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デリバリー騎手が信号機、道路の破損を報告。成都市が始めたユニークな試み

成都市でユニークな試みが始まっている。配達中に、信号機や道路の故障、破損などを発見したら、スマホから写真を撮って報告するというものだ。騎手には副収入となり、市政府はコストダウンをすることができる。医薬系企業なども協力をし、他都市への展開も始まろうとしていると四川文明網が報じた。

 

デリバリー騎手が信号機の故障などをスマホで報告

成都市でユニークな試みが始まっている。中国の都市では、大量の宅配便配送、フードデリバリーのスタッフが電動バイクなどで走り回っている。バイクで配送することから「騎手」と呼ばれることが多い。この騎手に、信号機、道路の破損などを探してもらおうという試みだ。

信号機の故障に気がついた騎手は、スマートフォンのミニプログラム「豊行侠」を開く。位置情報は自動的に記録されるので、「信号機故障」「路面破損」「マンホール蓋の破損」などから問題を選び、写真を撮影するだけだ。報告は1分以内で終わる。これで、内容に応じたポイントが貯まり、ポイントに応じた奨励金、奨励品を受け取れる。

また、半年ごとにポイントの順位をつけ、上位50名に入ると数百元から数千元の賞金がもらえる。

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▲デリバリー騎手が配達中に信号機などの故障を発見したら、報告をするだけでポイントが貯まり、奨励金が支払われ、騎手の副収入になる。

 

医薬系企業、社区にも広がる協力の輪

豊行侠(豊な交通のボランティアのような意味)は、成都市の中心地の地区委員会が開発したもので、区域内で業務をする5社の宅配便企業、フードデリバリー企業に協力を依頼している。合計約400人の騎手が参加をしている。騎手たちは、1日平均で40件の配達をし、走行距離は100kmになる。

また、他の企業もこの試みに協力をしてくれている。市内の医薬品企業4社は、共同して、豊行侠に参加する騎手たちに、夏の暑さを防ぐ冷感剤を提供している。市の衛生サービスセンターでは、騎手たちに無料の健康診断を提供している。新都第三病院では、騎手たちに無料で救急救命訓練を提供している。いくつかの社区(町内会組織)では、騎手たちのために休憩所を設置し、水や充電器、救急医薬品などを提供している。

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▲豊行侠ミニプログラムの画面。位置情報は自動的に入力される。問題のタイプを選んで、写真を撮影するだけで報告できる。作業は1分以内に終わるという。

 

デリバリーという業務に、市政府、企業、民間が「相乗り」

騎手の仕事の報酬は、決して高いものではない。わずかとは言え、騎手の副収入になっている。また、成都市政府側では、交通設備の管理負担が軽減し、定期巡回の頻度を下げられるため、奨励金を支払っても、コスト削減につながっている。

また、成都の夏は厳しく、騎手が熱中症などで体調を崩す例も少なくない。医薬品企業が冷感剤などを騎手に提供するのは、騎手の健康を守ることでもあり、騎手が街中で冷感スプレーなどを使うことで、医薬品の宣伝にもなっている。

配達というひとつの業務に、地方政府、企業、社区が相乗りをすることで、誰もが得をする仕組みになっている。

この豊行侠の試みは、他の都市にも広がろうとしている。