中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

感染拡大で実戦投入された人工知能テクノロジーの数々

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明日、vol. 021が発行になります。

 

よく「中国の技術力は飛躍的に進んだ。日本はもうかなわない」と言う人と、「中国の技術力は見掛け倒し。日本にはまだまだ追いつけてもいない」と言う人がいます。どちらも、それぞれに的を射た見方です。

なぜなら技術力というのは、さまざまな「力」の総合力で、一概に勝った、負けたと比べられるものではありません。ある部分では勝ち、ある部分では負けているというのが普通です。勝っている部分で優位性を保ち、負けている部分は素直に教えを請うか、提携をすればいいだけです。テクノロジーは、勝ち負けを決める競技ではありません。

日本が圧倒的に強いのは製造技術です。工場現場には企業内職人と呼ばれる匠が多く存在し、精度の高いものづくりをすることでは世界でも頭抜けています。丁寧な作業を行い、小さな問題も見逃さず追い込んで解決する姿勢は、海外の工場ではあまり見られないものです。

この日本の強みを活かすには、高付加価値の製品を生み出して、海外に販売することですが、ここがあまりうまくいっているとは言えません。自動車のレクサス、任天堂のゲームソフトぐらいしか、日本の製造技術を活かした世界的ブランドがありません。多くはBtoBの部品製造になってしまい、価格競争に飲み込まれ苦しむことになってしまっています。

 

中国が圧倒的に強いのは、なにはともあれ、市場に投入してしまうことです。いろいろ未解決の問題があっても、とにかく市場に投入し、利用者を混乱させることも起こしながら、洗練させていくというやり方です。

これは伝統的な日本の感覚からすると「見切り発車」「いい加減」「めちゃくちゃ」に映ることもあります。実際、機械製造や電気製品製造では、中国の製品は品質面で信頼できないという状態が長く続きました。

しかし、「まず市場投入をしてしまう」というのは、IT時代のアジャイル開発そのものです。アジャイル開発の狙いは、β版状態であっても市場投入してしまい、利用者のレスポンスを得ながら改善をしていく「永遠のβ版」というもので、いち早く市場投入することで、利用者を獲得し、先行利益を得ることが主眼になっています。ウェブやアプリというデジタル製品だからこそ、可能になった考え方です。

中国のやり方は、期せずして、このアジャイル開発に近いものだったのです。昔から、モノのアジャイル開発をしていたということもできるかもしれません。時代の方が中国にすり寄っていった感があります。

 

さらに、人工知能=AIも中国に非常に向いているテクノロジーでした。AIシステムは、設計ももちろん重要ですが、同じくらい学習が重要になってきます。運用直後は学習が進んでいないために高い精度は出せません。しかし、大量の学習を進めるとともに精度が上がっていくのです。運用をしながら、システムを改善したり、設計を柔軟に変更していく必要があり、そのためには、いち早く運用をして学習を進めたシステムが優位に立ちます。

これが中国の「とにかく市場投入してしまえ」という感覚とうまく合致するのです。

 

人工知能の歴史は、2006年以前と2006年以降に明確に分けることができます。2006年以前は、人工知能は研究としては興味深いものの実用にはならないものでした。そのため、人工知能研究を専攻しようとする学生は以前から多かったのですが、指導教官は必ずこう尋ねます。「就職口ないけど、だいじょうぶ?」。卒業しても、研究職ぐらいしか人工知能関連の仕事がないのです。

この時代、日本は圧倒的な人工知能先進国でした。人工知能関連の特許数ランキングを見ると、富士通キヤノンソニーNECといったおなじみの企業の名前が世界ランキングの上位を占めていました。特に計算機視覚と自然言語処理の2つの分野ででは圧倒的でした。しかし、2006年に、人工知能の世界にゲームチェンジが起こります。

2006年にトロント大学のジェフリー・ヒントンの研究チームが、ディープラーニング(深層学習)という手法で、画像判別に圧倒的な成果を出すことに成功しました。これにより、人工知能は研究から実用のフェーズに一気に変わり、機械学習人工知能の中で最も注目されるようになりました。

深層学習はあまりにも大きなイノベーションであったため、それまでの人工知能研究の蓄積はあまり関係しない、一種のリセット状態になりました。ここで猛烈な勢いで関連特許を取得し始めたのが中国です。機械学習の特許数ランキングでは、米国企業と中国企業、大学が上位を占め、そこに日本企業の名前はありません。

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大でも、人工知能を中心としたさまざまなテクノロジーが導入されました。おそらくその中には、実際にはうまく機能しなかったものもたくさんあったはずです。しかし、最悪の事態である感染拡大の最中では、「だめもと」で多くのテクノロジーが試されました。その中で、うまく機能したものが生き残り、今後も使われていくことになります。

感染拡大は、中国だけでなくどの国にとっても痛手以外の何ものでもありませんが、その最中でも、中国はさまざまなトライを行い、終息後の次の日常を築こうとしています。

 

今回は、感染拡大期に対コロナ対策として用いられたテクノロジーについてまとめてご紹介をします。

 

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