中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

EC「京東」のライフサイクル手法。ビッグデータ解析によるマーケティング

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明日、vol. 042が発行になります。

 

中国のECは踊り場に差し掛かっています。ECだけでなく、すべてのビジネスが踊り場だと言ってもいいかもしれません。このメルマガの「vol.011:人口ボーナス消失とZ世代。経済縮小が始まる」でも扱った人口ボーナス消失問題です。

改革開放以降、中国の30代と40代という消費と労働力の主力世代は常に増え続けてきました。しかし、いよいよ減少に転じているのです。

主力世代が増加し続けている間は、日本の高度経済成長期と同じで、普通にしているだけでビジネスが拡大をしていきます。お客さんの数が増えていくのですから、よほどおかしなことをしない限り、ビジネスは勝手に成長してくれます。

しかし、一早く日本は人口減少期に突入しました。こうなると、お客さんの数が減っていくので、普通にしているだけではどんどんビジネスが縮小していってしまいます。昨年と同じ水準を維持するだけでも、相当な努力が必要になります。今、日本はまさにこの状態になっています。みんな、ものすごく努力をしているのに、ビジネスが成長せず、現状を維持するだけでも疲弊する。努力に対しての成果があまりにも小さく、心が折れそうになります。

 

中国もいよいよ消費と労働の縮小傾向が始まっています。現在の40代後半の人口に比べて、20代前半は25%減、10代後半は30%減となります。この世代が、消費と労働の主力になる5年後、10年後、あらゆるビジネスが25%減の縮小を余儀なくされます。

若い世代を中心とする商品ではすでにその影響が出ています。ファストファッションは軒並み苦しんでいますし、自動車も頭打ち傾向がはっきりとしてきています。

そのために、中国企業はテクノロジー活用に懸命になっているのです。新小売テクノロジーで新たな消費者とのチャンネルを構築する。無人テクノロジーで人手不足に対応をする。人工知能テクノロジーで新たな市場を発見する、創造する。

人口ボーナス消失に対応するのはテクノロジーである。中国の各企業はそこをしっかりと認識しています。

 

中国の大手ECサイト「京東」(ジンドン)は、日本ではアリババほど有名ではありませんが、テクノロジー志向の企業です。アリババは基本的にはマッチング型のECです。売りたい人と買いたい人をマッチングさせる。それ以外の物流などはそれぞれでお好きなところをお使いくださいというのが出発点です。現在では、決済、クラウド、物流などの企業を傘下に治めるようになりましたが、ECのすべてのプロセスをアリババだけで行なっているわけではありません。日本で言えば、楽天型の「開いたEC」です。

一方で、京東は物流、配送、倉庫などを自前で持ち、自前で戸別配送まで行う「閉じたEC」です。もともとは、創業者の劉強東(リュウ・チャンドン)が、北京の中関村に開いた商店「京東マルチメディア」で、CD-Rなどのメディアやドライブを販売したのが始まりです。そこから、扱い品目を増やしながら成長したきたので、倉庫も仕入れも配達も自分たちでやるというのが自然だったようです。

そのおかげで、ドローン配送や無人配送カートなどの技術は進んでいて、すでに一部地域では公道を使った無人配送を行っています。

 

もうひとつ京東が有名なのは、「ユーザーライフサイクル」という仮説に基づいたマーケティングを行っていることです。これはシャンプーや洗剤など、日用の消耗品、ひとつの商品に対しての消費者の購入態度には一定のライフサイクルがあるという仮説です。

と言っても難しいものではありません。次のグラフは、1人の消費者が1つの商品に対しての接し方を表したものです。単純に、縦軸は購入量だと思ってください。潜伏期(低潜期、高潜期)は、その商品のことをよく知りませんから、試しに少しだけ買ってみます。そして、引入期で買い始め、成長期では消耗したら買うという定期購入になります。しかし、少し飽きてきて成熟期で買う頻度が減り、衰退期では他の同類の商品を買うようになり、流失期で買わなくなるというモデルです。

仮説と言っても、難しいものではなく、なんとなく納得できるモデルではないでしょうか。

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▲ユーザーのライフサイクルのグラフ。低潜期で商品を知り、引入期でその商品の定期的な購入が始まり、衰退期で別の商品を買い始めるというもの。「ユーザーライフサイクル運営白書」(ニールセン、京東)より引用。以下の図版も同白書より引用。

 

京東の戦略のポイントはこの後にあります。一般的なEC、商店では、「売れているからもっと売ろう」と考え、成長期や成熟期にあるユーザーに対してプロモーションを行います。しかし、これは正しいことだろうか?と京東は問いかけます。すでにたくさん買っているお客さんに対して、「もっと買ってください」とプロモーションをかけたところで、お客さんはもう買ってくれません。安いからと言って、シャンプーを2倍使うようにはならないからです。

京東の考え方は逆で、潜伏期と衰退期の部分でプロモーションをすべきだ。ここは購入量が少ないブルーオーシャンではないかといういうものです。伸び代がたくさん残されている。

潜伏期にプロモーションをすることで、いち早く成長期に入ることができます。衰退期でプロモーションをすることで、成長期の山を長引かせることができます。こうして、成長期の山を前後に伸ばすことで、売上を上げていくというのが京東の考え方です。

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▲左は一般的なプロモーションの考え方。すでに買ってくれているお客さんに対してプロモーションをするため投資効果が得られない。京東は赤い部分の潜伏期と衰退期にプロモーションをかける。ここは伸び代がたくさんあり、投資効果が期待できる。

 

では、どの消費者が、ある商品に対して、潜伏期や衰退期にいるということを知ることができるのでしょうか。ここが京東の膨大な販売データをビッグデータ解析をするキモになります。

当然ながら、京東ではその真髄は公開していません。しかし、触りの部分、概要部分はさまざまな白書やビジネス教材の形で公開をしています。そのような公開されている資料を使って、今回は、京東のライフサイクル手法をご紹介します。

 

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