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野菜はガソリンスタンドでドライブスルー購入。易捷が始めたユニークな販売方式

中国石化は、以前からガソリンスタンドにコンビニ「易捷」を展開し、店舗数は2万5775店と中国最大のコンビニチェーンになっている。その易捷が、フーマフレッシュと提携して、新小売化を始めた。といっても宅配ECではなく、ドライブスルー購入ができるという独特の方式だと電商報が報じた。

 

中国最大のコンビニチェーン「易捷」

「中国で最も店舗数の多いコンビニは?」という問いにすぐに答えられる日本人は少ない。日本人が中国に行き、目に付くコンビニはファミリーマート(全家)だが、ファミリーマートは2181店舗でしかない。あるいは中国系の「美宜佳」(メイイージャ)が目に付くが、これも店舗数は1万1659店舗。

最も店舗数が多いコンビニは、2万5775店舗を展開する「易捷」(イージエ)だ。圧倒的な店舗数だが、日本人が目にすることは少ない。なぜなら、易捷は中国石化が運営するガソリンスタンドで展開するコンビニだからだ。

日本の地方には、駐車場つきのコンビニがいくらでもある。しかし、中国のコンビニは都市内を中心に展開をしているため、駐車場まで備えている店舗はきわめて少ない。

ここに目をつけた中国石化は、2008年から、ガソリンスタンドでのコンビニ展開を始めた。それ以前から、小さな売店は展開をしていたので、これを本格化したもので、車で移動する人には、給油のついでに買い物ができて利便性が高い。現在では519.5億元(約8000億円)の売上がある中国最大のコンビニチェーンになっている。

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▲易捷は、中国石化のガソリンスタンドにある売店だが、商品を充実させ、中国最大のコンビニチェーンとなっている。買い物を目的にガソリンスタンドを訪れる人も増えている。

 

ガススタンドコンビニもアリババと提携して新小売化

その「易捷」が、アリババのフーマフレッシュと提携をして、新小売化に乗り出した。きっかけは、新型コロナウイルスの感染拡大だ。多くの人が、新小売スーパー、生鮮ECなどの宅配ECを利用して、生鮮食料品を買うようになった。既存スーパーで買い物をする人もいたが、やはり来店客やスタッフと接触をすることに不安を感じている人も多かった。そのため、都市によっては、社区(マンション や町内会)で、買い物をする人を決めて、まとめ買いをさせるような制限も行われた。

そのため、宅配をしてくれる各新小売スーパー、生鮮ECは、前年同時期の3倍から7倍の売上となった。

そこで、易捷では、フーマフレッシュと提携し、生鮮食料品も扱えるようにし、新小売コンビニへの転換を始めた。感染拡大が続いていた2月13日に、杭州市の8店で、試験営業を始め、2月15日には正式に新小売化を宣言、全国の店舗で順次新小売化を進めている。

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▲中国のコンビニは都市型で、駐車場があるところは少ない。車で移動をする人にとっては、駐車場のある「易捷」は利用しやすいコンビニになっている。

 

生鮮食料品のドライブスルー購入

といっても、宅配はしない「易捷」独特の方式だ。ガソリンスタンドで給油をするときに、スタッフに必要な商品を告げると、易捷スタッフがその商品をピックアップ、段ボール箱に入れ、車のトランクに入れてくれるというものだ。利用者は、注文から受取、決済まで、車の中にいることができ、ウィンドウを開ける必要もない。いわゆる無接触購入ができる。

この無接触購入方式は、新型コロナウイルスの感染により、易捷各店で自然発生的に生まれ、成都杭州、貴陽、長沙、昆明などの易捷に広まっていった。中国石化はこの動きに目をつけ、全店舗にこの無接触購入を横展開し、同時にフーマフレッシュと提携をして、生鮮食料品も扱えるようにした。

感染防止の観点から生まれた工夫だが、ガソリンスタンド利用者にとって利便性が高いことから、この方式の定着を図ろうとしている。

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▲注文した商品は、段ボール箱に詰めて、スタッフがトランクに入れてくれる。消費者は車に乗ったまま、注文から決済までができ、車の外に出る必要はない。新型コロナウイルスの感染拡大時期に「無接触購入」として歓迎されたが、現在ではその利便性が注目されて、定着をしようとしている。

 

マスクを独自生産、集客に大きな効果

易捷は、従来のコンビニ+フーマフレッシュによる生鮮食料品だけでなく、成都市では火鍋の食材セットなどの販売も始めている。また、北京市では、さまざまな野菜と卵をセットにした「安心野菜セット」を99元で発売している。

さらに新型コロナの感染が広がる中、中国石化はマスク製造工場の生産ラインを11ライン購入し、マスクの独自生産を始め、易捷で販売をした。1日62万枚を生産し、マスク不足の中、易捷にマスクを求める人が殺到した。

これも注文するだけで、トランクに入れてくれる。つまり、易捷は店舗というよりも、さまざまな商品の受け渡し所として機能させようとしている。利用者にとっては、車に乗ったままドライブスルー購入できるようになる。

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▲易捷では、ドライブスルー購入を進めている。そのため、生鮮食料品などをセットにした商品を充実させている。

 

中国石化は、ガソリン需要減に対し、小売強化で対策

この提携は、中国石化、フーマフレッシュ双方にとって大きなメリットがある。フーマフレッシュは、200店舗を超える出店をし、骨格が完成をした。今後は、さまざまな形で展開をしていく次のフェーズに入っている。スーパー形式のフーマフレッシュは、購買力の高い大都市を想定した業態であるため、地方都市、郊外向けのフーマminiなど異なる業態での展開を始めている。

その戦略から見ると、ガソリンスタンドコンビニという特徴ある小売業と提携することは、市場をカバーしていくという点で大きな意味を持っている。

中国石化にすれば、易捷はコンビニではなく、小売チャンネルとして機能させたい。顧客はほぼ全員が車でやってくるのだから、宅配を必要としない新小売化が可能になる。

中国石化の本業であるガソリン販売は将来が決して明るくない。EVが普及することで給油ビジネスは縮小をしていくことになり、また、若者はクルマ離れを起こしている。そのため、小売業を強化していかざるを得ない。給油のついでにお菓子でも買うような売店ではなく、さまざまな日用品が購入できる小売チャンネルとして易捷を強化しようとしている。

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▲易捷では本格的なカフェスタンドも併設している。ガソリン需要が減少する中で、「給油のついで」ではなく、「買い物」「軽食」のついでに給油をするようにして、小売業に軸足を移していく戦略だ。

 

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