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犯人はドローンで追跡、顔認証で逮捕前に身分割り出し。SF映画のような華強北派出所

深圳市の電気街「華強北」は、中国で最初に5Gがカバーされた地域。華強北派出所では、5Gを利用したSF映画のような捜査が行われている。防犯カメラ、ドローン、白バイの映像をリアルタイム共有し、逮捕前に顔認証で犯人の身分を割り出してしまうものだと南方Plusが報じた。

 

5G通信を利用する深圳市華強北派出所

中国深圳市の華強北(ホワチャンベイ)と言えば、中国の秋葉原とも呼ばれる電気街。しかし、その規模が違う。南北930m、東西1560mの地域が中心で、人口は10万人、商店は5万軒もあり、従業員が20万人。1日の売上は1億元(約15億円)を超えるという巨大電気街だ。

2019年末に、華強北が5Gエリアとなり、全国で初めて街中のどこでも5G通信が体験できる街区となった。

この華強北の治安を守るのが華強北派出所だが、この華強北派出所も5G通信を利用したスマート交番になった。

2020年7月までで、刑事事件の発生率は昨年よりも16.5%、強盗事件の発生率は52%減少した。

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▲深圳市の華強北歩行街。電気関係の商店が集まり、中国の秋葉原と呼ばれる。しかし、スケールは秋葉原の数倍はある。

 

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▲5G通信を活用した華強北派出所。スマート交番と呼ばれる。

 

通報内容はテレビ通話。警官全員で共有

華強北歩行街には、5Gポリスボックスが設けられ、事件を目撃した人は、ここから通報することができる。公安側の担当者とテレビ通話で結ばれ、通報者の話はすべて録画され、関係する警察官に共有をされる。警察官は、どこからでも端末を使って、通報の録画を見ることができる。

電話による110番通報では、通報者が警察官の顔を見ることができないため、慌ててしまい、通報内容が乱れがちだ。しかし、顔が見える通報では、警察官が通報者を落ち着かせることで、通報内容を整理することができる。

また、110番通報では、通報センターの担当者が通報内容を整理し、警察官に連絡をするが、この過程で、逮捕につながる情報が抜け落ちることもあり、通報者の生の声を現場の警察官が聴けるということが検挙率の向上に寄与している。

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▲華強北歩行街に設置された5Gポリスボックス。無人時でも、テレビ通話で通報をすることができるようになっている。

 

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▲テレビ通話で市民からの通報を受ける警察官。電話の通報と異なり、顔が見えるため、通報者が落ち着いて、話を整理して伝えることができる。

 

ドローン、4K白バイ、スマホが警官の武器

捜査の武器となっているのは、ドローン、白バイ、スマートフォンだ。4Kカメラを搭載したドローンが巡回し、地表の監視を行い、事件発生時には犯人の車などを追跡する。また、白バイにも4Kカメラが搭載され、リアルタイムで映像を転送する。さらに該当の防犯カメラからも映像が転送される。

このような映像はすべてネットワーク化され、センターに集約され、必要な映像を現場の警察官の端末にリアルタイムで転送する。

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▲街角の各所には、4K防犯カメラが設置され、センターでリアルタイムモニターされている。

 

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▲センターでは、各所の防犯カメラ、交通監視カメラの映像を処理している。人工知能により、異常発生は自動通知されるが、人による目視監視も行われている。事件が発生すると、このセンターで映像を選択して、警察官にリアルタイム共有する。

 

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▲白バイにも4Kカメラが搭載されている。映像はリアルタイムでセンターに転送され、追跡など必要な場合は、全警察官にリアルタイム共有される。

 

犯行は防犯カメラで、ドローンと白バイで追跡

この5G捜査は次のように行われる。華強北である強盗傷害事件が起こった。二人の男が、ある女性のハンドバックを奪おうとし、抵抗されたためナイフで刺したというものだ。しかし、この犯行そのものが、街頭の防犯カメラに写っていた。

指揮センターでは、すぐに事件発生を察知し、全警官のスマホに通知。ドローン班は現場にドローンを向かわせ、白バイ隊がすぐに出動し、現場に向かった。犯人は車に乗って逃走したが、その車種をすぐに把握、ドローンと白バイによる追跡が行われた。

この様子は、白バイカメラから映像がセンターに転送され、センターではナンバーの割り出しと逃走経路の予測を行う。

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▲5G捜査がどのように行われるかを、実際の事件に基づいて再現した深圳市公安作成のビデオ。市内の路地で、二人組の男が女性のハンドバックを強奪しようとして、抵抗されたためナイフで刺すという強盗傷害事件が発生した。

 

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▲この事件そのものが防犯カメラ映像により、センターで把握されていた。人工知能により、人の密集度が通常でない映像の通知が表示される。それを人が見て、事件であるかどうかを判断する。

 

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▲すぐに全警察官のスマートフォンに緊急通報が一斉配信される。

 

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▲犯人は乗用車に乗って逃走。複数の防犯カメラを繋ぎながら、犯人が乗り込んだ車を特定したセンターでは、ドローンを使った追跡を開始した。その情報に基づいて、白バイが包囲を始める。

 

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▲白バイ映像からナンバーを確認。同時にナンバー検索がされ、所有者の氏名などが割り出される。

 

ARグラスで人混みから犯人を発見

その後、犯人は車を乗り捨て、群衆の中に紛れて逃走しようとした。防犯カメラの映像から、犯人の顔情報を取得し、現場の警察官はARグラスをかけ、逃走の可能性が高い場所を巡回。犯人がARグラスに移るとアラートが発せられる仕組みになっている。同時にセンターでは、顔情報を照合し、犯人の実名、身分証番号などを割り出していた。

ARグラスにより、群衆の中に紛れている犯人を発見し、逮捕に至った。

深圳市によると、いまだに人口が増え続ける深圳市では、2万人の警察官が不足をしているという。人手不足はすぐには解消できないことから、5Gによる効率化を進めて、人手不足問題を解決していきたいという。

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▲防犯カメラの映像から、顔部分を抜き出し、身分証データベースと照合。追跡中に犯人の氏名、身分証番号などが判明。

 

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▲白バイに囲まれた犯人は、逃走車を放棄し、人混みに紛れ込んだ。警官がARグラスを取り付けて人混みを捜索。顔認識により、犯人の顔を検知する。

 

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▲犯人を発見し、最後は警察官により確保された。