5Gバスの乗客を乗せた試験運行が始まっている。背面パネルに交差点の信号情報を表示する工夫がされており、背後のドライバーからも交差点状況がわかると好評を得ていると杭州生活網が報じた。

 

乗客を乗せた試験運行が始まった5Gバス

浙江省杭州市の蕭山地区で、8月下旬から5Gスマートバスの試験運行が行われている。試験運行は乗客を乗せるもので、大きな問題が起きていないことから、状況を取りまとめ精査した後、正式運行に切り替えられる。

5Gスマートバスが投入されたのは、鴻寧路から蕭山城南までの705路線。この路線に2台の金色の万向集団製造のEVバスが投入されている。

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杭州市で試験運行が始まった5Gバス。自動運転ではないが、道路環境情報をリアルタイム取得することで、安全運行に寄与する。

 

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▲車内は普通のバスと変わらない。ただし、バス路線は5Gエリアになっているので、乗車中に5G通信を利用できる。

 

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▲5Gバスの試験路線となった705路。杭州市の新市街を走る。



有人運転だが、5Gによりスマート化されるバス

5Gに対応したといっても、無人運転ではなく、通常のバスと同じ、運転手による運転が行われている。5Gに対応することでどのようなメリットがあるのだろうか。

ひとつは乗客がバス内で5G通信を利用できるようになることだ。乗客はバスに乗っている間、自分のスマホで映画やドラマなどの重たいストリーミングコンテンツをストレスなく楽しめるようになる。

 

道路情報を取得し、安全運行に寄与

しかし、5Gに対応する本当の意味は、道路情報を5G通信で取得することで、バスの安全運行に寄与できるようになることだ。

大きな交差点の100m手前になると、運転手に対して音声でそのことを知らせ、モニターには信号のリアルタイム状況が表示される。青、赤の残り秒数も表示されるので、運転手はその情報を見て、速度を調整できるようになる。

信号を目視するだけだと、突然黄色になって、スピードを上げて交差点を通過する、やっぱり間に合わず急停車するということが起こる。100m手前から信号状況がわかると、運転手は間に合わなければ、交差点の手前から速度を落とすようになる。

また、歩行者が横断歩道を信号無視して渡っていることも検知され、その情報も表示をされる。

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▲運転席のモニターには、交差点の100m手前から信号の残り時間が表示される。これを見ることで、急ブレーキなどの操作を避けることができる。


交差点情報の背面情報表示が市民から歓迎されている

さらに、これは便利だと話題になっているが、交差点の信号情報、歩行者の信号無視情報をバスの後方パネルに表示をしたことだ。

バスの後方を走る乗用車は、バスに視界を遮られて、信号の状況がまったく見えなくなる。バスが信号に間に合わず、急停車をした時など、後方の乗用車は反応が遅れ、バスに追突してしまう可能性がある。また、歩行者が横断歩道を信号無視で渡っている時、バスは青信号であるのにもかかわらず、速度を落とす。この時、後方の乗用車は、バスの後方から車線変更をして、速度を上げて交差点を通過しようとする。この時、信号無視の歩行者と接触をしてしまうことがある。

交差点の状況が、バスの後方にいてもわかるようになり、このような事故を防ぐとともに、後方の運転手のストレスも軽減される。

このアイディアは、ドライバーからの評判もよく、事故抑止の効果も見込めることから、他の5Gバスにも取り入れられるようになりそうだ。

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▲市民から歓迎されているアイディア。バスの背面に交差点信号の残り時間を表示する。バスの後ろでは信号が見づらいことから歓迎されている。