中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

経済復活の鍵は「ライブEC」。感染拡大から広がる新たな販売手法

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明日、vol. 020が発行になります。

 

新型コロナウイルスの感染拡大で、中国社会は大きく変わるかもしれません。ワクチンも治療薬もない「ゼロデイ」パンデミックに対しては、外出自粛や商店の休業という消極策しかとることができません。それは中国も同じです。しかし、それぞれが、その制限の中でも生き延びている道を模索しました。

感染が拡大した都市では、商店は休業をせざるを得ません。営業をしたところで、外出をしている人がほとんどいないのですから、お客もこないのです。困った商店主の多くがライブECを急遽始めました。閉店した店内の中で、スマートフォンを三脚に固定し、商店主自ら商品を紹介するライブ配信を行なったのです。素人テレビショッピングの真似事をするわけですから、多くが大した売上にはなっていません。しかし、中には感触をつかみ、感染終息後も続けていく商店も出てくるでしょう。

この状況を見た中央政府、地方政府は、このライブECが終息後の経済復活にも大きな助けとなると見て、積極的にライブECプラットフォーム、インフラを支援する政策を打ち出しています。

感染拡大期の苦し紛れの窮余の一策が、経済復興の柱になろうとしています。小規模の小売店は、店舗を開きつつ、ライブECもする。それが当たり前の時代になるかもしれません。

 

その中でも、最も大掛かりだったのが、浙江省義烏市の事例です。義烏市には巨大な日用品卸売市場があり、日本の百円均一ショップで販売されている商品も、多くは日本人バイヤーが義烏市で買い付けをしたものです。

180万種類の商品を扱い、219か国に輸出をしています。以前は、100円均一ショップの流行により日本人バイヤーが多く見られましたが、現在は中東のバイヤーが多くなっているそうです。中東では戦乱が続くため、日用品製造産業が痛んでおり、多くの日用品を義烏で買い付けていると言われます。

複数ある公式市場の総床面積は596万平米(東京ドーム130個分=東京ディズニーリゾート3個分)、商店数は7.44万軒、従事者数は約23万人。売上は全体で約4600億元(約6.9兆円)で、これは日本のアマゾンの約4倍になります。

あまりに広すぎるため、とても歩いて回ることはできず、しかもどこにどんな商店があるかも把握することはできないので、道端にはガイドが客引きをしています。それぞれに得意分野を持っていて、どういう商品を買い付けたいのかを知らせると、それに適した商店を紹介してくれ、電動バイクの後ろに乗せて連れて行ってくれるというものです。すでに義烏市とテヘランマドリード、ミラノを結ぶ鉄道も開通し、定期的に貨物列車が運行されるようになっています。

 

ところが、新型コロナウイルスの感染拡大により、移動が制限され、義烏市の客足がぱったりと途絶えました。そこで商店主たちは、続々とライブECを始めました。自分で商品を紹介する映像をスマホで撮影し、ライブ配信し、それを見て買ってもらおうというものです。

元々、義烏市の商店は問屋ですから、在庫を持っている店はごくわずかです。サンプル品だけを並べて、バイヤーがくるとそのサンプル品で売買交渉をします。バイヤーは最小ロットを注文し、現物を確かめたら、電子メールなどで大量発注をするという買い方です。そもそもがネットに移行しやすいビジネス業態だったのです。

ガイドの中には、知り合いの店舗から面白い商品を紹介してライブECを行う「網紅」が2500人以上生まれ、商店主自らライブECを行う店舗も1.5万軒に達しています。

これは、感染拡大期にあくまでも窮余の一策として、昇天主たちがゲリラ的に始めたものでした。しかし、義烏市の経済の将来に大きな懸念を持った義烏市政府は、目敏くこの動きをキャッチしました。すぐに必要なインフラを整える支援策を打ち出し、講師を招聘してライブECのノウハウを学ぶ講習会などを実施するようになりました。

現在の義烏市には、バイヤーがある程度戻りつつあるようですが、海外バイヤーが再び訪れるようになるには時間がかかります。その間に、義烏市は日用品ライブECの聖地となる可能性も出てきています。

 

重要なのは、新型コロナウイルス感染以前から、ライブECを行なっていた商店主は少数ながら存在していました。しかし、多くの商店主は従来のやり方に慣れていて、そちらの方がいいと考えていました。しかし、その伝統的な手法が利用できないとなった時、多くの人が新しい方法に挑戦をし、終息後の経済復活のためのツールとなっていきました。

このような現象が起きているのはライブECだけではありません。「生鮮EC、新小売」「外売、即時配送、店舗EC」「無人配送カート」「顔認証+体温測定」「オンライン教育」「オンライン診療」「在宅テレワーク」。いずれも以前から存在していたテクノロジー、サービスですが、感染拡大により注目され、一般化をし、今後も定着することが有望視されています。

その中でも、ライブ配信は小売だけでなく、さまざまな分野から注目をされ、今後、テレビに替わるメディアとして利用される可能性も出てきました。テレビで放送されるのは、スポーツ中継などの大規模イベント、制作に専門的なノウハウと膨大な調査活動が必要な報道番組、ドキュメンタリー番組のみになっていき、映画、ドラマは制作後、ネットで公開されるようになり、さらにバラエティ番組の多くはライブ配信されるようになる可能性も見えています。

中国でもテレビの影響力はいまだに大きいものがあるので、短期間でテレビからスマホへのシフトが起こることは考えづらいですが、その転換が始まったということは言えるかもしれません。

今回は、ライブ配信がどのような分野で使われるようになっているかをご紹介します。このテレビからスマホへ、マスメディアからクラスターメディアへの転換は、中国だけでなく、世界中で起きていくことは間違いありません。もちろん、日本でも同様の現象は起きるはずです。

 

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