中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

ベトナムでも生鮮ECへの参入続々。コロナ禍で広がる新小売

コロナ禍により、東南アジアでも生鮮ECが広がり始めている。しかし、流通、配送などが未発達であるため、それぞれに工夫をしている。特に、VinMartでは、駅、バス停などにスキャン&ゴーを設置することで、これから帰るという時に注文させることで、配送時間の長さという欠点を打ち消していると弥図出海が報じた。

 

コロナ禍で大きく伸びた生鮮食料品のEC

新型コロナ感染拡大により、中国では、EC、生鮮EC、新小売スーパーの売上が大きく伸びた。特に、外出制限が行われる中で、野菜や肉、魚といった生鮮食料品を短時間配送してくれる生鮮EC、新小売スーパーは、どこも需要が前年同時期の3倍から10倍に増加をした。アリババが運営する新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)では、通常時は注文から30分で配送していたが、需要が増えすぎ、一部の店舗で前日までの予約配送制を一時実施するまでになった。

現在では、その需要は落ち着きを見せているが、終息後も生鮮EC、新小売スーパーを利用する習慣がつき、この領域にとっては大きな追い風となった。2002年末から中国で流行したSARSにより、「淘宝網」(タオバオ)などのECが定着をすることになった。それと同じように、新型コロナによって生鮮ECと新小売スーパーが定着する環境が生まれている。

 

Grab、Lazadaが生鮮ECに参入

ベトナムの新型コロナの感染拡大状況は、感染者数が1000名+という穏やかな状況だが、それでも続々と生鮮ECに参入する企業が登場している。

Grabは東南アジア各国で、タクシー配車、ライドシェアを展開しているが、その機動力を生かして、フードデリバリー、生鮮ECなどを展開している。そこにシンガポールを拠点に東南アジア6カ国でECを展開するLazadaが生鮮食料品の扱いを始めた。2時間で配送する。

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▲ライドシェアのGrabも生鮮EC「GrabGroceries」を始めている。

 

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▲EC「Lazada」も生鮮食料品の扱いを始めている。

 

温度管理、配送時間など課題は多い

しかし、生鮮ECを展開するのは簡単ではない。温度管理をした流通網の構築が必要で、産地から顧客に配送するすべての流通で、野菜、魚、肉、冷凍食品などそれぞれに適した温度管理が必要となる。

中国の生鮮EC、新小売スーパーは「配送エリアの近くに倉庫、店舗を配置する」という前置倉、店倉合一の発想で、この問題を解決した。末端の配送距離、配送時間を短くすることで、温度管理をしやすくし、同時に30分配送という短時間配送ができるようになり、顧客の利便性を高めている。さらに、30分は、顧客が「注文してから待っていられる時間」であり、配送の際の不在率が大きく下がり、再配達などのトラブルを避けることができる。

 

苦戦するベトナムの生鮮EC

ベトナムの既存スーパーも、GrabやLazadaの動きを見て、生鮮ECに参入をしようとしているが、苦労をしているのが実情だ。

チェーンスーパー「Bach Hoa Xanh」は、生鮮食料品以外の加工食品、日用品などのECを始めているが、1日の注文量は5000件程度にとどまっている。伸び悩んでいる理由は欠品だ。配送網と在庫管理が整っていないため、欠品が多く、利用者の評判は決してよくない。Bach Hoa Xanhでは、現在3つの配送センターを建設中で、これにより生鮮食料品のECにも進出をしようと計画している。


Một ngày làm việc tại Bách Hóa Xanh 2020

▲生鮮ECに本格参入を始めたスーパー「Bach Hoa Xanh」

 

配送時間の長さをうまく解消しているVinMart

VinMartは、現在スーパー店舗数100店舗+、コンビニ店舗数2500店舗前後だが、2025年までにスーパーを300店舗、コンビニを1万店舗に増やす計画を進めている勢いのある小売チェーンだ。

このVinMartが一部の店舗で「スキャン&ゴー」という仕組みを導入している。これは店内で商品をピックアップする時に、自分でアプリから商品バーコードをスキャンするというもの。レジでは、合算された決済用のコードが表示すれば精算がすぐに終わるというもの。

アプリから購入をするEC機能もあるが、ユニークなのはVinMart 4.0と呼ばれる仕組みだ。これはバス停、駅構内など、人が滞留する場所に掲示された大型ポスター。商品棚のような内容で、各商品にはバーコードがつけられている。このバーコードを読み込むと、その商品が購入でき、2時間から4時間で宅配されるというものだ。帰り道にバス停などで買い物を楽しんでもらい、帰宅後に商品を受け取るというコンセプトだ。

配送時間は長めだが、これからバスや電車に乗って帰宅する前に注文をしておけば、自宅に着いた時にちょうど配送されるようになる。配送時間の短縮が難しいことをうまく解消している。

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▲街頭、バス停、駅などに設置されたスキャン&ゴー。帰る前に注文させることで、人の多い場所に設置ができ、配送時間が長いという欠点を打ち消すことができている。

 


Trải nghiệm VinMart Scan & Go đi mua sắm không cần xếp hàng, không lo xách nặng | VTV24

▲商品バーコードをスマホでスキャンしてその場で決済してしまうVinMartのスキャン&ゴー。

 

生鮮ECは東南アジアにも広がるか

中国の都市部では、生鮮食料品は「買いに行くもの」から「届けてもらうもの」になりつつある。ベトナムだけでなく、世界各国で、生鮮食料品を買いに行くことの困難さ、不安を感じた人は多かった。中国だけでなく、世界各国で生鮮ECがその国の事情に合わせた形で定着をしていく可能性が生まれている。