中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

英語ができなくてもシリコンバレーで成功できる。中国人が米国で起業した「Zoom」

外出自粛などで、世界的に急速の脚光を浴びたZoom。このZoomの創業者は、エリック・ヤンという中国人だ。彼は英語もできないのに渡米をし、やはり中国人が創業したWebExに入社する。Zoomを創業してからも、中国人エンジニアを積極的に雇用した。米国の中の中国企業という存在になっているとTMPOSTが報じた。

 

世界的に脚光を浴びたZoom

世界的にZoomが広がっている。新型コロナウイルスの感染拡大により、在宅テレワークが半ば強引に行われるようになり、会議や打ち合わせのツールとしてZoomに脚光が当たった。

Zoomは他のミーティングアプリと比べ、後発である分、古いテクノロジーを切り捨て、新しいテクノロジーに基づいて設計されている。そのため、音声や映像の途切れが少ない。そのため、スムーズなコミュニケーションが取れる。

中国でもアリババの「釘釘」(DingTalk)、テンセントのテンセントミーティングなどが使われているが、外資系企業を中心にZoomが使われている。

f:id:tamakino:20200510110553j:plain

▲Zoomを創業したエリック・ヤンは、英語もできないのに渡米をして、シリコンバレーに飛び込んだ。英語ができないため、中国人の多い企業WebExに入社をした。

 

遠距離恋愛が発想の元になったZoom

Zoomを創業した袁征(ユエン・ジャン、エリック・ヤン)は、1970年に山東省泰安で生まれた。山東科技大学を卒業し、その後、中国鉱業大学で修士号を取得した。

袁征は大学院に進学をする時に、恋愛結婚をしている。この時、Zoomのアイディアを思いついたという。中国の大学生たちは、生まれた土地とは異なる場所の大学に進学をすることも多く、寮生活が基本になる。遠距離恋愛の課題を解決するために、ビデオコミュニケーションができる仕組みがほしいと感じたことがきっかけになっているという。

 

英語もできないのにシリコンバレー

1994年、ビル・ゲイツが日本の横浜で「情報ハイウェイ」をテーマにした講演を行った。袁征はこの講演を会場で聞いていた。エンジニアとして興奮をし、英語もまったくできないのに、シリコンバレーにいかなければならないと思い込んだ。

しかし、米国のビザを申請して8回拒絶された。2年間、米国の道は開けなかったが、1997年、9回目の申請でビザが発給され、袁征は米国に渡り、WebExに入社をした。大学の時に思いついたビデオコミュニケーションシステムを開発する企業だ。

WebExの創業者は、朱敏という在米中国人とその妻、そしてインド人のサブラ・イヤーの3人で、後にZoomに投資をしてくれることになる。WebExのエンジニアチームの多くが中国系または中国人であったため、英語がおぼつかない袁征としては働きやすかった。

WebExは2000年にナスダックに上場をすることになる。

 

シスコシステムズとの決別

WebExは2007年にシスコシステムズに32億ドルで買収をされた。袁征はWebExの中心メンバーとしてシスコシステムズに移籍をし、エンジニア部門の副部長として、800人ほどのエンジニアを率いる地位に就く。

買収された時のWebExはユーザー数200万人程度で、年に8億ドルの売上があった。袁征としてはさらに成長をさせていきたいと望んだが、シスコシステムズの考え方は現状維持であり、じゅうぶんなリソースを投入してくれない。袁征は経営陣と戦ったが、結局、2011年にシスコシステムズを退社することになる。

しばらくすると、シスコシステムズにいたダン・シャインマンが袁征に出資をすると言ってきた。シャインマンは25万ドルを出資し、袁征はこの資金を元に起業をして、自分が理想とするツールを開発することにした。

 

中国人エンジニアを中心に開発をしたZoom

袁征は自分の会社の名前をSaasbee(サースビー)と名付けたが、シャインマンの提案によってZoomにした。さらに、WebExの創業者の一人、サブラ・イヤーが300万ドルの投資をすることになり、Zoomが本格的に始動し始めた。

エンジニアは、シスコシステムズ時代に袁征の下にいたエンジニア40名がZoomについてきた。さらに、袁征は中国から多くのエンジニアを募集した。袁征がそうであったように、中国のエンジニアは人件費が安い割に、勤勉で優秀だからだ。

こうして、2012年8月には、Zoomの最初のバージョンが公開できた。

2013年1月より、フリーミアム+法人契約の形を取り、毎月9.99ドルで無制限の通話ができるようになった。利用者数は順調に伸び、6月には120万人、9月には300万人を突破し、法人契約も4500社を超えた。

 

遠距離恋愛ツールから業務ツールへ

この時までは、袁征の最初のアイディア「遠距離恋愛をする恋人」のような個人での利用を想定していたが、企業ユーザーの需要が強いことから、2014年からは企業ユーザー向けの機能を強化していった。

それまでウェブ会議は最大25人までしか参加できなかったが、最大1000人まで参加できるように拡張した。

さらに2015年12月には、グループ機能が搭載された。企業のチームごとにグループを作り、いつでも簡単に打ち合わせ、会議ができるようになり、また教育の分野でもクラスをグループ登録することで、オンライン授業が簡単にできるようになった。

2016年7月には、在宅勤務をする人向けに、バーチャルな背景を利用できるようになった。背景に乱雑な自宅の様子を映さずに済むのだ。

2017年には、法人ユーザーが70万社を突破、教育機関は6900機関、ユーザー数は4000万人を突破した。特に教育機関では、米国のTOP200ランキングに入る大学の90%がZoomを活用していることになる。

 

セキュリティ対策が課題になっているZoom

新型コロナウイルスの感染拡大で、在宅ワークをする人が急増し、Zoomのユーザーは急拡大をしている。しかし、同時にセキュリティ上の問題も起きている。ミーティングのURLを公開し、クリックするだけで誰でも簡単にミーティングに参加できることから、部外者が乱入し、嫌がらせをするZoom爆撃が問題になっている。ミーティングにパスワードを設定すればいいだけなのだが、今度はどうやってパスワードを参加者に安全に配布するかという問題がある。

また、アカウント情報の流出事故も起きるなどして、公的機関や企業の間では「Zoom禁止」の措置をとるところも現れ始めている。

Zoomはこの問題を乗り越えなければならない。品質は頭抜けて優れたプロダクトであるため、多くの人がZoomに期待をしている。