中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

アプリ利用時間で強いテンセントとバイトダンス。弱いアリババと百度

中国の2020年第1四半期(1月から3月)までは、ちょうど新型コロナの感染拡大期にあたっている。調査会社AURORA極光の「2020年Q1モバイルネットユーザー業界データ研究報告」によると、利用時間が大幅に伸びていることがわかったと金融投資報が報じた。

 

コロナでムービーとゲームの利用時間が増大

報告によると、平均でインストールされているアプリ数は63個、1日のアプリ使用時間は6.7時間となり、昨年同時期よりも2.4時間伸びた。もともとアプリ利用時間は延びる傾向にあったが、コロナ禍による外出自粛で大幅に伸びた形だ。

ジャンル別の利用時間を見ると、ショートムービー、ゲームが伸びた一方で、SNS、ニュース、ECが減少をしている。ゲームは増減を繰り返していたものがコロナ禍により伸びた形だが、その他のショートムービーの増加、SNS、ニュース、ECの減少は以前からの傾向がコロナ禍により加速をした。

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▲1日あたりのアプリ平均利用時間は以前から伸びる傾向があったが、コロナ感染拡大期に伸びが加速した。

 

進む「宅経済」

このような傾向は、コロナ禍により「宅経済」が進んだためだ。消費の場は街中から自宅になり、フードデリバリー、店舗ECなどを使い、自宅で体を動かすことができるヨガ、トレーニングの愛好者も増え、リモート医療も普及をした。スマートフォンで、ショートムービー、ムービー、コミック、ゲームなどを楽しむようになった。

さらに、学生たちはオンライン授業が進み、大人たちは在宅リモートワークが進み始めている。

このような宅経済に関係するアプリの月間使用時間は、コロナ禍で急速に増えている。

面白いのはECだ。ECの利用率は、短時間で配送してくれる生鮮EC、店舗ECなどであがっている。しかし、ECアプリそのものの利用時間は減少をしている。これは、以前は、ECアプリを開いて、欲しいものを探すウィンドウショッピング的な使い方をしていたものが、必要なものをすぐに買うために利用時間が短くなっているのだと思われる。

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▲アプリのジャンルごとの利用時間シェア。ショートムービーとゲームが伸び、SNS、ニュース、ECなどが短くなった。



利用時間シェアで圧倒的に強いテンセントとバイトダンス

浸透率(装着率)のランキングを見ると、やはり圧倒的に強いのはテンセントのSNS「WeChat」「QQ」、アリババの「アリペイ」「タオバオ」となる。

これを、アプリの運営元別に見て見ると、多くの人が「テンセント」「アリババ」「百度」「バイトダンス」の4社のアプリを使っていることがわかる。

しかし、これを時間シェア(1日の利用時間の占有シェア)で見てみると、圧倒的にテンセントが強く、バイトダンスは浸透率ではBAT3社に劣るのに、時間シェアでは2位に躍り出る。

テンセントのSNS「WeChat」は、SNS機能自体は利用時間が減少をしているが、ミニプログラムを利用したスーパーアプリ化をしたため、SNS以外の利用時間が伸びている。さらに、テンセントは音楽、ムービー、ゲームといったコンテンツ配信を成功させている。

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▲各アプリの装着率のランキング。WeChatは88.4%のスマホユーザーがインストールしていて、国民的アプリになっている。

 

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▲運営元別装着率。テンセント、アリババ、百度、バイトダンス。多くのスマホユーザーが、この上位4社のいずれのかのアプリを使っている。

 

アリババ、百度は利用時間が減少傾向

一方、アリババは決済やECなどの消費系アプリが多く、百度は検索、地図などの情報検索系のアプリが多い。このような非コンテンツ系アプリは、利便性を高くすればするほど、操作がシンプルになり、利用時間は短くなっていくことになる。

アプリにとって、利用時間が長ければいいということにはならないが、利用時間が長い=利用者の時間を占有できるということは、利益に転化できるチャンスが多いということだ。

アリババは優酷、百度は愛奇芸といムービーストリーミングサービスを展開しているが、その他のコンテンツ系サービスが弱い。アリババ、百度にとって、どのようにしてSNSコンテンツ系サービスを育てていくかが今後の課題になっている。

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▲運営元別の利用時間のシェア。WeChatを持つテンセントが圧倒的。バイトダンスは装着率では4位なのに、利用時間は長い。EC、検索、ツールなどのアプリが主体のアリババと百度は、装着率の割に利用時間は短い。