中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

高齢化する農業に自動運転。アグリテックスタートアップが続々参入

中国の農業も、若者から嫌われ、高齢化と労働力不足が深刻になっている。一方で、テック企業にとっては参入空間の大きな領域に見えることから、スタートアップの参入が相次いでいる。その中で、極飛科技は、農業用自動運転車の量産を始めたと農機通が報じた。

 

農業の高齢化問題とテクノロジー

中国の農業は厳しい問題に直面している。生産量は毎年増えてつ続けているものの、2000年からの20年で農業人口は25%も減少した。さらに、55歳以上の高齢農業人口が34%を超えている。省力化が進んでいるとは言うものの、就業人口の急速な減少と、急速な高齢化が大きな問題になっており、本格的な労働力不足の前夜にあると言われている。原因は若者が農業に就くのを嫌うからだ。

一方で、農業をテクノロジーによって効率化する事業が必要とされ、広大な成長空間があることから、農業テック関連のスタートアップも次々と生まれている。

その中でも、極飛科技(ジーフェイ)は成長が目覚ましい企業で、農業用の自動運転農機R150の量産を開始した。

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▲ケースを取り付けて、収穫物の運搬をさせることもできる。収穫場所と集積場所を自動的に往復させることが可能。

 

農薬散布、運搬以外にも利用できる合体ロボR150

極飛が生産するR150には、3つのバージョンがある。噴霧版、運搬版、拡張版の3つで、いずれも車体、操作系統などは共通している。

噴霧版は、農薬などを噴霧する機構が取り付けられたもの。高圧気流により、液体をマイクロメートルの微顆粒にし、霧状にして噴霧する。顆粒のサイズは調整可能。目標とする範囲に、ムラなく噴霧することができる。路面が荒れていても、サスペンションで吸収をして、設定範囲に噴霧することができる。最高で1時間あたり80ムー(約5.3ha)に噴霧をすることができる。

運搬版は、農作物などを運搬する機構が取り付けられたもの。最高積載重量は150kg、充電15分で4時間運搬することができる。一度、スマホからルート設定をしておけば、自動的に往復することも可能だ。

拡張版は、さまざまな農機具を後づけできるものだ。

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▲農薬散布をするR150。ノズルは360度稼働するようになっている。

 

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▲農薬散布をするR150。あらかじめ設定した作業道を通り、指定された量の農薬を散布する。

 

狭い作業道、荒れた農地を自動運転

R150にはさまざまなテクノロジーが使われている。農地を走行することから、動力にはトルク1000ニュートンメートルのブラシレス直流モーターを採用、最大登坂能力は30度となり、ほぼすべての農地を走行できる。

地上に設置した基地局から位置情報データを利用するRTK(リアルタイムキネマティック)を採用し、ミリメートル級の位置情報を利用することで、狭い農地を自動走行する。

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▲リモコンを持った人を追従させることもできる。

 

ドローンと同じ操作体系、姿勢制御技術を採用

操作系統は、すでに農業で多く使われているドローンの操作方法を採用している。スマホアプリで、ルートを設定するだけで、あとは自動走行ができる。5分程度で基本操作ができるようになるという。また、リモコンを持った人を追従させることも可能だ。リモコンによるマニュアル操作ももちろん可能になっている。

また、姿勢制御などにもドローンの技術が使われている。農地を走ると、障害物に乗り上げたり、斜面を走行して、転倒をすることが予想される。R150では姿勢を測定し、安定性を失いそうになるとルートを微調整して、転倒しないように制御される。このような技術にはドローン技術が転用されているという。

高齢化が問題になっている農業だからこそ、テックスタートアップの参入空間がある。極飛科技だけでなく、さまざまなアグリテックスタートアップが登場してきている。

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▲シンプルな部品構成になっているため、耐久力が高い構造になっている。