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オンライン活用で回復をする飲食店と商店。鍵は独自クーポンとオンライン予約

1月下旬に感染拡大が始まったコロナ禍も、5月末には90%以上の飲食店、商店が再開をし、日常を取り戻している。しかし、売上がなかなか以前のようには戻らず、苦戦をしている店舗もある。復活の鍵は、オンラインサービスへの対応になっていると上観新聞が報じた。

 

飲食店の回復の決め手はオンラインサービスの活用

生活サービスポータル「美団」(メイトワン)の調査によると、上海の飲食店の営業再開が進んでいる。すでに、6月時点で、黄浦、崇明、静安などでは、消費額が昨年を上回っている。

しかし、どの飲食店、店舗も同じように回復をしているわけではない。オンラインサービスをうまく使いこなしているところが昨年を上回る売上を上げ、店舗だけで営業再開をしているところは苦戦をしている。路面店はもはや路面店だけで生き延びることはできない。実体店舗も、オンラインサービスとうまく組み合わせていかないと生き残っていくことができないようだ。

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▲5月末には、ほぼすべての飲食店、商店が営業再開をしている。しかし、多くの店舗で、客不足に悩んでいる。

 

独自に割引クーポンを発行する店が増えている

最も単純なのは、独自に割引クーポンを発行することだ。中国各都市で、経済振興のため、食事券を配布または格安で販売されている。しかし、消費の押し上げ効果には限界がある。どこでも利用できる食事クーポンでは、多くの場合、元々消費せざるを得ない日常食の消費に使われてしまうからだ。投資効果が高いとは言えない。

一方で、各飲食店にしてみたら、飲食業全体の消費が伸びることよりも、自分の店に客がきてもらうことを切実に望んでいる。食事券は、有名店の売上を伸ばす効果はあるかもしれないが、街場の小規模飲食店の売上にはさほど貢献してくれない。

そこで、多くの飲食店は、美団、ウーラマなどの外売(フードデリバリー)プラットフォーム上で、独自のクーポン券の配布、販売を始めている。

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▲飲食店にとっては、もはや外売(フードデリバリー)に対応するのは当たり前。独自に電子クーポンを配布することも広く行われるようになっている。

 

割引クーポンは少額でも効果がある

ある安徽料理店では、ウーラマ上で2元として使える金券を0.01元で、1人4枚まで限定で販売をした。ポイント還元なども組み合わせたため、実質無料で購入できる。

これだけで、1日のデリバリー注文量が840件となり、ウーラマの上海小規模飲食店ジャンルのトップ5に入ることができた。

 

予約オンリーにし、フロントとレジを合理化

また、飲食店ではないが、上海市内に32店舗を展開するマッサージ店「小確幸」は、徹底した合理化で売上を伸ばしている。

小確幸では、どのマッサージ店にもあるフロントが存在しない。原則、美団アプリから予約をし、その場で決済をしてから、店舗に向かう。到着すると、担当するマッサージ師が直接出迎えてくれる。決済まで終わっているので、施術を受けて、終わったらそのまま帰るだけなので、フロントやレジが不要になっている。

また、マッサージ師も店舗に待機をしているのではなく、各店舗の来店客数に応じて移動をする。このような合理化により、どの店でも「予約が取れない」「待たされる」ということが極端に少なくなり、多くのリピーターが生まれている。

小確幸では、各店舗平均の1日の客数は60人以上で、面積あたりの売上では他のマッサージ店の6倍から8倍になっているという。

小確幸の臧継強会長によると、2016年9月に創業した時から美団と契約をし、オンライン予約を始めたという。現在、80%以上の予約は美団からのものだという。

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▲マッサージ店「小確幸」では、オンライン予約オンリーにしたため、フロントとレジが不要になった。オンライン予約前提で、出店計画なども進めているため、コストの大幅削減に成功している。

 

合理化を前提の出店計画

小確幸では、最初からマッサージ師のシェアリングを行う計画であったため、特定の地下鉄路線沿線のオフィスビルに出店をした。これなら、マッサージ師は地下鉄で店舗から店舗へと移動ができ、なおかつ大通りに面した商業ビルと比べて、家賃は1/4になる。

店舗の看板を見て小確幸にくる人よりも、美団アプリで探してくる人の方が多いので、多少の立地の悪さは問題にならない。

また、フロント、精算なども不要であるため、各店舗は10人未満のスタッフで運営ができている。

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小確幸を創業した臧継強会長。創業当時からオンライン予約を中心に、店舗計画などを組み立ててきた。それがコロナ禍を乗り切ることになった。現在、上海市内に32店舗を出店し、面積当たりの売上では他店舗の6倍から8倍になっているという。

 

コロナ後はオンライン化が必須になっていく

このような上海の生活サービス業のオンライン化率は2019年末で30.7%だった。今年はコロナ禍によりこのオンライン化率は大幅に上昇している。実体店舗は、もはや店舗だけで生き残っていくことは難しくなっている。オンラインによるプロモーション、合理化を行う必要に迫られている。