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中国に残された個人消費フロンティア「下沈市場」とは何か?

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明日、vol. 027が発行になります。

 

中国のマーケティング業界で、ここ数年重要なキーワードになっているのが「下沈市場」です。下沈市場とは、地方都市と農村の消費者のことです。さまざまなビジネスが都市部では飽和状態になってきているため、下沈市場が注目されるようになってきています。
しかし、都市がだめだから地方をねらうという消極的な考え方ではありません。中国の経済発展は、常に大きな市場を発見することで進んできました。


中国の人口ピラミッドを見てみましょう。瓢箪のような形をし、40歳代後半と30歳代前半にピークがあります。しかも、その前後の差が大きく、不連続な印象を持ちます。
現在の50歳代後半が生まれた60年代は、大躍進政策の時代です。近代化を急ぐ中国は、ソビエト連邦からさまざまな技術導入をし、その見返りとして農産物を支払っていました。当時の社会主義状況では、各地が競い合うように豊作であるという水増し報告が上がり、そのでたらめの数字に基づいて、農産物の供出量が決められソ連に送られたため、自分たちの食べるものがなくなるという愚かな悪循環に陥ったのです。1500万人から4000万人という数字の開きはありますが、大量の人が餓死しました。

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▲中国の人口ピラミッドを見ると、2つのピークがある。この人口ボーナスにより、中国は経済成長をしてきた。

 

大躍進政策を推進した毛沢東が失脚をし、愚かな政策が改められると、にわかにベビーブームが起こりました。これが40歳代後半のピークです。この世代は、経済重視の政策に舵が切られる改革開放が始まるときに10歳前後で、90年代からの個人消費の成長に大きく貢献しました。家電製品、新しい食品、服飾、家具など中国の経済成長を支えたのです。このような人口ボーナスが中国の経済発展の礎となりました。


しかし、急激な人口増加が問題となり、80年前後から有名なひとりっ子政策が始まります。ひとりっ子政策は中央政府が指針を示しますが、具体的な実行は地方政府に任されていました。そのため、厳格に実行する地域(農村が多い)もあれば、実際には形骸化している地域(都市が多い)もあるため、厳密に何年から始まったというのは難しいのですが、80年ごろから本格化をしていったと言われています。
それが人口ピラミッドにも現れています。30代後半と40代前半はものすごく人口が少なくなっています。

 

日本でも、似たような人口ボーナス世代に団塊の世代(47年から49年生まれ)があり、その団塊の世代が親になると、団塊ジュニア(71年から74年生まれ)の世代も人口が多くなります。
これと同じように中国でも、先ほどのベビーブーム世代が子ども産むジュニア世代の人口が多くなっています。これが30歳代前半(80年代生まれ)の世代です。俗に80后(バーリンホウ)と呼ばれる世代で、貧しい中国の記憶のない世代です。この世代も、経済に大きく貢献しました。成人をする頃に、アリババやテンセントといったIT企業が登場してきます。EC、SNSなどのITサービスの主力となった世代です。

 

つまり、中国の経済成長、IT革命の背後には、人口ボーナス世代がいたわけです。しかし、そこから下は再び急激に世代人口が少なくなります。ジュニア世代が親になって、現在の10歳以下の人口が多くなってもよさそうですが、そうはなっていません。
80后は、結婚をしない世代なのです。生まれた時から豊かな中国しかしらず、自分の人生を楽しもうと考え、恋人を作り同棲はしても、子どもを産んで家庭を築こうとはなかなかしません。豊かになれば少子化になる。他国でも共通した現象です。
しかし、経済面から見ると、これは大きな問題です。人口ボーナスがなくなるわけですから、あらゆる業種が停滞をすることになります。その傾向はすでに始まっています。20歳代が好むファストファッション業界は、どのブランドも苦しむようになっています。今後、比較的若い世代が消費の中心になっている自動車、マンションなども成長が止まることは避けられません。

 

そこで注目が集まっているのが、下沈市場です。この下沈市場をうまく捉え、大成功したのがソーシャルECの「ピンドードー」です。ピンドードーは、すでに利用者数や流通総額で、京東を抜き、アリババに迫る第2位のECになっています。現在でも成長を続け、利用者数で2020年中に1位のアリババを抜く可能性もあるほどの勢いがあります。
こういう、下沈市場を活用した成功例も登場することで、ますます下沈市場が注目されるようになっています。


下沈市場とはどんな特徴を持っているのでしょうか。そして、ピンドードーはそれをどのように活用して成功したのでしょうか。
今回は、下沈市場とそのビジネスについてご紹介します。


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