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EC「タオバオ」が、低価格商品も送料無料にできる秘密

アリババのEC「タオバオ」には100円程度の商品が大量に出品されている。そのような商品を1つ注文しても、多くの場合、国内送料無料になる(業者による)。郵便小包でも50円程度の送料がかかるのに、どうして無料で配送することができるのか。その秘密を熱点指南が解説した。

 

宝探し感覚のEC「タオバオ

アリババのEC「淘宝」(タオバオ)は、CtoC型のECサービスだが、実質的には多くの小規模事業者が出店し、低価格で掘り出し物が購入できるようになっている。

目につくのは10元(約150円)以下の商品。10元で、下着や帽子、スニーカー、サングラスなどが買える。もちろん、質はわからない。わからないが、だめもとで買ってみてもいい金額だ。タオバオとは「宝探し」の意味。こういう掘り出し物を見つけるのがタオバオの楽しみ方のひとつになっている。

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タオバオの画面。10元(約150円)以下の商品も多くが送料無料。リピートしてもらうためのセール品という位置づけだ。タオバオには無数の業者が出店しているため、ただ出品しているだけでは、すぐに埋もれてしまう。

 

低価格商品であっても国内送料無料

ところで、多くの人が不思議に思っているのが、このような10元以下の商品であっても、送料無料であることだ。送料は出品業者の方が負担をしている。ところが、小さな荷物を近距離に送っても、4元以上の配送料がかかる。10元以下の商品で、配送料を負担したら、業者は利益がないどころか、赤字になってしまうのではないか。いったいどういう仕組みなのだと話題になっている。

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▲定額契約などもあり、宅配件数は増加する一方。ITを導入が遅れている中小の宅配企業では、人手で処理をする限界を突破している。

 

宅配サブスク契約が普及している

最も大きいのは、多くの出品業者が、宅配企業と月額定額制の契約を結んでいることだ。その価格や条件は、契約ごとに異なっているが、例えば「月1万2000件までで月額1000元」などという格安の契約になっている。もちろん、委託する荷物が少ない月でも定額を支払わなければならない。

宅配企業は、複数あり、競争は厳しい。そのため、大量に荷物が出る業者には、一本釣りの営業をかけ、荷物を確保したい。大量に委託する業者にとっては、配送コストが安く済む。互いの利益が一致した結果だ。

このような契約であるため、業者にとって配送料は固定費になる。契約条件の枠に余裕があるのであれば、配送料を考えずに価格が設定できることになる。

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▲仕分け作業も中小では人手に頼っている。一方、大手である順豊、菜鳥などでは自動化が進んでいる。IT導入が遅れている中小は、もはや限界に達し、近い将来、大きな業界再編が起きると見られている。

 

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▲一方、菜鳥などの大手宅配企業では、人工知能を利用した自動仕分けセンターなどの導入が進んでいる。

 

リピート率は40%から200%。再購入で元が取れる

もうひとつは、多くの業者がこのような低価格商品を、消費者と結びつくためのツールとして使っていることだ。タオバオの場合、リピート率は0.4から2.0程度が標準。つまり、一度何かの商品を買ってもらえば、そのうちの40%以上の消費者がもう一度同じ業者で買い物をしてくれる。

低価格商品を購入した消費者に、ダイレクトメールなどを送り、より利益率の高い商品を買ってもらう。多くの業者はそこを狙っている。